「トラの縞模様が示す危機」(日経サイエンス 2022.04号)

生息地の分断がすすんでいます。ブラックタイガー(変異体)がふえます。いずれ絶滅します。

生息地の分断がすすんでいます。ブラックタイガー(変異体)がふえます。いずれ絶滅します。

かつては非常にまれだった「ブラックタイガー」がインドのシミリパール国立公園・トラ保護区でふえています(注)。くろい縞の幅がひろがってたがいにくっつくようになった変異体です。

インド国立生物科学センターなどの共同研究チームは,動物園で生まれたブラックタイガー3頭と通常の縞模様だったその両親のゲノム配列を解析し, この特異な縞模様をもたらす原因が taqpep という遺伝子のわずかな変異であることを突き止めた。その後数カ月をかけてインド中のジャングルを約1500kmも歩き回り,トラの糞と毛,血液, 唾液を採集した。これらの試料を解析して taqpep 遺伝子の変異の広がりを特定したところ,シミリパール以外のトラにはこの変異が事実上存在しないことがわかった。

「トラの縞模様が示す危機」, 日経サイエンス, 2022年4月号


シミリパール国立公園の位置

シミリパール国立公園・トラ保護区では、ブラックタイガーに3頭に1頭がすでになっています。しかしシミリパール保護区以外のトラ395頭についてはこの変異をもつ個体は皆無でした。

この事実(データ)にもとづき、今日の遺伝学を前提とすると、シミリパール・トラ保護区のトラは隔離され、ほかの保護区のトラと交配する機会がまったくないため、変異遺伝子が何世代にもわたって維持されているのではないかという仮説がたてられます。

つまり、トラの生息域が分断され、非常にかぎられた仲間内だけで交配しているとかんがえられます(近親交配説あるいは生殖隔離説)。

論理的にとらえなおすとつぎのようになります。

  • 事実:「ブラックタイガー」(変異体)がトラ保護区でふえている。
  • 前提:遺伝学。
  • 仮説:生息域が分断され、かぎられた仲間内だけで交配しているのではなだろうか(近親交配説あるいは生殖隔離説)。

この論理は仮説法です。

実際に、トラの生息域分布図をみると分断がすすんでいることがわかります。人口増加などにより人間の領域が拡大しているので当然のことでしょう。

IUCN, IUCN Red List of Threatened Species. (2009-2014)(注2)

そして遺伝学を前提とし、仮説がただしいとすると、近親交配により遺伝子の劣化がすすみ、いずれトラは絶滅するだろうと推論(予想)できます。

  • 前提:遺伝学。
  • 仮説:生息域が分断され、かぎられた仲間内だけで交配しているのではなだろうか。
  • 予想:遺伝子の劣化がすすみ、いずれトラは絶滅するだろう。

この論理は演繹法です。

生物多様性には、生態系の多様性と種の多様性と遺伝的多様性があり、種の多様性が一般的には注目されますが、実際には、このような階層構造が多様性にもあり、近親交配がすすむと、遺伝的にちかい個体ばかりになって遺伝的多様性がたもてなくなり絶滅の危機がおとずれます。

近親交配(遺伝的多様性の喪失)は保護区の盲点であり、気がついていない人がおおいですが重要なことです。

たとえばネパールにも、チトワン国立公園やバルディア国立公園など、トラをはじめ、さまざまな野生動物を保護している保護区があり、エコツアーもおこなわれていますが、遺伝的多様性の重要性についてはほとんどしられていません。

野生動物の絶滅をふせぐためには、たいへんむずかしいですが、生息地と生息地をむすびつける、動物が移動できる「回廊」をつくる必要があります。

▼ 関連記事
絶滅の「実験」がすすむ -『ナショナルジオグラフィック』(2019.10号)-
移動ルートを維持・回復する -「失われゆくジャガーの王国」(ナショナルジオグラフィック 2017.12号)-
大量絶滅をくいとめられないか
「サイを救え!」(ナショナルジオグラフィック 2018.10号)
自然史のストーリーをイメージする - 国立科学博物館 –

