距離感をイメージする -「時表現を極める ①」(NHK ラジオ英会話, 2021.11)-

情報処理

指定ルールにもとづいて練習します。空間的なひろがりのなかでイメージします。次元をあげれば学習が加速します。

今月の NHK ラジオ英会話は「時表現」を練習しています。「指定ルール」をつかいます。

LESSON 141 過去形 ①:時表現の定位置

It started to rain when we were about to sing our last song.

「指定ルール:指定は前に置く」によって「時」は「前置き」です。「遠いあのとき」をおもいうかべながら「It started to rain」といいます。

LESSON 142 過去形 ②:過去形のイメージ展開1──丁寧

Could you please sign here in my notebook?

生々しい要望から距離をとる感覚で過去形をつかいます。

LESSON 143 過去形 ③:過去形のイメージ展開2──控えめ

I might go to karaoke with her.

過去形の持つ距離感「遠く離れた」により助動詞の過去形は「控えめ」を表現します。現在形のもつ意味から「退き・引いた」感触がこのつかいかたをうみだします。

LESSON 144 現在形 ①:広く・一般的な内容

I’m a digital solutions manager.

現在形のイメージは「身の回り」です。「身の回り」は、「広く・一般的に成り立つ」 をうみだします。

LESSON 146 現在形 ②:現在の思考は現在形で

I think you’re doing a fantastic job.

「身の回り」の感覚は、「現在の思考・感情・知識は現在形で」につながります。

LESSON 147 現在形 ③:宣言・実演

I apologize for not keeping my promise.

話し手の周りで出来事が形づくられることから現在形が選択されます。

LESSON 148 現在形 ④:未来の出来事を前提とするなら現在形

I’ll let you know as soon as I get more information.

そうした状況がおこっていることを「前提」としており、おこっているのが前提なら、現在おこっていることをしめす現在形の使用は自然なことです。

LESSON 149 進行形 ①:進行形の基礎

I’m living in Japan on a work visa.

「比較的短期間続く行為の描写」です。

LESSON 151 進行形 ②:注意すべき進行形

He was sneezing non-stop.

進行形は「比較的短期間続く行為の描写」であり、ここでは、瞬間的な動作が一定期間くりかえされ、つづきます。

LESSON 152 進行形 ③:進行形は外から眺める

Look, I’m apologizing.

進行形は、現在形とはことなり、現在おこっていることを客観的に描写します。

LESSON 153 進行形 ④:進行形は躍動的な行為

I was having a meeting at that time.

会議をするという行為がおこなわれているため進行形となっています。進行形にできるか否かは行為と感じられるかどうか。

LESSON 154 現在完了形 ①:間近に起こった出来事(完了用法)

Look. It’s stopped raining.

この形のイメージは「(今に)迫ってくる」です。過去に属する事柄を「今・現在」にひきつけてかたります。

LESSON 156 現在完了形 ②:過去から現在に至る視線(継続用法)

My spare room has been empty for three weeks.

視線が、過去から現在にむかって移動し、 empty の状態が現在までつづいています。

LESSON 157 現在完了形 ③:過去を今の経験としてとらえる(経験用法)

I’ve traveled all over the world.

過去の出来事を現在にひきつけてかたります。「(今に)迫ってくる」イメージです。

LESSON 158 現在完了形 ④:過去の出来事がもたらす現在(結果用法)

I’ve turned off the water, so it’s OK now.

「水を止めました」という過去の出来事を描写するだけではなく、「水を止めた、その結果、現在水が止まっている」までを意味にふくみます。「(今に)迫ってくる」イメージです。

LESSON 159 現在完了進行形(ずっと~している)

She’s been reading comic books all afternoon.

「(今に)迫ってくる」と、生き生きとした行為の描写である「進行形」とのハイブリッドです。「行為が今に至るまで続く=ずっと~している」となります。

「指定ルール」(指定は前に置く)にもとづいて練習をすすめます。

「遠いあのとき」をおもいうかべながら過去形をつかいます。過去形は、「遠く離れた」という距離感をもつ表現であり、距離感のイメージから「丁寧」ないいかたや「控えめ」ないいかたもうまれます。それに対して現在形は、「身の回り」をイメージし、「現在の思考・感情・知識」、「話し手の周りの出来事」、「前提」などは現在形でいいます。また進行形は「比較的短期間続く行為の描写」であり、現在形とはことなります。現在完了形は、「今に迫ってくる」イメージであり、過去に属する事柄を「今・現在」にひきつけてかたります。

このように、イメージをつかえば、過去形・現在形・現在進行形・現在完了形がこんなに簡単に理解できます。これだけのことです。形式にとらわれずにイメージすることが大事です。

時は、〈過去→現在→未来〉というように1次元でながれるものですが、これをイメージするときには空間をつかい、3次元空間のなかで出来事や対象をおもいうかべることになります。

遠くをイメージしたときには過去形をつかい、はるかかなたは遠い過去に相当し、身の回りをイメージしたときは現在形をつかい、身の回りは現在に相当し、比較的短期間つづく行為をイメージし描写するときには進行形をつかい、遠くから手元にせまってくるイメージでは現在完了形をつかいます。

イメージすることはとても簡単な練習ですが、実は、たいへん奥ぶかい内容をふくんでおり、空間をイメージすることは言語学習にかぎらずあらゆる学習につかえる普遍的な方法です。空間記憶法もその一例です。ラジオ英会話はその方法を実践的にしめしてくれます。

時(過去→現在→未来)や言葉をつかってかんがえるのは1次元ですがイメージ空間は3次元のひろがりであり、1次元から3次元に次元をあげるだけでとくに努力をしなくても情報処理が一気に加速します。そのうえで努力もすればさらに加速するでしょう。

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▼ 参考文献
『NHK ラジオ英会話』(2021年11月号テキスト)NHK 出版、2021年

▼ 関連教材

(冒頭写真:イングランド、ロンドン、コヴェント・ガーデン、ロイヤル・オペラ・ハウス(Royal Opera House)、1999年、筆者撮影)

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