感情・行動・考え方を操作する(NHK ラジオ英会話, 2023.09)

情報処理

感情は、情報処理を裏からささえ支配します。物語の流れをよく味わいます。流れのなかでイメージをうごかし記憶します。

NHK ラジオ英会話、今月は、「感情・行動・考え方を操作する」をテーマに、「褒める」「行動の変更をうながす」「ものの見方・考え方の変更をうながす」などの発言タイプを練習しています。

Lesson 101 感情操作 ⑤ 褒める──よくやったね

Well done!

「よくやった・さすがだ・上出来だ」というポピュラーなフレーズです。done は過去分詞で「うまくなされた」ということです。

類似の決まり文句を仕入れましょう。

  • You did it!
  • Right on!
  • Way to go!
  • Thatta boy.
  • I’m proud of you.

Thatta boy. は、「That a boy.」を短縮しています。子どもやペットなどにおもにかけるほめ言葉です。

Lesson 102 感情操作 ⑥ 褒める──場面に即して褒める

You’ve made amazing progress. Keep up the good work.

みちがえるような相手の上達をふまえて「お続けください」とのべます。keep up は「そのまま・その調子で・頑張り続ける」、up には、「高いレベルで」というニュアンスが感じられます。

  • You’re showing good progress. Keep it up!
  • Your pronunciation has improved a lot.
  • You look great in that dress!
Lesson 103 感情操作 ⑦ 褒める──資質を褒める

I knew you had it in you.

「you have it in you」は「あなたは(実現のための)資質を持っている」→「あなたならできる」ということです。「I knew」と、相手の資質に対する信頼をつけくわえています。

  • I knew I could count on you.
  • You’ve got[You have] what it takes.
  • You’re the best coach.
Lesson 104 感情操作 ⑧ 相手に寄り添い力づける

I’ll stand by you.

「stand(立つ)」+「by(そば)」で「味方である」ことをあらわします。

  • I’ll (always) be there for you.
  • I’ve got [I have] your back.
  • I’m on your side.
  • You can (always) count on me.
Lesson 106 行動の変更をうながす ① 非難──さんざん注意したのに

I told you not to eat snacks after dinner.

「told you not to 〜」というように not を to の前におき、「~しないように(言った)」と表現します。

  • I told you to hang up your towel.
  • How many times have I told you to do your homework?
  • I’m fed up with telling you to clean up your room.
Lesson 107 行動の変更をうながす ② 非難──そのほかの非難

How could you do such a thing?

「どうしたら・どんな成り行きで」の how が、その行為の意外さ・逸脱を強調し、非難のトーンをうみだします。「How could you?(よくもまぁ・信じられない)」とすることもできます。

  • What (on earth) are you doing?
  • You shouldn’t be playing on your phone.
  • What do you have to say for yourself?
Lesson 108 行動の変更をうながす ③ 態度をとがめる

Don’t be so rude.

禁止の命令文「Don’t 〜」をもちいて「失礼なことを言うな・するな」といいます。

  • You are being rude [offensive].
  • Watch your manners.
  • We need to talk about your attitude.
  • Your outfit is inappropriate.
Lesson 109 行動の変更をうながす ④ 口の利き方をとがめる

Hey, watch your mouth!

相手の発言をとがめる典型的な表現です。「Hey,」で、相手の注目をひいて、注意に自然にながれます。

  • Don’t use [take] that tone of voice with me.
  • That’s inappropriate.
  • You’re the only person using such language here.
Lesson 111 行動の変更をうながす ⑤ 好ましくない習慣を改めさせる

Why must you be so negative all the time?

must をつかって、「どうしていつも~しなくてはならないの?」と 批判します。all the time は「いつでも・四六時中」、これで、相手の習慣を批判できます。

  • Why do you never respond to my texts?
  • You’re always [constantly] bringing up the past.
  • Do you have to chew with your mouth open?
Lesson 112 行動の変更をうながす ⑥ 期待外れを指摘する

You promised a spaceship would come to Mars this month, didn’t you?

期待どおりの行動を相手がしない、相手に裏切られたと感じたときにつかう表現です。不信感をあらわせます。

  • You told me the tickets were free, didn’t you?
  • I didn’t expect my commander to do this to me.
  • You lied to me.
Lesson 113 行動の変更をうながす ⑦ あるべき姿からの逸脱

That’s not like you at all.

