つよくいったり よわくいったりすることによっても意味がかわります。言葉には真意が潜在します。潜在構造を意識しながら情報処理訓練をすすめます。
NHK ラジオ英会話、今月は、情報や許可・意見などを相手から引き出したり、はげまして感情を操作したりする発言タイプを練習しています。
Lesson 81 発言タイプ:引き出す①「許可」を引き出す
Is it OK to take a bath in this suit?
「Is it OK」とまずいって、to 不定詞で it の内容を展開します。許可をもとめるときの頻用表現です。 いくつかのバリエーションをマスターしておきましょう。
- Can I use your phone charger?
- May I see your boarding pass?
- Would you approve if I wanted to take the day off?
Lesson 82 発言タイプ:引き出す②「意見」を引き出す
What do you think?
相手の意見や感想など、さまざまな内容を相手から引き出す際につかいます。汎用性がたかい文です。
- Would you tell us how you view the situation?
- Hit me with your thoughts.
- Tell it to me straight.
Lesson 83 発言タイプ:引き出す③「アドバイス」を引き出す
Do you have any good ideas?
相手のアイデア・考えをたずねます。アドバイスをもとめます。any を用いることによって「何でもいいのです、教えてください」とひびきます。
- Any advice?
- If you were me, what would you do?
- What do you suggest I do?
Lesson 84 発言タイプ:引き出す④「印象・感想」を引き出す
What do you make of him?
相手に印象をたずねます。make of 〜(~から作る)をつかい、「彼からどんな印象を作り上げていますか?」という疑問文にします。
- How do you like living in Japan?
- How was your first trip to Florida?
- What kind of impression did you get when you ~?
Lesson 86 発言タイプ:引き出す⑤「判断」を引き出す
Am I on the right track?
ただしい道筋の上にあるのか、考え方・やり方の正しさについて判断をもとめます。track は道・軌道です。
- I tried a new hairstyle. What do you think?
- Are we on the same page [on the same wavelength]?
- Are you comfortable with that?
Lesson 87 発言タイプ:引き出す⑥「経験」を引き出す
Have you ever been to a wedding in a foreign country?
相手の経験をたずねます。ever は at any time(いつのことでもいいのですが)と、特定の時点にかぎらない経験をたずねていることを明示しています。
- Have you ever met her?
- Have you met her before?
- Ever been there? ― No. Never been there.
Lesson 88 発言タイプ:引き出す⑦「おすすめ」を引き出す
What do you recommend?
recommend(すすめる)は、手のひらにのせて「これこれ」と、個人的な経験をふまえてすすめる感触の動詞です。
- Do you have any suggestions?
- I’m new to this job. Any useful tips?
- Any ideas come to mind?
Lesson 89 発言タイプ:引き出す⑧「将来の展望」を
What’s your goal?
目標をききます。
- What do you want to be [become]?
- What’s your vision for yourself?
- Who do you want to be like?
Lesson 91 発言タイプ:引き出す⑨ 行動の是非を問う
What do you think of me taking a cooking class?
行動の是非をたずねます。think of ~(~について考える)の目的語に注意してください。me が taking a cooking class の意味上の主語となっており、「私が料理教室に行く」という内容を構成します。
- I’m going to invest in some cryptocurrency. What do you think?
- I’m going to ask for some time off. Do you think it’s all right to do it?
- I’m going to dye my hair pink. What would you say if I did that?
Lesson 92 発言タイプ:引き出す⑩ 相手の都合を確認する
How does that sound?
相手に都合をたずねます。「それはどのように聞こえますか?→どうでしょうか?」とうかがいます。まず、予定・計画をつたえ、そのあとに、おうかがいにながれます。
- I’ll meet you at the station at 9:30. Is that convenient for you?
- We’re planning to have dinner around seven. What do you say? [What do you think?]
- I’ll wait for you in the lobby. (Does that) sound good? [That work? / (Does) that work OK? / Will that do?]
Lesson 93 発言タイプ:引き出す⑪ その場で何が起こっているのかを問う
What’s happening?
周囲の状況を理解できないときや不審に感じたときに発します。
- What’s going on? What’s the matter?
- What’s this (all about)?
- Did I miss something?
