図解と文章をみなおします。その国や地域の概略・全体像をつかみます。〈事実→前提→仮説〉と論理をすすめます。
これまでみてきたように、ネパール西部・サリジャ村でのフィールドワークによってえられた一次ファイル(データカード)をKJ法をつかって処理し文章化したことによりサリジャ村の状況をつかむことができました。この過程は「状況把握」といいます。フィールド(現場)の事実にもとづいているということが大事です。
このような作業をすすめていると、「そういえば・・・」「・・・かもしれない」「・・・ではないだろうか」「・・・だろう」など、いろいろなことをあらたにおもいつきます。またKJ法図解をもういちどみなおし、文章をよみなおしてみると、さらにいろいろなことがおもいうかび考察がすすみます。これは現場や現象の本質を追求する過程であり、「状況把握」に対して「本質追求」とよびます。このようにしてえられたアイディアはことごとく仮説といってもよく、問題解決にこれらをいかしていくことができます。
ただし仮説をたてる場合、それらの前提となる、ネパールの地理と歴史の概略・全体像をおさえておいたほうがよいです。そのほうが仮説がでやすく、概略や全体像がわからず前提を確認しないでいると妄想におちいります。
今日では、概略をしるために AI(人工知能)がつかえます。たとえば「ネパールの地理と歴史の概略をおしえて」と AI にたずねます。
一例として、ChatGPT の回答を引用しておきます。
ネパールの地理(どんな国?)
■ 位置
- 南アジアに位置
- 北:チベット(中国)/ 南・東・西:インドに囲まれた内陸国
- 面積は 日本の約4割ほど
■ 地形の特徴(超重要)
ネパールは南北にわずか200kmほどですが、地形の変化が極端です。
- ヒマラヤ山脈(北部)
- 世界最高峰 エベレスト(8,848m) を含む
- 8000m級の山が8座もある
- 氷河・万年雪・高山民族(シェルパなど)
- 丘陵・山岳地帯(中部)
- 首都 カトマンズ盆地 がある
- 農業・都市・文化の中心
- 古代王朝の都が集中
- タライ平原(南部)
- インドにつながる肥沃な平原
- 米・小麦など農業地帯
- 人口密度が高い
👉 「世界で最も標高差が大きい国の一つ」(南は海抜60m、北は8,000m超)ネパールの歴史(ざっくり流れ)
① 古代〜中世:ヒンドゥー・仏教文化の交差点
- 古くから インド文明とチベット文化の通路
- 仏教の開祖・釈迦(ブッダ)はネパール生まれ、ルンビニ(南部)が誕生地
- ヒンドゥー教と仏教が共存する独特の宗教文化が形成
② 中世王朝時代(〜18世紀)- マッラ王朝などが分立
- カトマンズ盆地に美しい寺院都市が発展、パタン、バクタプルなど
- 商業・芸術・建築が栄える
③ 近代:ネパール王国の成立(18世紀)- プリトヴィ・ナラヤン・シャハが統一
- 「山が城壁」となり、植民地化を免れる
- イギリスと戦うが、完全併合はされなかった、グルカ兵で有名
④ 20世紀:王政と混乱- 王政が続くが、貴族支配、民主化運動、内戦(毛沢東派の反政府運動)
- 2001年 王族大量殺害事件で王制の正統性が崩壊
⑤ 現代:共和制国家へ(2008年〜)- 王制廃止
- ネパール連邦民主共和国成立
- 民主政治は不安定だが、王はいない
ネパールを一言で言うと「ヒマラヤに守られ、宗教と文化が交差してきた国」
- 地理 → 極端な高低差
- 歴史 → インドとチベットの間で独自進化
- 現代 → 王国から共和国への大転換を経験
このようにわかりやすく簡潔にまとめてくれます。さらに AI に質問をくりかえしたり、AI と議論をふかめたりすることもできます。ただし AI はまちがうことがあるので、正確を期するために、Google Gemini、Claude、Perplexity、Grok など、複数の AI をつかってクロスチェックをしたほうがよいでしょう。また『地球の歩き方』などのガイドブックや概説書も参考になります。フィールドワークとKJ法(状況把握)をまずおこない、そのうえで AI を利用し参考文献をよむと、おどろくほど理解がすすみます。本をただよんでいただけでは身につかなかったことが簡単に身につきます。