▼ 注1:参考文献
「トラの縞模様が示す危機」, pp.26-27, 日経サイエンス, 610, 2022年4月号

▼ 注2:参考サイト
これを読めばトラ博士?!絶滅危惧種トラの生態や亜種数は?(WWF JAPAN)

3D「アイヌプリ - 北方に息づく先住民族の文化 -」(國學院大學博物館)

先住民族の流儀が北方に息づきます。カムイがカミ(神)になりました。日本の深層にアプローチします。

先住民族の流儀が北方に息づきます。カムイがカミ(神)になりました。日本の深層にアプローチします。

金田一京助・久保寺逸彦没後50年・企画展「アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―」が國學院大學博物館で開催されています(注1)。

ステレオ写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやりかたはこちらです

アトゥㇱ(樹皮衣)
アトゥㇱ(樹皮衣)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
ニマ(椀)と イタ(盆)
ニマ(椀)と イタ(盆)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
マキリ(刀子)
マキリ(刀子)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
タンパコオプ(喫煙具)
タンパコオ(喫煙具)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
タマサイ(首飾り)とエムㇱ(飾太刀・腰刀)
タマサイ(首飾り)とエムㇱ(飾太刀・腰刀)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
イクパスイ(捧酒箸)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)
イクパスイ(捧酒箸)
(北海道アイヌ、明治-昭和時代、19-20世紀)

「アトゥㇱ(樹皮衣)」は、オヒョウなどの北方に多産する落葉高木からえた糸でおった樹皮衣であり、独特の文様を刺繍したものがおおく、なかには、染糸を駆使して縦縞をあしらった生地のものもあります。アイヌの伝統的衣服には、獣皮や鳥毛、草木の繊維、交易で入手した木綿などの素材が利用されました。

「ニマ(椀)」は、ふかさのある椀状のもので、長形・丸形・把手つきなど様々な形状とサイズがあり、料理をもるだけでなく、こねたり すりつぶしたりする際の調理器具としての役割もありました。

「イタ(盆)」は、平たい形状のもので盆としておもにつかわれましたが、料理を直接もることもありました。

アイヌの人々は、さまざまな日用品を木でつくりだし、いずれも、「マキリ」という小刀をつかって男性が製作し、うつくしいアイヌ文様がしばしばほどこされました。

「マキリ(刀子)」は、男女ともに携帯した小刀であり、日常生活のさまざまな手仕事に使用しました。鞘や柄には、抽象・具象文様の彫刻が精緻にほどこされ、アイヌの代表的な工芸としてもしられます。女性用のこぶりな「メノコマキリ」は、装飾性がとくにたかいものがおおく、求愛の証として男性からおくられたといいます。幕末頃からは、土産品としての需要も発生し、和人の家紋を意匠にくみこんだものもあります。

「タンパコオ(喫煙具)」は、うつくしく彫刻で装飾された印籠状の煙草入れであり、「キセリ(煙管)」とともに腰からさげて携行されました。喫煙の風習は、和人や大陸との交易によってもたらされ、日常生活における嗜好品のみならず、他者と交流をふかめる際や、「カムイ(カミ、神)」や祖先への祈りをささげるおりなど、儀礼や祭祀に不可欠なものとして重宝され、社会的・文化的におおきな意味をもちました。

「タマサイ(首飾り)」は、ガラス玉をつらねたアイヌ独自の首飾りであり、儀礼の際に女性が身につけます。母から娘、姑から嫁へとうけつがれる「イコㇿ(宝物)」であり、連数がおおいほど上等とされます。ガラス玉はおもに大陸からの移入品であり、北東アジアを経由して清と松前をつないだ物流網のなかで、アイヌがおこなった山丹交易をとおして入手されました。

