限定詞・名詞関連・接続詞(NHK ラジオ英会話, 2023.01)

情報処理

イメージをつかいます。リズムをつかいます。わかりやすい教材を選択します。

NHK ラジオ英会話、今月は、限定詞、可算・不可算名詞、接続詞などにとりくんでいます。日本語に訳すのではなくイメージし連想します。

Lesson 181 all、every のイメージ

Every family has its chef.

all が全体をひっくるめる「全部」というおおらかな単語であるのに対し、every 〜 は「どの~もみんな」と、個々に意識がおよびます。every がつねに単数あつかいなのはそのためです。

Lesson 182 no のイメージ

I have no friends.

no のイメージは「全然ない・ゼロ・漆黒」であり、非常につよい表現です。「I don’t have any friends.」よりも、「いない」をずっとつよくしめせます。

Lesson 183 other のバリエーション

Could you show me another?
Could you show me the other?
Could you show me the others?
Could you show me others?
Some are cheap, and others are expensive.

another,the other,the others,others

another は an に other がついた単語です。a(n) のイメージは、「(ほかにもあり)特定のひとつに決まらない」ですから、another は、「ほかにもある中のひとつ」ということです。「Could you show me another?」は、店にあるいくつかのうち「どれかひとつ」をみせてくださいという意味です。

the other は「全体で2つしかない」場合にもちいます。the のイメージは「ひとつに決まる」ですから、「ほか」がひとつに決まるのはそもそも2つしかありません。

the others は「残り全部」ということです。「the +複数形」はひとつに決まるようなグループ、つまり特定のグループ全体を指さします。the United States of America(アメリカ合衆国)、 the Yamadas(ヤマダさん一家)といった例があります。

限定詞のつかない表現は、何ら具体性のない「~というもの・~一般」です others は、ボンヤリと「別のもの」とのべており、その場にある任意のいくつかということです。この表現は、「ボンヤリとある」を意味する some といいコンビネーションをつくります。

Lesson 184 both、either、neither

Both of them?
You can have both toys.
You can have either toy.
You can have neither toy.

both,either,neither

2者間の選択を表す表現に both、either、neither があります。「Both of them?」の both は2者が同時に視野にはいって「両方」ということです。他方、either は「ひとつひとつに目を向ける」意識であり、「どちら(か)」です。neither は either の否定、「どちらも~ない」となります。

Lesson 186 人々一般を表す

You only live once.

「人は一度しか生きない」ということです。この文の you は、話し相手をあらわす you ではなく、「人々一般」をもっとも広範囲にしめす気軽な表現です。you だからといって話し手をふくまないわけではなく、話し手をふくめた「人々一般」を意味します。

Lesson 187 it の基本

What’s that? — It’s a universal translator.

質問者は「あれは何?」と that で対象物を「指し」ます。そして that で指しているものを受けて、「万能翻訳機ですよ」とこたえます。日本語では、相手の発言を受け一拍置いて「・万能翻訳機ですよ」とこたえます(・は前の表現を受ける一拍です)。日本語では言葉にあらわれない「受ける」意識が英語の it です。it は、「それ」と訳されることがおおい単語ですが、指しているわけではありません。日本語訳にとらわれてはなりません。

Lesson 188 it を説明するリズム

It’s difficult to have a restaurant in this area.

「it で文を始め、その説明を後ろに置く」リズムです。この文で話し手は、心にうかんだ状況を「受け」て、「It’s difficult」とまずいいます。そのままでは何がむずかしいのかわからないため、後ろで、it の内容説明をのべます(説明ルール)。それが to 以下の「この地域でレストランをやっていくのは、ね」の部分です。it の特徴的なリズムをつかいます。

Lesson 189 it を使って強調

It was a Dutch person that invented the telescope.

「強調したい箇所を前に出して目立たせよう」という形です。「A Dutch person invented the telescope.」といえばすむところを、「it was」をつかって、主語の「a Dutch person」を前にひっぱりだします。「オランダ人だったんだよ」とまず強調し、そして that 以下で「オランダ人」を説明します。「it+be動詞」で要素をひっぱりだし、that 以下で展開します。この形は、「it の強調構文」ともよばれますがそのような文法用語は役にたたず、it のイメージ・機能と説明ルールをつかうことが大事です。

Lesson 191 可算名詞・不可算名詞:基礎

We need some olive oil and onions.

「決まった形があるか・具体的かどうか」、1個2個とかぞえられる「感じ」があるかどうかで可算名詞と不可算名詞を区別します。olive oil は液体であり形がなく不可算名詞、onions は可算名詞です。

Lesson 192 思いがけない不可算名詞

I want to change some furniture in the bedroom.

furniture(家具)は不可算名詞です。家具には決まった形がなく、家具は「家庭で生活のために使われる、比較的大きめのものという概念です。some があっても複数形にはなりません。

Lesson 193 可算名詞が不可算になるとき

You need to go to the immigration office in person.

