KJ法のコツ(2) − 見出しづくり −

情報処理

すくなくとも核心のそばをつきます。抽象化します。ファイルが完成します。

データカードやブログあるいはメモアプリなどをつかうとき、見出し(タイトル)をいかにつくればよいか、かんがえさせられます。

見出しは、本文の要点をみじかくまとめ、つまり要約し、それをさらに圧縮したものであり、本文をよまなくてもそれをみただけで内容の察しがつくものでないといけません。ここには、抽象化の過程が基本的にあります。

朝日新聞では、「まなび場 天声人語」という記事のなかで「見出しづくり」講座をおこなっています。購読者は、指定された日付の「天声人語」をよみなおして、その見出しをかんがえ、その理由とともに応募します。編集者・記者が応募作品のなかから優秀作5作をえらび、その解説とともに毎月第4月曜日に紙面上で発表しています。これは、文章の要点をつかみ読解力をたかめる訓練としてとても役にたっています。

その編集者・記者による解説のなかで、「まずは、気になる言葉を書きだしてみる」というのがありました(注)。見出しがうまくつくれないときは、気になる言葉をまずは書きだしてみます。そして書きだした言葉だけをみて見出しをかんがえます。不十分でもよいので見出しの案をとりあえず書いてみて、あらためて本文をよみなおして補足なり修正なりします。新人記者の研修でもこのような練習をおこなっているそうです。

気になる言葉(単語)だけをいくつかみているとそれらの組みあわせから触発されます。書きだす(アウトプット)することによって心のなかが整理され発想がうながされます。

見出しづくりのためには天声人語とはかぎらず新聞の見出しが大変参考になります。適切な見出しがつくれる人は情報処理能力がたかく、思考も鮮明です。見出しがつくれない人は情報洪水に対応できません。見出しづくり訓練はおもっている以上に重要です。

見出しは、本文(ファイル)の核心をついているのが理想ですが、KJ法にとりくんでいく場合はのちの作業で修正が可能なので、ファイルの核心をついていなくてもそのそばをとおっていればよいです。

中心のちかくを切るように
ファイルの核心の
ちかくをとおっていればよい

ただしKJ法のデータカードでは、原則として見出しは単文にすることにしています。しばらく時間がたってからでも誤解をうまないように、単語やそれらの組みあわせよりも単文にしておいたほうがよいです。奇をてらった表現も必要なく、誰がみてもわかりやすい表現にしておきます。

本文をよみなおして見出しをつくっていると自分の取材のよしあしもわかってきます。しっかり本文が書けていれば見出しもつくりやすいです。もっとみておけばよかった、もっときいておけばよかったと後悔することもありますが、それは、次回の取材で役だちます。結果として取材力がたかまります。

まとめ

  1. データカード(あるいはブログ・メモアプリなど)の本文をよみなおして気になる言葉を書きだします。
  2. 本文から一旦はなれ、書きだした言葉だけをみます。
  3. 見出し案を直観的に書きだします。
  4. 本文をよみなおして必要に応じてそれを補足・修正します。
  5. ファイルの核心のそばをついていればよいです。
  6. 取材力がたかまります。

▼ 注
まなび場 天声人語「見出しのキーワードがわからない時は 気になる言葉、書き出して #42-45」(2024年11月5日、朝日新聞 ポッドキャスト)

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日本語の作文法 ー 原則をつかう ー

▼ 参考文献

KJ法
野外科学と実験科学
KJ法実践記

川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle

(冒頭写真:ネパール、カトマンドゥ、王宮(奥)と王宮通り、1997年11月21日、筆者撮影)

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