心をはたらかせる -「助動詞の征服」(NHK ラジオ英会話, 2021.10)-

情報処理

助動詞は、心の働きをあらわします。〈プロセシング→アウトプット〉訓練をします。情報の流れが加速します。

NHK ラジオ英会話、今月は、助動詞を練習しています。助動詞の位置も「指定ルール」できまります。

LESSON 121 助動詞学習で最も大切なこと

She may get disappointed.

「指定ルール」により助動詞がこの位置におかれます。

LESSON 122 助動詞 may の推量

He may or may not be ill.

may は「推量(~かもしれない)」をあらわし、おおよそ50%の可能性しかありません。may のイメージは「開かれたドア」であり、「閉ざされていない」程度の可能性をしめします。

LESSON 123 助動詞 may の許可

You may use a dictionary during the test.

may があらわすのは「上から下」への許可です。

LESSON 124 助動詞 must の義務

You must use a pen when you fill out this form.

must のイメージは「高い圧力」です。

LESSON 126 助動詞 must の強い確信

There must be some mistake.

「ちがいない」は、どうしてもそうならざるをえないという結論への「高い圧力」からうまれます。そう考えざるをえないという「高い圧力」の感覚とともに練習します。

LESSON 127 助動詞 will の予測

If you go there today, you’ll feel much better tomorrow.

will のイメージは「見通す」です。トンネルの出口の先の情景がありありと見えているという感触です。

LESSON 128 助動詞 will の意志

I’ll give you a hand.

「見通す」は「意志(~するよ)」もうみます。未来に目をやり、「~するよ」という感触です。

LESSON 129 助動詞 can の「できる」

She can swim like a fish.

can のイメージは「潜在」です。秘めた力を見抜く感触をともないます。

LESSON 131 助動詞 can の許可

Don’t worry, you can use this guitar.

can の「潜在」というイメージは「許可」につながります。「許可」といっても、 may のような「権威あるものが下す許可」ではありません。

LESSON 132 助動詞 can の潜在的性質

It can be noisy here at times.

「潜在」から、「潜在的性質:~しうる・~することがある」がうまれます。

LESSON 133 助動詞 should のアドバイス

You shouldn’t jump to conclusions.

should のイメージは「進むべき道」であり、そこから、「アドバイス」がうまれます。「must のマイルドバージョン」です。

LESSON 134 助動詞 should の確信

Don’t worry, it should arrive any minute.

「進むべき道」は、must の「~にちがいない(確信)」のマイルドバージョン、「~のはず」というつかい方をうみだします。

LESSON 136 助動詞類 have to

I have to hand in this report first thing tomorrow morning.

must があくまで主観的な「しなくちゃだめだよ」であるのに対し、 have to には客観的な必要性が感じられます。

LESSON 137 助動詞類 be going to

Hurry, you’re going to be late for your piano lesson!

be going to の「流れの中」を意識しながら練習します。

LESSON 138 助動詞類 had better、used to

We had better clean up the kitchen before Mom gets back.

had better は切迫感あふれる表現です。

LESSON 139 助動詞は重ねて使えない

I should be able to get there by five.

人間は、2つの心理を同時にもつことができないため、助動詞をかさねてつかうことはできません。

「指定ルール」(指定は前に置く)は助動詞の位置にも作用します。may・must・will・can・should など、 助動詞は「心理を表す」表現であり、動詞句の内容が事実そのものではなく、心理内の話なのだと指定します。指定ルールのこのような語順を習得することがとても大切であり、語順とは意識の順番であり、意識とは心の働きです。心の働きは心理といってもよいでしょう。

したがって心の働きがそのまま語順になり言葉としてあらわせるように練習します。そうではなく、日本語の語順でかんがえ英語にあてはめようとすると混乱し、ストレスが蓄積します。

人間がおこなう情報処理(人間主体の情報処理)の観点からいうと、心の働きとはプロセシング、言葉でいいあらわすことはアウトプットです。プロセシングからアウトプットへスムーズに移行する方法のほうがストレスがなく自然であり、情報がながれます。語順のことなる日本語に英語をあてはめようとしたり、心のはたらきがそもそもなかったりすれば情報はながれず、アウトプットもうまくできないのは当然のことです。言葉とは、言葉になる前に心のなかに生じたこと(プロセシング)を、言葉にしてあらわしたものです(アウトプット)。

このような、心をはたらかせてアウトプットするというやり方は、文法書を徹底的によみこんで練習問題にとりくむといったやり方ではなく、どこでも気楽に簡単にできる練習法です。

英語とはかぎらず何語でも、勉強しはじめて半年〜1年で日常会話が普通にできるようになる人と10年たっても日常会話もできない人がいるのは練習法がちがうからです。従来の「日本人式」勉強法で教科書などをよみながら苦労してくるしんでいるとなかなか進歩しません。〈プロセシング→アウトプット〉訓練をしたほうがよいでしょう。

なお今月の番組で、もとになるイメージが助動詞にもあり、may は「開かれたドア」、must は「高い圧力」、will は「見通す」、can は「潜在」、should は「進むべき道」というそれぞれのイメージがわかりました。イメージもおもいうかべれば心がはたらき、アウトプットへおのずとすすめます。情報の流れが加速します。

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▼ 参考文献
『NHK ラジオ英会話』(2021年10月号テキスト)NHK 出版、2021年

▼ CD
NHK CD ラジオ英会話 2021年10月号

▼ 関連教材

(冒頭写真:イングランド、ロンドン上空、1999年、筆者撮影)

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