この文の person は不可算あつかいです。ここでは「人」をイメージしません。in person は「本人が直接に」ということであり、person は、「人」ではなく「人が直接という方法」を想起します。方法には決まった形はありません。

Lesson 194 可算・不可算で意味が変わる名詞

I hope there’s enough room in the bedroom.

不可算の room は「部屋」ではなく、「スペース・空間」をあらわします。スペースが区ぎられてかぞえられるのであれば可算名詞の「部屋」です。

Lesson 196 主要接続詞 ①:流れの and

It started to rain, and we both got wet.

and には「流れ」が感じられます。「雨が降り始めた」と「2人ともぬれた」のあいだに因果関係の流れがほのかに感じられます。

Lesson 197 主要接続詞 ②:選択の or

You can pay in cash, or you can use a credit card.

or は選択をあらわす接続詞です。

Lesson 198 主要接続詞 ③:流れを打ち消す but

I like him, but I hate his sense of humor.

but は、先行する文脈と相反する内容をみちびく「流れを打ち消す」接続詞です。

Lesson 199 主要接続詞 ④:because

I didn’t face any long lines because I arrived at the immigration office early.

「理由・原因」をあらわしたいなら、この接続詞をまず習得します。

限定詞のまとめ

()内はイメージです。

  1. a, an((ほかにもあり)特定のひとつに決まらない(the と対照的))
  2. all(全部)
  3. any(何でも、どれでも)
  4. both, either, neither(「2つのモノ」の間の選択をあらわす)
  5. every(どの〜もみんな)
  6. no(全然ない・ゼロ・漆黒)
  7. other(ほか)
  8. others(ボンヤリとしたほかのもの)
  9. some(ボンヤリとある)
  10. the(ひとつに決まる → 共有のイメージ)

たとえば another・the other・the others・others のつかいわけを習得したいとき、Lesson 183 の図(イメージ)を3秒間みます。つぎに目をとじて図をおもいおこします。そして図をみないで白紙に図をかきだします。どこまで正確にかきだせるでしょうか。かきだせるようになるまでこの練習をくりかえします。

図(イメージ)をつかったこのような練習のほうが日本語訳や理屈をおぼえようとするよりも効果があがります。確実に記憶に定着します。つかいわけられるようになります。受験対策としても有用です。日本語訳や理屈でかんがえているといつまでも混同・混乱がつづきます。

なおここで、人間の情報処理の観点からいうと、図をみることはインプット、目をとじておもいうかべることはプロセシング、白紙にかきだすことはアウトプットであり、これは情報処理訓練そのものです。この方法は、both・either・neither(Lesson 184)についてもつかえますし、あるいは英語にかぎらずあらゆる科目・分野でつかえます。重要なことがすぐに記憶でき、とくに、似ていてこんがらがりやすいことでも区別して正確におぼえることができます。

  1. インプット :みる
  2. プロセシング:おもいうかべる
  3. アウトプット:かきだす
「受ける」意識

it は、「それ」と指すのではありません。「受ける」意識をはたらかせます。

前の文脈を受ける it

What’s that? ― It’s a wine bottle opener.(あれは何ですか? ― ワインのコルク抜きです。)
I’m really sorry. It won’t happen again.(本当にすみません。二度としません。)

状況を受ける it

It’s a fine day today.(今日は晴れの日です。)
It’s five o’clock now.(今5時です。)
It’s dark here.(ここは暗いです。)

前の文脈から容易に想像可能な内容を受ける it

Let’s call it a day.(今日はここまでにしましょう。)
You can make it if you try hard.(頑張ればできますよ。)
That’s it!(それだ!)
I got it.(わかりました。)

call it a day の it は「これまでの仕事内容」です。make it の make は「作り上げる」、make と it のコンビで「成し遂げる」、文脈によっては「間に合う」です。That’s it! は、さまざまな意味になりますが、it に、「私たちの求めるもの」を想像すれば「それだ!」となります。

it で表した内容をあとづけで説明する

It takes only 15 minutes from here to your earth.
(ここから地球まで行くのに、わずか15分しかかかりません。)

it は、積極的な意味をもたない「受ける」だけの単語であるため、it であらわした内容をあとづけで説明する形がよくつかわれます(説明ルール)。「15分しかかかりませんよ」とのべたあと、「ここから地球まではね」と説明します。まず it で文をはじめ、あとで説明します。it のとる特徴的なリズムをいかします。

it をつかったフレーズはとても使用頻度がたかいためリズムをいかした練習が効果的です。

わたしは、it は「それ」だとおもっていました。学校でそうおそわりました。また「天候の it」「時間の it」「距離の it」「明るさの it」「温度の it」「季節の it」「日付の it」「曜日の it」をおそわりました。さらに「仮主語の it」ときました。だからダメだったのです。

