形式にとらわれずに一次ファイルをつくります。車の両輪が情報処理をすすめます。累積的効果がうまれます。
KJ法にとりくむ場合、フィールドワークをその前にしておかなければなりません。フィールドワークは、学者・研究者・記者などがおこなう専門的な行為だとおもっている人がいるかもしれませんがそうではなく、散歩や旅行、出張や視察あるいは生活や仕事などの現場で見聞きし体験し取材するのがフィールドワークであり、取材や調査を現場でする行為はすべてフィールドワークです。
そもそもフィールドとは日本語では「場」といい、現場・広場・職場・工場・農場・牧場・漁場・市場・会場・劇場・道場・戦場・磁場などはすべてフィールドです。それは、物事がおこなわれる、あるいは現象がおこる領域・空間であり、立場・遊び場・生活場・仕事場・売り場・盛り場・火事場・修羅場・正念場などもフィールドです。フィールドワークをひろくとらえなおすことが大事です。
人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からいうと、見たり聞いたり味わったりすることは、感覚器官をつかって現場の事実を内面にインプットすることであり、イメージしたり記憶したり考えたりすることはプロセシング、情報のひとまとまりを「データカード」に書きだすことはアウトプットです。そしてデータカードをつくったらその見出しを「元ラベル」にしてKJ法の作業をすすめ、「ラベルひろげ」でラベルを見る(読む)ことはインプット、データカードの本文や現場での体験をおもいうかべたり、ラベルの類似性に気がついたりすることはプロセシング、「表札づくり」「図解化」「文章化」はアウトプットです。
フィールドワークもKJ法もともに情報処理の行為にちがいありませんが、フィールドワークでは、観察・聞き取りなど(インプット)に労力がかかり、KJ法では、図解化と文章化(アウトプット)に労力がかかります。フィールドワークではインプットに重点がおかれますが、KJ法ではアウトプットに重点がおかれます。したがってフィールドワークとKJ法をセットにして実践すればバランスよく情報処理をすすめることができます。
そしてフィールドワークとKJ法をつなぐのがデータカードです。データカードをたくさんつくっておけばKJ法の効果がよりあがります。データカードは情報のひとまとまり(単位)、つまりファイルであり、今日では、紙のカードよりも、メモアプリやワープロ・ブログなどをつかうことがおおいですが、そのような形式にとらわれずにファイルの仕組み・本質に気づくことが肝要です(図1)。

図1 ファイルのモデル
ただしデータカードには、現場で実際に見たり聞いたりした事実を記入しなければなりません。言語や数値で事実を記載したものをデータといい、データカードはデータのファイル、一次情報のファイルでなければならず、そのようなファイルを「一次ファイル」といいます。一次情報とは、自分が直接収集した情報であり、自身が実際に体験した内容であり、いいかえれば、インターネットで検索したりSNSでみつけたりテレビで視聴したり本でよんだりしたという二次情報ではないということです。フィールドワークをしながらあるがままを見て、すなおに聞き、事実をとらえ、現実をおさえ、データカードあるいはメモアプリ・ワープロ・ブログといった形式にかかわらず一次ファイルをまずつくります(注)。
フィールドワークとKJ法はこの一次ファイルが軸になって車の両輪のように機能し回転し、情報処理を確実にすすめます(図2)。車の両輪を回転させるためには軸がしっかりしていなければならず、途中でおれてしまっては車の回転どころではありません。なおフィールドワーク・データカード・KJ法のすべてをあわせて「野外科学的方法」ということがあります。

図2 車の両輪モデル
(FW=フィールドワーク)
このような見地からみると、KJ法はつかっていても、フィールドワークと一次ファイルを欠いていると図解も文章も薄っぺらのものになってしまうのは当然のことです。アタマのなかから言葉をつかって無理に考えをしぼりだそうとし、現実に立脚することができず、アイディアもうかばず、妄想におちいります。実際、「データカードは使わなくなっている」といってわたしを“指導”しようとしたある人の文章は内容がなく軽薄で言葉あそびでしかありませんでした。一次ファイルはきわめて重要です。
フィールドワークと一次ファイルにもとづいてKJ法図解をつくり文章化してみると、おもしろいことに、現場にいたときよりも現場がよく見えてきます。現場の本質までわかってきて現場への親しみもまします。一次ファイルをとおしてあらためて現場をとらえなおすことができ、「KJ法 → 一次ファイル → フィールド」のフィードバックが生じ、そしてもういちど現場にいってみたくなります。そうすれば、おもいついたこと(仮説)を検証できます。情報処理、仮説発想、検証という流れが生じ、そして情報処理がさらにすすみます。その先にある問題解決の領域にもすすんでいけます。情報処理の累積的効果とこれはいってもよいでしょう。
▼ 注
一次ファイルの例は下記を参照してください。
KJ法のコツ(資料)「データカードの見出しと本文」
これらは、山岳エコロジースクールに参加した専門家ではないごく普通の一般の人たちが書いたものです。このように、一次ファイルはむずかしものでは決してなく、見たり(観察)聞いたり(聞き取り)したりこと(事実)を何でも書けば(記録すれば)よいです。紙のカードや紙のノートをつかってもよいですし、メモアプリ・ワープロ・ブログなどをつかってもよく、そのような道具や形式にかかわらず、本文を書いたら見出しをかならずつけます。このようなことは、日々の生活や仕事のなかで、あるいは旅先や出張先などで誰もがおこなっていることです。しかし情報処理を自覚し、その仕組みを意識し活用してアウトプット(文章化)までおこなうようにすれば物事の認識がふかまり、世の中の見え方がかわります。
▼ 関連記事「KJ法のコツ」
⭐️KJ法のコツ(1) − データカード −
⭐️KJ法のコツ(2) − 見出しづくり −
KJ法のコツ(3) − ラベルづくりとラベルひろげ −
⭐️KJ法のコツ(資料)「データカードの見出しと本文」
KJ法のコツ(4) − ラベルと記憶 −
KJ法のコツ(5) − ラベルあつめ −
KJ法のコツ(6) − 相対的にとらえる −
KJ法のコツ(7) − 表札づくり −
KJ法のコツ(8) − ラベルひろげとラベルあつめ(2段目)−
KJ法のコツ(9) − 表札づくり(2段目)−
KJ法のコツ(10) − ラベルひろげとラベルあつめ(3段目)−
KJ法のコツ(11) − 表札づくり(3段目)−
KJ法のコツ(12) − ラベルひろげとラベルあつめ(4段目)−
KJ法のコツ(13) − 表札づくり「核融合法」−
KJ法のコツ(14) − グループ編成(5段目)−
KJ法のコツ(15) − グループ編成(6段目)−
KJ法のコツ(16) − グループ編成と情報処理 −
KJ法のコツ(17)− シンボルマーク −
KJ法のコツ(18) − 図解化(空間配置とインデックス図解)−
KJ法のコツ(19) − 図解化(細部図解 ①〜②)−
KJ法のコツ(20) − 図解化(細部図解 ③〜⑦)−
KJ法のコツ(21) − 図解化(全体図)−
KJ法のコツ(22) − 文章化 ① −
KJ法のコツ(23) − 文章化 ② −
KJ法のコツ(24) − 文章化 ③ −
KJ法のコツ(25) − 文章化(まとめ)−
KJ法のコツ(26) − 日本語の原則とKJ法 −
KJ法のコツ(27) − フィールドワークとKJ法 −
▼ 関連記事「日本語の作文法」
日本語の作文法 ー 原則をつかう ー
▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle
(冒頭写真:ネパール、バクタプル、1998年2月21日、筆者撮影)