こうして、フィールドワークとKJ法の結果は、前提をへて、仮説の発想へすすみます。〈事実→前提→仮説〉とすすむこの方法(論理)は 「仮説法」あるいは「アブダクション」とよばれます。

仮説法(アブダクション)のモデル
これからのあたらしい時代は AI にできることは AI がやるようになり、人間にしかできないことは人間がやるようになります。人間にしかできないことの好例としてフィールドワークとKJ法があげられます。
あるいは自分自身の目でみて耳できいて肌で感じて(感覚器官をつかって)えられた一次情報と、AI などによってえられる二次情報(場合によっては三次情報、四次情報)のちがいにも注目してください。これらの相違を認識して、みずからの感覚・体験によってえられた一次情報の処理を中核にしながら AI を活用していくという方法が人間らしく生きるためには必要でしょう。
▼ 関連記事「KJ法のコツ」
KJ法のコツ(1) − データカード −
KJ法のコツ(2) − 見出しづくり −
KJ法のコツ(3) − ラベルづくりとラベルひろげ −
KJ法のコツ(資料)「データカードの見出しと本文」
KJ法のコツ(4) − ラベルと記憶 −
KJ法のコツ(5) − ラベルあつめ −
KJ法のコツ(6) − 相対的にとらえる −
KJ法のコツ(7) − 表札づくり −
KJ法のコツ(8) − ラベルひろげとラベルあつめ(2段目)−
KJ法のコツ(9) − 表札づくり(2段目)−
KJ法のコツ(10) − ラベルひろげとラベルあつめ(3段目)−
KJ法のコツ(11) − 表札づくり(3段目)−
KJ法のコツ(12) − ラベルひろげとラベルあつめ(4段目)−
KJ法のコツ(13) − 表札づくり「核融合法」−
KJ法のコツ(14) − グループ編成(5段目)−
KJ法のコツ(15) − グループ編成(6段目)−
KJ法のコツ(16) − グループ編成と情報処理 −
KJ法のコツ(17) − シンボルマーク −
KJ法のコツ(18) − 図解化(空間配置とインデックス図解)−
KJ法のコツ(19) − 図解化(細部図解 ①〜②)−
KJ法のコツ(20) − 図解化(細部図解 ③〜⑦)−
KJ法のコツ(21) − 図解化(全体図)−
KJ法のコツ(22) − 文章化 ① −
KJ法のコツ(23) − 文章化 ② −
KJ法のコツ(24) − 文章化 ③ −
KJ法のコツ(25) − 文章化(まとめ)−
KJ法のコツ(26) − 日本語の原則とKJ法 −
KJ法のコツ(27) − フィールドワークとKJ法 −
KJ法のコツ(28) − 本質追求 ① AI をつかって前提をおさえる −
KJ法のコツ(29) − 本質追求 ② 仮説を構成する −
KJ法のコツ(30) − 本質追求 ③ 文章化 −
▼ 関連記事「日本語の作文法」
日本語の作文法 ー 原則をつかう ー
▼ 参考文献(ネパールの概略をしる)
『地球の歩き方 ネパールとヒマラヤトレッキング』2025年、地球の歩き方
(社)日本ネパール協会編『ネパールを知るための60章』(エリア・スタディーズ)2000年9月25日、明石書店
(公社)日本ネパール協会編『現代ネパールを知るための60章』(エリア・スタディーズ 178) 2020年5月20日、明石書店
▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle
(冒頭写真:ネパール、バクタプル、ダルバール広場、1998年2月21日、筆者撮影)