Lesson 94 発言タイプ:引き出す⑫ 相手の行動・状況を尋ねる
What are you doing?
相手の行為を理解できなかったり、不審に感じたりしたときに発します。ただし純粋な疑問だけでなく、「一体何をやっているのですか?」というつよい非難までを意味するため、いい方には十分に気をつけます。
- What’s wrong?
- What’s [What has] gotten into you?
- Is something wrong?
Lesson 96 発言タイプ:感情操作① 励ます──頻用フレーズ1
Cheer up!
「元気を出して!」気分が落ち込んでいる相手を励ます言葉には、数多くのバリエーションがあります。この文で up が使われているのは、「上」という方向が、比喩的に「気分のよさ・楽しさ・幸せ」につながっているから。日本語の「ウキウキ」も上方向の表現が気分のよさにつながっています
- Take it easy.
- Come on!
- Don’t be so hard on yourself.
Lesson 97 発言タイプ:感情操作② 励ます──頻用フレーズ2
Hang in there!
「頑張ってください!」逆境にあり希望をうしないそうな相手をあきらめず頑張れと鼓舞してください。クライミングでぶらさがって(hang して)いる人を想像してください。
- Stick with it!
- Stick to your guns! [Stay the course! / Keep at it!]
- Give it all you’ve got! [Give it your best shot!]
Lesson 98 発言タイプ:感情操作③ 励ます──状況に問題はない
I’m sure everything will be OK.
状況は悲観的ではないとはげまします。「すべてがうまくいきます」と、楽観的な見込みをのべ相手を安心させます。はげましのフレーズのなかには状況に言及するものが数おおくあります。
- Tomorrow’s another day.
- It’s not the end of the world.
- This too shall pass.
shall は、つよい束縛(必ず~となる)をあらわす助動詞であり、非常につらい状況もいつかはおわることをあらわしています。
Lesson 99 発言タイプ:感情操作④ 励ます──あなたには資質がある
You can do it.
相手の能力・資質に言及しはげまします。本当の力に気づかせ、立ち直るきっかけをあたえます。潜在をあらわす can をつかって「あなたにはそうした力が隠れています」とのべています。
- You’ve got what it takes.
- You were born [made] for this.
- You’re cut out [perfect] for this.
*
以上のように、相手から情報をひきだしたり、相手をはげましたりするときにもさまざまな言い方ができます。つよくいったり よわくいったりすることによってもいろいろなメッセージを相手につたえることができます。
たとえば「What are you doing?」と、やわらかく普通にいえば、「あなたは何をしているのですか?」という意味になりますが、つよくいえば、「一体 何をやっているんだ」とか「何をバカなことを」とか「すぐにやめろ!」などと、相手を非難したり、相手の行動を否定したりすることができます。あるいは「励ます」にも、実にさまざまな言い方がありますが、言い方によっては相手を傷つけてしまうことがあります。
このように言葉とは、表面的にとらえているだけではつかいこなせず、言葉の背後にある本当の意味をつかむようにしなければなりません。情報のすべてを言葉だけでしめすことはできず、言葉には真意がつねに潜在します。言葉とは、真意をはこぶための手段・シンボルです。
つまり言葉は、情報の表層構造にすぎず、潜在構造がそこにはあるのであって、それもふくめた全体が情報であるといえるでしょう。
言葉の練習は、表層構造の訓練でまずはよいとおもいますが、よりすすんだ訓練では潜在構造まで意識しながらすすめなければならず、それは情報処理訓練といってもよいでしょう。大西泰斗先生らが指導する NHK ラジオ英会話は表面的には簡単にみえますが高度な内容に実際にはなっています。6年目にはいり、上級レベルの訓練がすすんでいます。
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ことばの仕組みと進化 − 特別展「しゃべるヒト」(国立民族学博物館)−
▼ 参考文献 & 音声教材
『NHK ラジオ英会話』(2023年8月号、NHK テキスト)NHK 出版、2023年
『NHK CD ラジオ英会話』(2023年8月号)NHK 出版、2023年
(冒頭写真:イングランド, ロンドン, バービカンホール、ロンドン交響楽団(London Symphony Orchestra, Barbican Hall, London, England), 1999年, 筆者撮影)