「エムㇱ(飾太刀・腰刀)」は、儀礼や祭祀のときに男性が身につける装身具です。外装には、自製の木製品や、和人との交易で入手した金属製の拵(こしらえ)などがあります。アイヌは、金属器を輸入にたよっていたため、刀身を欠いた竹光状のものもおおくみられます。宝物としてあつかわれるものは祭壇にかざられることもあります。アイヌの人々は、儀礼や祭祀の際にはさまざまな装身具を着用して威儀をただします。

「イクパスイ(捧酒箸)」は、アイヌと「カムイ(カミ、神)」が対話するための重要な祭具です。アイヌの人々は、ともにくらすカムイに対してさまざまな祈りをささげ、祭祀や儀礼において、イクパスイの先端につけた酒をカムイヘささげ、人間の不完全な言葉を完全にしてカムイにつたえられると信じてきました。抽象・具象の文様 は、動植物や生業活動をモチーフとしたものもおおく、カムイヘささげられた願い事をうかがいしる手がかりとなります。

アイヌの人々は、「まわりに存在する数限りない事象にはすべて『魂』が宿っている」とかんがえます。広大な大地、はてしない海原、ながれゆく川、ゆたかな自然のなかを大小の動物たちが往来し、色とりどりの植物が山々に群生します。これらすべてが魂を宿しているということは、ある使命をになって天上からまいおりてきて姿かたちをかえながらこの地上にすんでいる証であり、天上の世界では別の姿をしていたものがこの世にきて、動物や植物といった事象に化身したのであり、このようなものがアイヌの人々には「カムイ」として意識されます。したがってゆたかな自然のいたるところに、この世でのつとめをになったカムイが姿をかえてそれぞれすんでいるということになります。

カムイは、「人間の生活にとって必要なもの、人間の能力以上のものをもったもの」ですから、それらから、いきていくためのエネルギーを人間はもらわなければならず、カムイの庇護なくして生活はなりたたず、したがってカムイをうやまうことは当然のことであり、くらしを保障してもらうことへの願いとこれまでの感謝の意を「祈り」という儀式をとおして言葉に託してカムイにささげます。

このような儀式の際になくてはならない祭具のひとつが「イクパスイ(捧酒箸)」であり、これによって、人間の言葉が多少つたなくてもおぎなわれ、願いや感謝の気持ちがカムイに十分につたわります。

このように、人間が、カムイにすべきことをし、これに対してカムイが、なすべきことをすることによってカムイと人間の相互の生活が成立するのであり、こにに、カムイと人間が自然を媒介して調和したアイヌの世界観がみられます。

そしてアイヌ民族は日本の先住民族であり、アイヌ文化は先住民族の文化であるという前提にたつと、先住民族の「カムイ」が、その後の日本の「カミ(神)」になったのではないかという仮説がたてられます。

このようにかんがえると、自然現象や自然物をうやまう日本人の自然崇拝や、山・巨岩・滝・巨木などの御神体、成仏の範囲を、僧ばかりか俗人一般さらに動植物や山川にまで拡大し「山川草木悉皆成仏」をとく日本仏教などもよく理解できます(注2)。

アイヌの言葉と日本語の相似の例、アイヌ語が日本語になったとおもわれる例はほかにもたくさんあり、アイヌ文化を探究すれば、日本の深層文化を理解する手がかりがえられるはずであり、アイヌ文化をしることは日本の深層にアプローチすることになります(注3、4)。

▼ 関連記事
特別展「先住民の宝」(国立民族学博物館)1 - アイヌ –
梅原猛『日本の深層』をよむ(その1. 東北の旅)

▼ 注1
企画展「アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―」
会場:國學院大學博物館
会期:2021年11月18日~2022年1月22日
※ 一部のみ撮影が許可されています。
企画展「アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―」を展示解説!(YouTube)

▼ 注2
日本の「カミ(神)」と西洋の「god」はまったくことなり、神=god とかんがえていると誤解が生じます。

▼ 注3
ある地域の中心地では進歩・発展によりふるいものがうしなわれますが、中心からはなれた所ではふるきよきものがのこる傾向にあります。ふるい文化は辺境にのこります(ドーナツ化モデル)。

