視覚的・直観的にシンボリックに表現します。ファイルの原理がつらぬきます。ファイルで世界は構成されています。
KJ法のコツ(15)「グループ編成(6段目)」でグループ編成が終了し、ラベルの束が7束(最終の表札が7枚)になりました。

つぎにこれらに、「シンボルマーク」をつけます。シンボルマークとは、それぞれの表札がうったえる内容を、視覚的・直観的に理解できるようにシンボル化したものであり、単語をつかうことがおおいですが、句や短文にすることもまれにあります。あるいは絵や記号でもかまいません。たとえばコンピューター・ファイルでは、ファイルの名前(見出し)とともにアイコンがあり、アイコンが、シンボルマークに相当します。
シンボルマークがきまったらあらたなラベルに記入し、それぞれの束のうえにのせます。

シンボルマークは、その表札がうったえかける内容を情念的にズバリと表現したものがのぞましく、みじかくないと象徴的な効果がなくなります。「見出し」とよんでもよいかもしれませんが、データカードの見出しと区別するためにシンボルマークとよびます。シンボルマークが適切につけられると、このあとにつづく図解化がスムーズにすすみます(注)。
シンボルマークの下には、表札・ラベルの束があり、元ラベルの下にはデータカードが潜在していることをイメージしてください。これは情報のひとまとまり、つまりファイルであり、表札・ラベルの束・データカードは情報の本体(潜在構造)であり、シンボルマークはファイルの表面構造(表層構造)です。

今回の連載は、データカードからはじまり、ラベルづくり、グループ編成とすすんできて、これまでに、見出し、ラベル、殺し文句、表札をつくり、そして今回、シンボルマークをつくりました。賢明な読者はお気づきかもしれません。これらは、用語こそちがいますがいずれもファイルの表面構造であり、情報の本体(潜在構造)を要約・圧縮したものです。いろいろな作業をしてきたようですがファイルの原理がこれらすべてをつらぬいており、けっきょく、ファイルをつくり、ファイルを処理してきたわけです。
情報は、ひとまとまりをとらえ、意識することがとても重要であり、見出しの類い(表面構造)をかんがえることによってファイルができあがります。要約・圧縮することにより処理が容易になります。要約・圧縮ができる人は思考が鮮明です。たとえばながい文章に接したときも、くりかえしよむだけでなく、要約・圧縮すると理解が格段にふかまることは誰もが経験していることです。みじかいコンセプトにした方が高次元へ飛躍しやすくなります。あるいは先日、駅前をあるいていたら無数の看板が目に はいってきました。それは表面構造のよい例であり、それが何の店なのか看板をみればすぐにわかるようになっています。店が想像できます。
ファイルがわかると、世の中にはファイルがあふれかえっていることもわかります。看板、道路標識、商品名、部署名、会社名、駅名、地名、自治体名、国名など、どれもがファイルの表面構造だったわけです。表面構造の下には膨大な情報が潜在しています。世界は、ファイルで構成されているといってもよいでしょう。
まとめ
- それぞれの表札がうったえる内容を、視覚的・直観的に理解できるようにシンボル化します。
- 単語をつかうことがおおいですが絵や記号でもかまいません。
- あらたなラベルにシンボルマークを記入し、それぞれの束のうえにのせます。
- KJ法の作業にはファイルの原理がつらぬいています。
- みじかいコンセプトにすれば高次元へ飛躍しやすくなります。
▼ 注
シンボルマークは、当初は、ひととおり図解化がおわったあとに図解上にかきこむとされ、1986年に発行された川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』(中央公論社)にもそのように記述されました。しかしその後、上記のように、グループ編成がおわった直後(図解化をはじめる前)につくるように変更されました。わたしは、1988年に、「6ラウンドKJ法」コースを受講した際に川喜田二郎先生からそのようにおそわりました。そのほうがより自然なやり方であるとのことでした。わたしはのちに、KJ法本部・川喜田研究所に主任研究員・研修講師として勤務するようになり、研修コースなどでそのように説明・指導しました。
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日本語の作文法 ー 原則をつかう ー
▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle
(冒頭写真:ネパール、カトマンドゥ盆地、パシュパティナート寺院、1997年12月11日、筆者撮影)