KJ法のコツ(26) − 日本語の原則とKJ法 −

情報処理

知的生産の原則・段落の原則・階層の原則はKJ法の観点からも理にかなっています。

今回の連載「KJ法のコツ」は、「日本語の作文法 − 原則をつかう −」と連載「わかりやすい日本語を書く」をふまえてはじめました。日本語の原則をつかえばわかりやすい日本語が誰でも書けます。

日本語の原則

  1. 語順の原則
  2. テンの原則
  3. 助詞の原則
  4. カナと漢字の原則
  5. 知的生産の原則
  6. 段落の原則
  7. 階層の原則

今回は、これらのうち、5.知的生産の原則、6.段落の原則、7.階層の原則についてKJ法の観点から検証してみたいとおもいます。

  1. 知的生産の原則
     5-1. 並列的な編集から直列的な表現へ。
     5-2. 情報を統合する。
  2. 段落の原則
     6-1. 物語法:時間的ながれのなかのひとつの場面を段落にする。
     6-2. 類比法:類似した情報をひとまとまりにして段落にする。
  3. 階層の原則
     段落、節、章というように階層的に情報をファイルする。
5. 知的生産の原則の「5-1.並列的な編集から直列的な表現へ」について

KJ法にとりくむには、その前に、フィールドワークをしなければなりません。現地・現場で取材をして「データカード」あるいはそれに相当するファイル(ブログ・メモ・ノート・記憶ファイルなど)をつくります。今日では一般的に、ファイルづくりのためにスマートフォンやパソコンをつかいます。そしてデータカード(ファイル)の見出しをラベルに記入します(「ラベルづくり」)。これらの最初のラベルは「元ラベル」といいます。

つぎに、元ラベルを縦横にならべます(「ラベルひろげ」)。並列させるといってもよいでしょう。並列とは直列ではないということであり、箇条書きのように1列にならべるのではなく、2次元的にひろげることによって並列的な処理・編集が可能になります。その後、「ラベルあつめ」、「表札づくり」とすすみ、「ラベルひろげ→ラベルあつめ→表札づくり」を「グループ編成」といい、それがおわると「図解化」にすすみます。KJ法図解では、「元ラベル」と「表札」が並列的に編集されて空間的に表現されます。

そして「文章化」にすすみます。文章とは、前から後ろへ言葉を直列させて表現するものであり、直列的に言葉がながれていくものです。図解の場合は、どの部分からどうみようと勝手で、分散的にながめることができますが、文章は普通は、前から後ろへ順によみ、推敲や校正・加筆・修正をするときも前から後ろへくりかえしよみます。

このように、「グループ編成」→「図解化」では並列的に編集し、「文章化」では、直列的な表現(アウトプット)をします。「並列的な編集から直列的な表現へ」という原則はKJ法の観点からも理にかなっているといえます。

5. 知的生産の原則「5-2.情報を統合する」について

フィールドワークをすると実に多様なデータが大量にあつまってきます。それをどう迅速に処理すればよいか、フィールドワーカーの長年の課題でした。これにこたえたのがKJ法です。KJ法をつかって、多様なデータを並列的に編集し、直列的に表現(文章化)するということは、現地・現場の多様なデータを一本に統合してアウトプットするということです。すなわち さまざまな情報が統合できます。KJ法は、情報を統合する技術をおしえてくれます。

ここでは深入りしませんが、そもそも言語には、情報を統合する作用(効力)があります。また人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からいうと、インプットの本質は大観、プロセシングの本質は並列であるのに対し、アウトプットの本質は統合です。このことは経験的にもしられ、アウトプット(文章化)をすればするほど多様な情報は統合され、心のなかが整理されます。アウトプットの効果はあなどれません。あるいは他者にメッセージをつたえるとき、あれもこれも雑多にのべるよりも情報を一本にまとめてのべたほうがつたわりやすいです。