▼ 注4
アイヌ文化は日本の先住民族の文化ではないかという仮説がたてられますが、ただし今日のアイヌ文化は、外来文化の影響をうけていくらか変化している可能性もあるので、現在観察できる物事をいったん要素に分解し、くわしくしらべなおす必要があります。このような作業は分析ともいい、演繹法の実践例でもあります。

▼ 参考文献
國學院大學博物館編集・発行『アイヌプリ―北方に息づく先住民族の文化―』(図録)、2021年
アイヌ民族博物館・児島恭子監修『アイヌ文化の基礎知識』(増補・改訂版)草風館、2018年
『今こそ知りたいアイヌ』(サンエイムック 時空旅人 ベストシリーズ)三栄、2021年
梅原猛著『梅原猛著作集 7 日本冒険(上)』小学館、2001年
梅原猛著『梅原猛著作集 8 日本冒険(下)』小学館、2001年

※ アイヌ民族博物館・児島恭子監修『アイヌ文化の基礎知識』は、アイヌ文化に関する基本的な事項をわかりやすく概説しており、アイヌの代表的な言葉もわかります。入門書としておすすめします。
※ 『今こそ知りたいアイヌ』は、ふんだんに写真をつかった一般むけアイヌ・ガイドブックです。アイヌ関連の博物館・資料館、アイヌゆかりの地なども紹介しており、旅行案内書としても有用です。
※ 梅原猛著『梅原猛著作集 7 日本冒険(上)』では「二─火 その二」「「四-鳥 その二」において、『梅原猛著作集 8 日本冒険(下)』では「第四の旅 母文明」においてアイヌについてくわしく論述しています。アイヌ文化とともに沖縄文化についてものべ、弥生人(渡来人)がつくった大和朝廷の支配下に はいらなかった先住民族が日本列島の北と南にのこり、それらがアイヌと沖縄人ではないかという仮説を提案し、アイヌ文化と沖縄文化を日本本土の文化と比較研究するという今後の方針がしめされます。

▼ 参考サイト
国立アイヌ民族博物館
国立民族学博物館「東アジア展示・アイヌの文化」

3D さくやこの花館「極地の植物」

咲くやこの花館は極地の植物も展示しています。低緯度から高緯度まで、熱帯から寒帯まで、多様な環境が実感できます。極限(極端)をしると全体像が容易につかめます。

咲くやこの花館は極地の植物も展示しています。低緯度から高緯度まで、熱帯から寒帯まで、多様な環境が実感できます。極限(極端)をしると全体像が容易につかめます。

咲くやこの花館(注1)には、「極地の植物」展示室が高山植物室に隣接して小規模ながらあり、北極と南極の植物が紹介され、極限の環境を垣間みることができます。

ステレオ写真は平行法で立体視ができます(注2)。
立体視のやりかたはこちらです。

コケマンテマ
(ナデシコ科、周北極)
サリクス・ポラリス(ヤナギ類の仲間、ヤナギ科、北極圏)
サリクス・ポラリス
(ヤナギ類の仲間、ヤナギ科、北極圏)
クジャクシダ(adiantum pedatum、ホウライシダ科)
クジャクシダ
(adiantum pedatum、ホウライシダ科、周北極)
チョウノスケソウ(東アジア北部、バラ科)
チョウノスケソウ
(東アジア北部、バラ科)
クロヒゲゴケ
(サルオガセ科、周南極)
クロヒゲゴケ
(サルオガセ科、周南極)

北極圏は、北緯66度33分よりも北の地域であり、シベリアや北アメリカ大陸北部では永久凍土の表面が夏にはとけるため、草本植物や地衣類からなるツンドラがひろがり、樹木としては、地面をはうようなシラカバやヤナギの仲間が少数種みられます。コケマンテマやチョウノスケソウなど、アルプスやロッキー山脈のものとの共通種もあります。

