1段目と同様に、ラベルをひろげ大観します。それぞれのラベルの志を感じとります。類似するラベルをあつめます。
KJ法のコツ(7)「表札づくり」により、1段目の「グループ編成」((1)ラベルひろげ→(2)ラベルあつめ→(3)表札づくり)がおわったので2段目の「グループ編成」(第2サイクル)にすすみます。
まず「ラベルひろげ」です(下図)。表札をつけたラベルの束と一匹狼のラベルのすべてを、1段目とおなじように縦横にならべ大観します。表札をつけたラベルの束は表札の文面をもつ1枚のラベルとみなし、ほかの一匹狼のラベルとまったく同格としてあつかいます。すなわち右下隅に、「1-1、1-2、1-3・・・」と記入したラベル(表札)と、黒点「・」を1つつけたラベル(一匹狼)は同格です。
まずは、中心視野だけでなく周辺視野もつかって視野をひろくし全体を丸ごとみるようにします。これは、旅先で風景をみたときの見方が参考になります。目をキョロキョロさせずにそっくりそのままながめ、大局をとらえます。ラベルをすぐにはうごかさないようにします。

つぎに「ラベルあつめ」(2段目)です。ひろげたラベルを左上から下へ順次よんでいき、ついですぐ右の列を上から下へよんでいき、さらに右の列を、というようによみすすみ、最後までよんだら、ふたたび最初のラベルにもどり、また同様によんでいき、このサイクルを約5回くりかえし全体観をつかみます。フィールド(現場)の「声」に耳をかたむけ、それらがうったえかけてくる志をしっかりきくようにします。志は、ベクトルとかんがえるとわかりやすいです。ラベル(現場の声)がうったえかけてくる方向性とその大きさを感じとります。
5回ぐらいよむと、このラベルとあのラベルとは、ほかのどのラベルよりも志が似ている、同じではないけれども他とくらべて志が近いと感じられるラベルが目についてきます。
それらの類似するラベルを1ヵ所にあつめ、ラベルの縁をかさねます(セットにします)。セットにする場所をつくるために、その下のラベルは下方にずらしたり、あいた場所にうつしたりします。縦横にならんだラベルの場外(外側)にセットになったラベルをださないようにします。セットになるラベルは2〜3枚を基本とします。
元ラベルとセットになったラベルのすべてをくりかえしよんでいると、ラベルのセットがあちこちにいくつもできてきます(下図)。ただし自然にあつまるラベルだけをセットにすればよく、セットをたくさん無理につくらないようにします。「このラベルとセットになるラベルはどれだったか?」などとさがさないようにします。

2段目のラベルあつめでは10組のセットができました。
先にのべたように、「1-1、1-2、1-3・・・」と記入したラベル(表札)と、黒点「・」を1つつけたラベル(一匹狼)は同格です。1段目のラベルあつめののちに、セットになったラベルを統合し表札をつけると、元ラベルよりも上位に表札は位置づけられ、したがって高さ方向の軸が生じ、2段目のラベルあつめにすすむことができます。1段目のときに一匹狼だったラベルはそのまま2段目にあがります。2段目のラベルひろげとラベルあつめは1段目のそれらよりも1次元 高くなります。高さ方向をイメージしてください。今後、2段目、3段目、4段目・・・と、より上位の表札をつくっていきます。
KJ法のコツ(3)「ラベルづくりとラベルひろげ」でのべたように、データカード(あるいはブログなど)の見出しを箇条書きにした場合は1次元(直列)ですが、ラベルにしてひろげると2次元(平面、並列)になります。そして表札づくりをおこなうと高さ方向の次元がくわわり、こうして3次元空間(立体空間)での並列処理が可能になります。物理的に次元をあげることによって情報処理は急速にすすみます。
まとめ
- 表札をつけたラベルの束と一匹狼のラベルのすべてをひろげ大観します(ラベルひろげ)。
- 表札をつけたラベルの束は表札の文面をもつ1枚のラベルとみなし、一匹狼のラベルと同格としてあつかいます。
- 類似するラベルを1ヵ所にあつめセットにします(ラベルあつめ)。
- 3次元(立体空間)をイメージしながら並列処理をすすめます。
▼ 関連記事「KJ法のコツ」
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KJ法のコツ(3) − ラベルづくりとラベルひろげ −
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KJ法のコツ(5) − ラベルあつめ −
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KJ法のコツ(7) − 表札づくり −
KJ法のコツ(8) − ラベルひろげとラベルあつめ(2段目)−
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KJ法のコツ(10) − ラベルひろげとラベルあつめ(3段目)−
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KJ法のコツ(17)− シンボルマーク −
KJ法のコツ(18) − 図解化(空間配置とインデックス図解)−
KJ法のコツ(19) − 図解化(細部図解 ①〜②)−
KJ法のコツ(20) − 図解化(細部図解 ③〜⑦)−
KJ法のコツ(21) − 図解化(全体図)−
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日本語の作文法 ー 原則をつかう ー
▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle
(冒頭写真:ネパール、カスキ郡、ポカラ、野菜の露店(ニュー・バザール)、1997年11月22日、筆者撮影)