相手がいつもの様子ではないときにつかいます。相手を気づかう際などによくつかう表現です。like は「~のような」、at は「点」をあらわすため、not 〜 at all は 「すべての点において~ない」→「まったく~ない」となります。

  • You’re not your usual smiling.
  • You are old enough to know better.
  • As a public figure, you should be setting a good example.
  • A real friend would have my back.
Lesson 114 行動の変更をうながす ⑧ 身から出たさび

You should have seen that coming.

「そうなるに決まっているじゃないですか」の典型例です。「should have + 過去分詞」は「(実際はそうしていないが)~するべきだった」ということです。

  • You were asking for trouble.
  • You got what you deserved.
  • You did this to yourself.

deserve は「~の価値がある」ということであり、いい意味でもわるい意味でもつかわれます。「あなたが受ける価値のあることを得た」です。

Lesson 116 新しいものの見方・考え方 ① 視覚系動詞を使う

Look at it this way.

look は「目を向ける」、this way は「このやり方で」であり、「見る+方法」のコンビネーションで見方をかえさせます。

  • Look at this issue.
  • Try to see it from another point of view.
  • Look inside yourself.
Lesson 117 新しいものの見方・考え方 ② 思考系動詞を使う

Think outside the box.

せまい「箱」からとびだして考えてみよう、「既成概念」にとらわれずにということです。

  • Think about it like this.
  • Have you ever thought about it this way?
  • Think (about the) big picture / long-term.
  • Think big.
  • Think different.

「Think different.」は「Think differently.」でもよいですが、Think different. のほうが「カッコよくキレがある」感じがします。

Lesson 118 新しいものの見方・考え方 ③ 相手の見過ごしを指摘する

Let’s not forget that this band started out as a pop music group.

「Let’s not forget that 〜」は、相手の見過ごしを指摘する効果的な表現です。相手の議論があきらかな看過にもとづいているときに効果的につかいます。

  • Don’t forget that coming here was your idea.
  • You must admit [have to agree] that this isn’t your best work.
  • The generation gap should not be overlooked.
Lesson 119 仲直り 水に流しましょう

Let bygones be bygones.

let は「ある状況が起こるのを許す=そのままにしておく」。bygone は「過ぎ去ったこと」。「過ぎ去った過去を過ぎ去ったままにしておきましょう」という意味です。ささくれ立った感情の修復に役立つ表現です。

  • Let’s wipe the slate clean.
  • Forgive and forget?
  • No hard feelings?

先月にひきつづき今月も、感情にかかわる表現を中心に練習しています。感情は、個人の内面での気持ちのうごきであり、人間の幸福や満足感をささえる、日常的には、知性や知識よりも重要なはたらきです。

情緒や感情は、大脳では大脳辺縁系の働きが大きく関与しています。それに脳幹の働きも関係しています。(中略)この部分は生命の進化の歴史からいうと大脳に比べてはるかに古くからできあがったところで、生命の根源的な働きに関与しているといえます。

栗田昌裕(著)『頭が良くなるコツがわかる本』, 1991年, コスモトゥーワン

知性による情報処理は大脳でおこなわれますが、感情はそれを裏からささえ、影で支配する重要な機能です。したがって感情を操作・制御することはおおきな課題であるといえ、感情にかかわる表現はとても大事であり、今月の練習はとても役だちます。

感情は知性では分析できず、知性で無理をしようとすると感情はながれず、鬱屈します。感情の流れにねじれがあると素直に表現できません。場合によっては、嫉妬あるいは自虐になってしまいます。

自然な流れが大事であり、今月の練習でも、それぞれのキーフレーズを機械的に単独で暗記するのではなく、スキット(物語)の全体的な流れをよく味わって、その流れのなかで記憶していくことがもとめられます。そのとき、それと似た感情の動きをともなった自分の過去の出来事も想起して、そのイメージもうごかすようにするとよいでしょう。

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▼ 参考文献 & 音声教材
『NHK ラジオ英会話』(2023年9月号、NHK テキスト), 2023年, NHK 出版
『NHK CD ラジオ英会話』(Audible版, 2023年9月号), 2023年, NHK 出版
栗田昌裕(著)『頭が良くなるコツがわかる本』, 1991年, コスモトゥーワン

▼ 関連教材

(冒頭写真:イングランド, 王立地理学協会(The Royal Geographical Society, London, England), 1999年, 筆者撮影)

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