南極大陸では、比較的あたたかい南緯68度付近の南極半島に、花をつける植物として、ナンキョクミドリナデシコ(ナデシコ科)とナンキョクコメススキ(イネ科)が自生します。そこよりも南のさむい地域ではコケ類や地衣類などの隠花植物が分布し、地衣類は、南緯89度あたりまでみられます。日本の昭和基地周辺には、6種類のコケと30種類あまりの地衣類が生育しています。

ケッペンの気候区分によると、樹木がみられない気候は、乾燥して樹木が生育できない「乾燥帯」と、低温で樹木が生育できない「寒帯」に分類され、寒帯は、月平均気温が最暖月でも10℃未満で、夏の最暖月の月平均気温が0℃以上になる「ツンドラ気候」と、年間をとおして月平均気温が0℃未満となる「氷雪気候」に区分されます。

ツンドラ気候は、北極海沿岸やチベット高原・アンデス山脈などの高山地域に分布し、みじかい夏には氷雪や凍土層がわずかにとけて大小の湖沼や湿地がひろがり、コケ類(蘚苔類)やシダ類(地衣類)などが生育します。土壌は、有機物の分解が低温のためすすまない「ツンドラ土」が分布します。

氷雪気候は、氷雪に年中おおわれ、大陸氷河が特徴的な南極大陸やグリーンランド内陸部に分布します。

咲くやこの花館にいけば、熱帯から高山帯・極地まで、植物と環境の多様性を一度に一気に体験できます。熱帯と寒帯という両極端を対比することによって地球上の自然環境の全体像が容易につかめます。また環境の要素として気温と降水量が非常に重要であることもわかります。大変すぐれた植物館です。

▼ 関連記事
3D 咲くやこの花館「熱帯雨林植物室」
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3D 咲くやこの花館「高山植物室」

3D 刺激スパイス展(咲くやこの花館)

モデルをつかって気候帯をとらえる - 寒帯(『気候帯でみる! 自然環境〈5〉』)-
極北の野生にせまる危機(ナショナルジオグラフィック 2018.6号)
北極経済圏が出現する -『ナショナルジオグラフィック』(2019.9号)-
消える生命の氷 -「南極半島」(ナショナルジオグラフィック 2018.11号)

極端な環境をしる -「ゾクゾク深海生物」(サンシャイン水族館 11)-
極端を知って全体をとらえる - 本多勝一著『極限の民族』(3)-
超深海・極限の生物 - 特別展「深海 2017」(国立科学博物館)(2)-
最高の国と最低の国を知り、物差しをつくる - 眞淳平著『世界の国 1位と最下位』-
物の最大を知って全体像をつかむ -『信じられない現実の大図鑑』-

▼ 注1
咲くやこの花館
咲くやこの花館【公式】動画チャンネル

咲くやこの花館フロアマップ

▼ 注2
撮影日:2021年10月20日

▼ 参考文献
『咲くやこの花館ガイドブック』財団法人大阪市公園協会発行、1990年
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる!自然環境〈5〉寒帯』少年写真新聞社、2013年
村瀬哲史著『村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編』学研プラス、2018年

▼ 関連書籍

3D「縄文 2021 - 東京に生きた縄文人 -」(江戸東京博物館)

フィールドワークによって新事実を発見します。〈人間-文化-自然環境〉系がうかびあがります。物質的文化と精神的文化があります。

フィールドワークによって新事実を発見します。〈人間-文化-自然環境〉系がうかびあがります。物質的文化と精神的文化があります。

特別展「縄文 2021 - 東京に生きた縄文人 -」が江戸東京博物館で開催されています(注)。縄文時代の出土品がどのような場所でどのように利用されていたかを最新の調査・発掘結果からあきらかにし、復元模型や映像などもつかってあらたな縄文時代像を提示します。

