スパイスは金銀に匹敵する貴重品でした。世界の食文化をおおきく発展させました。健康と活力のためにバランスが大事です。
「刺激スパイス」展が咲くやこの花館で開催されています(注1)。スパイスは、カレーなど、インド・ネパール料理に欠かせません。今回の展示会では、スパイスとなる植物(種子など)をみて、香りもたのしみながら、スパイスについて理解をふかめます。
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ウコン(ターメリック、ショウガ科)は、熱帯アジア原産であり、成熟した根茎をほりとり、水あらいして、ゆでて(またはむして)から乾燥させたものを利用します。カレー粉の主要原料のひとつであり、またピラフ・ターメリックライス・たくあんのほか、さまざまな米・魚・肉・野菜料理につかわれます。
クローブ(丁子、フトモモ科)は、インドネシア・モルッカ諸島原産であり、蕾(つぼみ)を乾燥させてつくり、肉料理・リキュール・クッキーなどにつかわれます。日本でも、正倉院の御物のなかにおさめられているほど歴史があります。形が釘ににていることから丁子(丁字)ともよばれます。
カルダモン(ショウズク、ショウガ科)は、インド原産であり、果実を利用します。肉・魚料理、リキュール、パイ、パン、ケーキなどにつかわれます。紀元前千年以上前から生薬やスパイスとしてつかわれ、紀元前4・5世紀頃には、ビンロウジの葉につつんで食後にかむと唾液の分泌がよくなることから消化吸収の助けになるとつたえられていました。
ショウガ(ジンジャー、ショウガ科)は、熱帯アジア原産であり、根茎を利用します。さわやかな辛さを演出し、生姜焼き・ジンジャーブレッドなど、さまざまな料理につかわれます。インドでは、紀元前から薬用として栽培されており、調味料としては、紀元前1世紀頃のインドやアラビアの料理書に記載されています。
ニンニク(ガーリック、ユリ科)は、中央アジア原産であり、根茎を利用します。中国料理や西洋料理をはじめ あらゆる料理に、コクとアクセントをくわえます。古代エジプトのピラミッド建設で、労力をささえるスタミナ源となったのはニンニクとタマネギでした。いまでは、さまざまな効能が科学的にあきらかになっています。
フェンネル(ウイキョウ、セリ科)は、地中海沿岸原産であり、種子はスパイス、茎・葉はハーブとして利用します。古代エジプト・古代ローマ時代から栽培されており、果実は、菓子・パイ・スープ・魚料理などにつかわれます。
ディル(イノンド、セリ科)は、南ヨーロッパ・西アジア原産であり、葉を利用します。メソポタミア地方で発掘された紀元前3000年頃のスメル粘土刻版にスメル人が薬用にしていた香料植物約200種がきざまれており、そのなかにディルがありました。
アニス(セリ科)は、地中海東部沿岸地帯原産であり、種子(果実)を利用します。種子は三日月形で、2個むかいあった卵形をしており、種皮は淡黄色の縦筋があり、フェンネルににた芳香と甘味をもちます。アニス・ビスコッティ(クッキー)、アニゼット酒の風味づけなどにつかわれます。
シナモン(肉桂、桂皮、クスノキ科)は、ベトナム原産という説があり、樹皮を利用します。アップルパイ・シナモントースト・シナモンティーなど、日本でもよくつかわれます。正倉院に生薬として保蔵されており、すくなくとも聖武天皇の時代(724〜749年)までに、コショウ・クローブ・香木などとともに渡来していたとおもわれます。
カシア(クスノキ科)は、ベトナム原産という説があり、樹皮を利用します。シナモンの近縁種であり、しばしば、シナモンの代用品となったり、シナモンと称されたりして販売されます。シナモン同様、外樹皮をのこしてあらくくだいた製品と、外樹皮をとりのぞいてほそくまるめて乾燥させたスティック状の製品があります。料理や菓子の風味づけ、チャイ(ミルクティー)、クッキー、五香粉(中華ミックススパイス)などにつかわれます。
ナツメグ(肉豆く、肉豆く花、ニクズク科)は、インドネシア・モルッカ諸島原産であり、種子の仁を利用します。ハンバーグ・肉だんご・ロールキャベツ・グラタンなどの料理につかわれ、ハンバーグの風味づけにとくに欠かせません。古代インド・バラモン教の経典『ヴェーダ』には、頭痛・熱病・口臭消し・整調などの医薬品としてつかっていたとしるされています。
サフラン(番紅花、クロッカス、アヤメ科)は、南ヨーロッパ・西アジア原産であり、パエリア・ブイヤベース・スープ・サフランライスなどの料理につかわれます。料理の色づけにつかわれてきたスパイスであり、みた目にもあざやかな黄金色は料理を演出します。秋にさくクロッカスの仲間の花から赤いめしべをとって乾燥させてつくり、手間がかかることからたいへん高価なスパイスとしてしられます。
スターアニス(八角、大茴香、チャイニーズアニス、マツブサ科)は、中国原産であり、豚肉・鴨肉料理・北京ダック・杏仁豆腐など、中国料理の味つけ・香りづけによくつかわれ、あまい香りがこのまれます。漢方では、胃弱・かぜ薬として、また歯磨き・石鹸などの香料としてもつかわれます。ヨーロッパへは、イギリスの船乗りによって16世紀末につたわり、当時は高級品だったアニスの代用品としてつかわれました。
サンショウ(はじかみ、ジャパニーズペッパー、ミカン科)は、東アジア原産であり、果実の外皮・果実・葉を利用します。完熟した果実の外皮を乾燥させて粉末にした「粉山椒」や、「木の芽」とよばれる若葉・新芽や、「実山椒」「青山椒」とよばれる青くやわらかい若い実も利用します。しびれるような刺激的な辛味とさわやかな香りをもつスパイスであり、さまざまな和食に風味づけとしてつかわれ、とくに、鰻の蒲焼きの薬味として「粉山椒」が欠かせません。『魏志倭人伝』には、3世紀頃にはサンショウが自生していたことが記載されており、10世紀には、薬や薬味として葉が利用されていたといわれます。
カショウ(中国山椒、セシュアンペッパー、ミカン科)は、中国原産であり、果皮を利用します。サンショウの近縁種です。さわやかな香りと舌がしびれるような刺激的な辛味(サンショウよりもつよい辛味)が特徴であり、麻婆豆腐など、四川料理に欠かせません。
コリアンダー(コエンドロ、こずいし、パクチー、セリ科)は、地中海沿岸原産であり、種子・葉・根を利用します。さわやかな香りをもち、肉・卵・豆料理、カステラ、クッキーなど、幅ひろくつかわれます。カレーの原料としても欠かせません。数千年前の古代エジプトの時代から薬用や調味料としてつかわれてきた最古のスパイスのひとつです。コリアンダーとパクチーはおなじ植物であり、日本では、スパイスを「コリアンダー」、葉を生のまま野菜として使用する場合には「パクチー」とよぶことがおおいです。
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