KJ法実践記 − 情報処理と問題解決 −

情報処理

KJ法の実践を通し、人間主体の情報処理と問題解決の本質をさぐりました。KJ法は、類推の合理化であり、類比法の技術化。類推は認識の根幹にかかわり、問題解決では行動力がものをいいます。

このたび、アマゾン Kindle 出版から、田野倉達弘著『KJ法実践記 − 情報処理と問題解決 −』を出版しました。

以下に、まえがきと目次を掲載します。

まえがき

 情報には、数値化できる定量情報と数値化できない定性情報があり、今日、定性情報をいかに統合し出力するか、おおきな課題になっています。そこで、KJ法がつかえます。それは、民族地理学者・川喜田二郎がかんがえだした発想と問題解決の方法であり、創始者のイニシャルをとって「KJ法」と命名されました。
 わたしは、1987年から、KJ法本部・川喜田研究所のKJ法研修コースを順次受講し、第16回移動大学(丹後移動大学)にも参加、KJ法を習得しました。そして1994年に、主任研究員・研修講師として川喜田研究所にまねかれ、KJ法の研究開発、KJ法研修コースの開催、KJ法を活用した地域活性化事業などにとりくみました。
 本書は、川喜田研究所在職中にわたしがおこなった仕事を中心にしたKJ法実践の記録であり、それによってあきらかになった情報処理と問題解決の本質についてのべたものです。ただし本書では、日本国内での活動のみをとりあげ、海外(ネパール)での活動については、別に、田野倉達弘著『国際協力とKJ法 -ネパール・ヒマラヤでの実践-』(Kindle版)にまとめました。またKJ法の学問的・論理的側面については、田野倉達弘著『野外科学と実験科学 -仮説法の展開-』(Kindle版)に記述しました。
 本書に収録した報告や論考は、まえがき・追記・あとがきをのぞき、いずれもかつて執筆したものです。理解をたすけるためにすべての項に解説をつけ、それらがかかれた背景や経緯などをしるしました。解説と追記は2024年1月にかいたものです。
 第1章では、わたしが大学院生のときに参加した丹後移動大学についてのべます。第2章から第6章までは、川喜田研究所在職中にわたしがおこなった仕事について紹介します。第2章では、KJ法研修コースなどを通して、KJ法について概説します。第3章では、KJ法研修受講者からえられたデータをもとに、あらたな時代の潮流についてのべます。第4章では、「住民の声」による地域診断システムについて概説し、長岡市と十日町市の事例を紹介します。第5章では、コンピューターを利用したKJ法のすすめかたについて説明します。第6章では、「住民の声」による地域診断システムの発展的事例として、鶴岡市と矢島町を紹介し、社会-文化-環境系の重要性についてのべます。
 全体としては、KJ法は類比法の技術化であり、問題解決では行動力がものをいうことを主張しています。また仕事をすすめるうえで主体-環境系モデルが有用であることを強調しています。
 本書におさめた報告や論考を執筆するにあたり、KJ法創始者の川喜田二郎先生をはじめ、KJ友の会・KJ法学会の会員の皆様にはたいへんお世話になりました。また丹後(網野町)・長岡市・十日町市・鶴岡市・矢島町など、事業地の住民・スタッフの皆様には有益な情報と御意見をいただき、啓発的な議論をさせていただきました。ここに銘記して、これらの方々に、こころより御礼もうしあげます。

目次

第1章 移動大学
 1. わたしと移動大学 - 問題提起 –
 2. スタッフとしてかかわって
第2章 KJ法概論
 1. KJ法研修コース
 (1)KJ法入門
 (2)取材学
 (3)6ラウンド累積KJ法
 2. メモの技法 - 点メモ花火 –
 3. KJ法の歴史
 4. 『積乱雲』編集後記
第3章 時代の潮流を洞察する
 1. はじめに
 2. インデックス図解の文章化
 (1)合理的な社会
 (2)人間らしさをうしなう
 (3)人類と地球の危機
 (4)情報化時代の到来
 (5)人間のルネッサンス
 (6)ポトムアップの潮流
 (7)共生と循環のシステム化
 (8)まとめ
 3. 衆目評価の結果と結論
第4章 「住民の声」による地域診断システム
 1. パルス討論→KJ法→衆目評価法
 (1)パルス討論
 (2)KJ法
 (3)衆目評価法
 2. 新潟県長岡市・十日町市で実施
 (1)時代の潮流を洞察する
 (2)「住民の声」による地域診断システムの実施
 (3)地域活性化のために
 (4)地域活性化のためのモデル
第5章 情報リテラシーの展開
 1. はじめに
 2. パソコン上でのKJ法のすすめかた
 (1)ラベルづくり
 (2)グループ編成
 (3)図解化
 (4)叙述化
 3. KJ法研修受講者の声
 4. 情報リテラシーの展開
 (1)情報の世界のフロンティア
 (2)三次元情報処理システム
 (3)情報の創造的循環
第6章 社会と環境 - 地域の活性化 –
 1. 山形県鶴岡市
 (1)「住民の声」による地域診断
 (2)域活性化・地域連携への提言
 2. 秋田県矢島町
 (1)秋田県矢島町にてまちづくり事業がはじまる
 (2)KJ法図解と提言
 (3)鳥海山移動大学
 (4)地域社会とその環境
あとがき

田野倉達弘著『KJ法実践記 − 情報処理と問題解決 −』(アマゾン Kindle版)

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