プロローグ
第1展示室 東京の縄文遺跡発掘史
第2展示室 縄文時代の東京を考える
第3展示室 縄文人の暮らし
第4展示室 考古学の未来
エピローグ

ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやりかたはこちらです

多摩ニュータウンのビーナス
(土偶、縄文時代中期、本展のシンボル展示)
多摩ニュータウンのビーナス
(土偶、縄文時代中期、本展のシンボル展示)
深鉢形土器(縄文草創期、武蔵野市御殿山遺跡から出土した世界最古級の土器の断片)
深鉢形土器(縄文草創期)
(世界最古級(約16,000年前)の土器の断片、武蔵野市御殿山遺跡)
大森貝塚から出土した貝類
大森貝塚から出土した貝類
大森貝塚から出土した深鉢(縄文後期)
大森貝塚から出土した深鉢(縄文時代後期)
縄文時代の植生
植生の変化
縄文人復元像と頭骨(レプリカ)(縄文時代中期後葉)
縄文人復元像と頭骨(レプリカ)(縄文時代中期後葉)
磨製石斧(縄文草創期)
磨製石斧(縄文時代草創期)
磨製石斧
磨製石斧
(縄文早期(左上)、縄文前期(右上)、縄文中期(左下)、縄文晩期(右下))
97:磨石(縄文早期)、98:敲石(縄文前期)、99:敲・凹石(縄文前期)、100:敲石(縄文前期)、101:磨敲石(縄文前期)
97:磨石(縄文早期)、98:敲石(縄文前期)、99:敲・凹石(縄文前期)、100:敲石(縄文前期)、101:磨敲石(縄文前期)
木の実
木の実
石皿(縄文前期)
石皿(縄文時代前期)
縄文時代中期の土器
縄文時代中期の土器
鉢(木製、縄文中期後半)
鉢(木製、縄文時代中期後半)
交流を物語る土器
交流を物語る土器
神津島砂糖崎産黒曜石
神津島砂糖崎産黒曜石

「多摩ニュータウンのビーナス」(土偶、縄文時代中期)は、5380〜5320年前につくられたと推定され、ていねいにしあげげられており、表面は光沢をおび、眼下の2本沈線・正中線・臂部の区画内には白色の物質がのこり、塗彩した跡だとかんがえられます。

「深鉢形土器」(縄文草創期)は、東京都・武蔵野市御殿山遺跡から出土した世界最古級(約16,000年前)の土器の断片であり、縄文時代がはじまった年代をしるためにとても重要な遺物です。

「大森貝塚」は、東京都品川区から大田区にまたがる縄文時代後期〜晩期の貝塚であり、1877 (明治10)年に来日し、お雇い外国人にのちになったアメリカの動物学者・エドワード=シルベスター=モースにより発見・調査され、ここから、近代科学的な縄文時代の遺跡研究と日本の考古学がはじまりました。

「植生の変化」は、当時の人々の環境へのはたらきかけをしる手がかりとなります。たとえば東京都北区御殿前遺跡では、縄文時代早期後葉には遺跡周辺の台地斜面にはクリが優勢でカエデ類をともなう林が成立し、また周辺には、ウルシの樹木も生育していました。クリ林はその後、しばらくは縮小しますが、中期頃にはふたたび拡大します。縄文人は、植物の採集活動にくわえ、積極的に環境にはたらきかけ、人為的な植生をつくりだしていました。

「縄文人復元像」は、新宿区加賀町二丁目遺跡(縄文時代中期後葉)で発掘された人骨から復元された復元像であり、身長160cm前後の男性、年齢は40歳代と推定されます。復顔の基準には、世界のいろいろな集団の顔のデータを平均化した解剖学上のデータを使用しています。