そうではなく、受ける意識をはたらかせます。ただそれだけのことです。単純、明快、むずかしいことは何もありません。受ける意識で音読すればおのずとリズムがうまれます。おもしろくなります。

学校の英語教師は、簡単なことをむずかしく複雑におしえていましたが、ラジオ英会話ではわかりやすく簡単におしえます。どの科目・分野でも、簡単なことをむずかしく複雑にいう人は、そもそもよくわかっていないのであり、よくわかった人は、わかりやすく簡単に説明します。したがって参考書や教材をえらぶときにもわかりやすいかどうかを基準にするとよいでしょう。

わかりやすいとストレスがなく、すいすい情報がながれ、記憶もすすみます。必要なときに必要な情報を心のなかからすぐにひっぱりだせるようになります。

▼ 関連記事(2022年度 NHK ラジオ英会話)
make, have, put, leave -「基本動詞 ①」(NHK ラジオ英会話, 2022.04)-
take, go, come, be, give, get -「基本動詞 ②」(NHK ラジオ英会話, 2022.05)-
run, look, watch, see, listen, hear, taste, talk, say, tell, think, believe, know, wonder, find -「基本動詞 ③」(NHK ラジオ英会話, 2022.06)-
動詞のまとめ -「基本動詞 ④」(NHK ラジオ英会話, 2022.07)-
about, at, on, in, over, above -「前置詞 ①」(NHK ラジオ英会話, 2022.08)-
among, before, after, along, by, under, beyond, behind, with, without, across -「前置詞 ②」(NHK ラジオ英会話, 2022.09)-
前置詞のまとめ(NHK ラジオ英会話, 2022.10)
形容詞・副詞(NHK ラジオ英会話, 2022.11)
副詞・限定詞(NHK ラジオ英会話, 2022.12)

▼ 関連記事(2019年度 NHK ラジオ英会話)
前置詞をイメージする -「英単語は日本語訳では語れない」(NHK ラジオ英会話, 2019.04)-
言葉とイメージ -「前置詞のイメージの完成」(NHK ラジオ英会話, 2019.05)-
イメージをうごかす -「基本動詞の征服 ①」(NHK ラジオ英会話, 2019.06)-
イメージと文型のシンクロナイズ -「基本動詞の征服 ②」(NHK ラジオ英会話, 2019.07)-
プログラムにしたがって練習する -「基本動詞の征服 ③」(NHK ラジオ英会話, 2019.08)-
類語をおぼえる -「基本動詞の征服 ④」(NHK ラジオ英会話, 2019.09)-
スキットを想像する -「基本動詞の征服 ⑤」(NHK ラジオ英会話, 2019.10)-
印象をつかう -「基本形容詞」(NHK ラジオ英会話, 2019.11)-
単純なイメージで本質をつかむ -「基本副詞・名詞(可算・不可算)」(NHK ラジオ英会話, 2019.12)-
イメージして、言葉でアウトプットする -「限定詞・助動詞・時表現」(NHK ラジオ英会話, 2020.01)-
メッセージをうけとり、メッセージをつたえる -「大きな『単語』:定型表現 ①」(NHK ラジオ英会話, 2020.02)-
心にしみわたるコミュニケーション -「大きな『単語』:定型表現 ②」(NHK ラジオ英会話, 2020.03)-

▼ 関連記事(英語一般)
英語でアウトプット!(英会話関連記事リンク集)

▼ 関連記事(記憶法・学習法)
要約図を想起して書きだす - 湯村幸次郎著『図でわかる中学理科』(1)-
各単元を心のなかにファイルする - 湯村幸次郎著『図でわかる中学理科』(2)-
情報処理とファイルの方法 - 湯村幸次郎著『図でわかる中学理科』(3)-
情報処理のしくみを理解する - 湯村幸次郎著『図でわかる中学理科』-

▼ 参考文献 & 音声教材
『NHK ラジオ英会話』(2023年1月号、NHK テキスト)NHK 出版、2022年
『NHK CD ラジオ英会話』(2023年1月号)NHK 出版、2022年

▼ 関連教材

(冒頭写真:イングランド、オックスフォード、ため息橋(The Bridge of Sighs, Oxford, England)、1999年、筆者撮影)

アーカイブ

TOP
CLOSE