6. 段落の原則「6-1.物語法」と「6-2. 類比法」について
物語法と類比法

文章化のスタイルにはおおきくわけて2つのやり方があります。ひとつは、物事や現象がおこった順(経験・体験をした順)に、時系列で(時間順に)書いていく方法であり、因果関係がしばしば表現され、これは「物語法」といえます。日記、旅行記、歴史、小説、伝記などがその例です。段落は、時間的なながれのなかのひとつの場面をまとめてつくります。これについては誰もがよくしっていることであり、説明はいらないとおもいます。

もうひとつの「類比法」では、類似した情報をひとまとまりにして段落をつくります。KJ法では、相似関係に注目してラベルをあつめ、図解をつくって文章化すると、類似した情報がひとまとまりになっておのずと段落になります。データカードの本文が段落になったり、図解の下位の島(ちいさな島)が段落になったりします。相似関係が反映されると統一感のあるわかりやすい文章になります。

7. 階層の原則「段落、節、章というように階層的に情報をファイルする」について

1枚のデータカードは1つのファイルです。情報のひとまとまり(ひとかたまり、単位)のことを情報用語でファイルといいます。データカードの見出しから図解をつくると島が形成され、小さな島があつまって中ぐらいの島ができ、中ぐらいの島があつまって大きな島ができます。大きさにかかわらず島もすべてファイルであり、ファイルの階層構造によってKJ法図解はなりたちます。

このような図解を文章にすると、段落があつまって節ができ、節があつまって章ができるという階層構造をもった文章におのずとなります。データカードあるいは小さい島は段落に相当し、中ぐらいの島は節に相当し、大きい島は章に相当するとかんがえてよいでしょう。

文章におけるそれぞれの段落は1つのファイルであり、段落があつまった節もファイルであり、節があつまった章もファイルです。さらに章があつまってできた1冊の本もファイルです。わかりやすい文章は階層構造によってなりたつファイルの体系(ファイリング・システム)であることはKJ法の観点からもよくわかります。そもそもファイルは階層構造をつくるのであってコンピューター・ファイルもその例にもれません。

情報は、ただアウトプットすればよいというわけではなく、階層的にファイルしていくことが重要です。アウトプットとともにファイリングが必要であり、これらの相乗効果によって発想がうながされます。

以上のように、日本語の原則は、KJ法の観点からも説明・証明できます。KJ法をつかうかつかわないかにかかわらず、わかりやすい日本語を書くために日本語の原則が役だちます。

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KJ法のコツ(19) − 図解化(細部図解 ①〜②)−
KJ法のコツ(20) − 図解化(細部図解 ③〜⑦)−
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⭐️KJ法のコツ(22) − 文章化 ① −
⭐️KJ法のコツ(23) − 文章化 ② −
⭐️KJ法のコツ(24) − 文章化 ③ −
⭐️KJ法のコツ(25) − 文章化(まとめ)−
KJ法のコツ(26) − 日本語の原則とKJ法 −
KJ法のコツ(27) − フィールドワークとKJ法 −

▼ 参考文献

梅棹忠夫『知的生産の技術』
梅棹忠夫著『知の技術』

梅棹忠夫(著)『知的生産の技術』(岩波新書), 1969年, 岩波書店
梅棹忠夫(著)『知の技術』(梅棹忠夫著作集 11), 1992年, 中央公論新社

本多勝一著『日本語の作文技術』
本多勝一集『日本語の作文技術』
比喩の辞典
類語国語辞典
日本語シソーラス

本多勝一(著)『【新版】日本語の作文技術』(朝日文庫), 2015年, 朝日新聞出版
本多勝一(著)『日本語の作文技術』(本多勝一集 19), 1996年, 朝日新聞出版
中村明(著)『比喩の辞典(もの・こと・ことばのイメージから引ける)』, 2023年, 東京堂出版
大野晋・浜西正人(著)『類語国語辞典』, 1985年, KADOKAWA
山口翼(編)『日本語シソーラス 類語検索辞典 第2版』、2016年、大修館書店

KJ法
野外科学と実験科学
KJ法実践記

川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle

(冒頭写真:ネパール、バクタプル、1998年2月21日、筆者撮影)

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