「磨製石斧」は、「磨かれる」ことに特徴をもつ石器であり、磨く技術は、旧石器時代からあり、縄文時代草創期および早期前半にもみとめられ、早期後半以降は全面が研磨された磨製石斧があらわれます。形態にも改良がみられ、早期には薄手で小型だったものが、前期前半にはやや厚手で大型となり、前期後半には厚手で棒状の乳棒状石斧が出現し、中期には、定角式磨製石斧がつくられるようになり、従来よりも製作に時間と手間がかかりますが切れ味と耐久性が格段にあがりました。メンテナンスもおこなわれ、おれたものは楔(くさび)として再利用されました。

「磨石」「敲石(たたきいし)」「石皿」は、植物加工具であり、植物利用が本格化したことをしめします。それまでの狩猟・漁撈にくわえ、採集の比重がふえ、縄文的な生業体系が確立しました。植物の管理が積極的におこなわれていたとかんがえられます。

「土器」は、「煮る」「貯める」「盛る」の3つの用途をおもにもち、最初は、煮るための「うつわ」を完成させるために試行錯誤をくりかえし(草創期)、やがて、用途によって形をかえ、模様(文様)をつけて変化にとむようになりはじめ(早期〜前期)、過度ともいえる装飾と大形化がすすみ(中期)、最後には、日常生活でつかう土器とマツリなどの特別なときにつかう土器とをつくりわけ、器形の多様化がすすみ、それぞれにあわせた機能美へたどりつきます(後期〜晩期)。

「鉢(木製)」は、縄文中期後半の世田谷区岡本前耕地遺跡の漆器の大型浅鉢であり、トチノキ製であり、平面形はほぼ円形にわりつけ、孔のあいた一対の把手を木口側につくっています。縄文時代には、樹木やさまざまな植物をもとに、生活や生産に必要な木器・漆器・繊維製品がつくられました。

「交流を物語る土器」は、モノや人が移動し交流していたことをしめす土器です。多摩ニュータウン遺跡出土の土器には、東北地方南部の中期後半「大木式(たいぎしき)」、中部地方の中期前半「後沖式(うしろおきしき)」、東海地方の中期前半「北浦式」、東海・近畿地方の中期後半「咲畑式(中富式)」があり、これらのおおくは各地からはこばれてきたわけではなく、それぞれの地方から人がやってきて多摩地方の人におしえてつくられたと推定されます。人々の移動と交流、交易ルートの形成には、各地域の拠点集落が重要な役割をはたしていたとかんがえられます。

「神津島砂糖崎産黒曜石」は、海をわたって神津島から黒曜石をはこんでいた人々がいたことをしめします。石器には、材料となる良質な岩石や鉱物が欠かせず、縄文人は、石器にむいた岩石や鉱物がどこにあるのかをしっていて、石器の種類に応じて各地の石材を入手、つかいわけていました。

人間は、自然のために器を用意してやればいい -マングローブをそだてる-

以前は1本も生えていたかったヒルギーゴの海岸に、今では70万本のマングローブが生長している。

「海の森 マングローブを救え」NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版, 2007年2月号

米国の生物学者・ゴードン=サトウは、紅海沿岸のエリトリアで住民と協力して、70万本のマングローブを6年かけて育てた。植林がはじまってしばらくすると、ボラのような小さな魚があつまるようになり、それをエサにする大型魚がとれるようになった。大型魚は市場で高く売れるという。また、ヒツジの群れがマングローブの胎生種子をリンゴのようにバリバリと食べるようになったという。

マングローブの植林は生態系をつくりだし、それが経済的効果をも生みだす実例である。自然はただ再生すればよいというものではなく、そこで暮らす現地住民の生活を向上させることが重要である。

サトウは、「人間は自然のための器を用意してやればいい。あとは自然自身がそこを“わが家”にして活動を開始する」と言う。

NGOサポート募金ウェブサイトがリニューアルされる

国際協力NGOセンター(JANIC)が運営するウェブサイト「NGOサポート募金」がリニューアルされることになった。

そのために、(特活)ヒマラヤ保全協会も団体と活動を紹介する原稿と写真をJANICに提出した。

1.ひとことキャッチコピー
 ヒマラヤの自然を守り、村人を支援します!

2.団体紹介要約文
 ネパール・ヒマラヤにおいて、自然環境の保全、村人の生活改善、地域の活性化をすすめている国際協力NGOです。人々が主体的に参画することで、学びあい成長できる場をつくりだしています。

3.団体紹介文
 ヒマラヤ保全協会は、ネパール・ヒマラヤにおいて、自然環境の保全、村人の生活改善、地域の活性化をすすめている国際協力NGOです。関係者が主体的に参画することで、共に学びあい成長できる場をつくりだしています。その活動は、

(1) 森林保全を中心とした環境保全活動:村人の生活に役立つ「生活林」をつくりだしながら、ヒマラヤの自然環境を保全しています。また、生活廃棄物処理プロジェクトもおこなっています。

(2) 生活改善活動:飲料水の供給、収入向上プロジェクトなどにより村人の貧しい暮らしを改善しています。

(3) 教育支援:貧しい小学生に奨学金を支給し、子供たちの成長を助けています。ネパールには貧しくて学校に行けなくなる子供たちがたくさんいます。また、校舎の補修や教材支給もおこなっています。 

4.サイト閲覧者(寄付者)へのメッセージ
 ヒマラヤ保全協会は、ネパール・ヒマラヤの人々と共に学びあいながら、自然と人間の共生をめざして、日々活動をつづけています。世界の屋根・ヒマラヤの大自然を守るために、また、そこで暮らす貧しい人々を支援するために、ご協力を是非お願いします!

5.主な活動対象国:ネパール
  主な活動対象者:ネパールの一般住民、日本の一般市民
  主な活動分野:環境保全、生活改善、地域活性化

種から苗木を育てる
写真1 種から苗木を育てる
ヒマラヤでの植樹
写真2 植樹
写真3 山村の子供たち

アマゾンの熱帯雨林が崩壊していく

2007年1月より、ナショナル・ジオグラフィック誌は、シリーズ企画「地球の悲鳴」を開始した。地球環境が今どんな危機にさらされているのか、それに対してどんな手立てを講じていくのかを、日本をふくめ世界各地から報告するという。

その第1回として、休息に破壊の進むアマゾンの熱帯雨林がとりあげられた(注)。

ラジル・アマゾンの熱帯雨林は、この40年間に20%近くが消失した。今後20年間にさらに20%が失われるとみられ、そうなれば森林の生態系は崩壊する。

業者は森林伐採のために道路をつくり、森林が伐採しつくされ業者がいなくなると、土地を不法に占拠しようとする人々が入りこみ、さらに破壊がすすんでいく。そして、そこは放牧地や農耕地に変わっていくという。

ドロシー=スタング修道女は、森林保護と労働者の支援に情熱をかたむけたが、森林伐採を止めようとして、2005年に悪徳業者のやとった用心棒の凶弾にたおれた。

森林破壊に歯止めがかかることはない。

▼ 注
地球の悲鳴「アマゾン崩壊 消えてゆく世界最大の熱帯雨林」ナショナル・ジオグラフィック日本語版2007年1月号, 40-71ページ。

ヒマラヤ氷河、地球温暖化で1/5に縮小、2035年までに

「現在のペースで温暖化が進んだ場合、ヒマラヤ山脈の氷河が2035年までに1995年時の5分の1に縮小する。地球温暖化が世界に与える影響を評価した国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最終草案が9日、明らかになった」(時事通信社, 2007/02/09)。

氷河の融解で洪水が増え、水源の崩壊が進むのは「ほぼ確実」との見解を示した。4月初旬にベルギーで開かれる作業部会で審議し、採択する予定だという。

草案は、他地域での氷河や積雪の融解も含め、世界人口の6分の1以上が、氷河などとして蓄えられている水量の減少で影響を受ける可能性が高いと指摘した。アジアでは2050年代には1億8500万~9億8100万人が水不足の状況下に置かれると予測しているという。