複数の題目語をしめします。対照が明瞭になります。メッセージが的確につたわります。
今回は、題目と対照の効果について以下の例文をつかって検証します。
例文110
25日は各地で気温が上がり30度以上の真夏日となったところもありましたが、26日は低気圧と前線の影響で九州から東北で大雨になるおそれがあります。(NHK NEWS WEB, 2022.4.25)例文111
北陸は朝から、関東や東海は昼頃から雨が降りそうです。(tenki.jp, 2022.4.30)例文112
研究者としては彼女はすばらしいですが、先生としてはそれほどよくありません。(NHKラジオ英会話テキスト, 2022年1月号)
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例文110
25日は各地で気温が上がり30度以上の真夏日となったところもありましたが、26日は低気圧と前線の影響で九州から東北で大雨になるおそれがあります。
テンの原則「逆順」にしたがってテンをうちます。
- 25日は、各地で気温が上がり30度以上の真夏日となったところもありましたが、26日は、低気圧と前線の影響で九州から東北で大雨になるおそれがあります。
「25日は」は25日についてのべるならばということであり、「26日は」は26日についてのべるならばということであり、ともに題目語であり、「○○は」とすることによって何についてのべるのか、題目(話題)を提示することができます。
この文では、「25日は、・・・」、「26日は、・・・」とすることによって「25日」と「26日」を対比し、両者の相違をしめしています。題目から対照が派生しています。結果として、大雨にそなえるようにと注意をうながす効果がうまれています。
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例文111
北陸は朝から、関東や東海は昼頃から雨が降りそうです。
「北陸」についていうならば「朝から」、「関東や東海」についていうならば「昼頃から」「雨が降りそうです」ということであり、「北陸は」と「関東や東海は」は題目語であり、「○○は」とすれば題目を提示することができます。
この文では、「北陸」と「関東や東海」というように場所を対比させて両者の相違をしめし、結果として、西から天気が次第にくずれることをつたえています。題目から派生する対照の効果をうまくつかっています。
なおつぎのように「○○では」としてもよいです。
- 北陸では朝から、関東や東海では昼頃から雨が降りそうです。
しかし「○○で」とすると対照の効果がうまれません。
- 北陸で朝から、関東や東海で昼頃から雨が降りそうです。
「は」ぬけでも文はなりたちますがメッセージはつたわりにくくなります。メッセージを的確につたえるためには「○○は」のつかい方に習熟しなければなりません。
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例文112
研究者としては彼女はすばらしいですが、先生としてはそれほどよくありません。
「研究者としては・・・」、「先生としては・・・」のように、「○○は」をつかうことによって対照の効果が生じます。しかしもし、「○○は」をつかわないと対照がうまくしめせません。
- 研究者として彼女はすばらしいですが、先生としてそれほどよくありません。
英語でも対照をしめせます。
- As a researcher, she’s brilliant, but as a teacher, she’s not so good.
「As a researcher」と「as a teacher」を対比し、本来は文末にあるはずの語句を文頭におくことによって対照を明瞭にしめすことができます。英語でも対照をしめすことができますが日本語とはやり方はことなります。日本語には英文法はあてはまりません。
なお例文112は、3つの「○○は」があり、題目語は「彼女は」であり、「彼女」についてのべるならば、「研究者としては・・・、先生としては・・・」ということであり、「研究者としては」と「先生としては」は、「彼女」にふくまれる ちいさな題目語、あるいは題目をしめす係り助詞「は」の派生として、対照の係り助詞「は」がつかわれているとみることができます。
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- 太郎が大阪へ、次郞が札幌へいきました。
という文において、「太郎」と「次郞」を対照したければつぎのようにします。
- 太郎は大阪へ、次郞は札幌へいきました。
「太郎」についていうならば「大阪へ」、「次郞」についていうならば「札幌へ」ということを明瞭にしめせます。
題目語が3つあっても同様です。
(カレー屋にて)
- 三郎はポーク、四郎はビーフ、花子はチキンを注文しました。
「○○は」とすることによって、「三郎」、「四郎」、「花子」それぞれの違いを明瞭にしめせます。
つぎのような会話もよくききます。
(食堂にいって)
- 春子「わたしは親子丼にする」
- 五郎「おれはカツ丼だ」
「わたし」と「おれ」が題目であり、対照をなしています。
題目をきめるということは話題の範囲をきめることであり(対象を限定することであり)、ほかとの違いがおのずと暗示され、複数の題目語は対照をなします。「○○は、・・・(が)、○○は、・・・」が基本の形です。
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三上章 『象は鼻が長い - 日本文法入門 -』をよむ
日本語法を理解する - 三上章『続・現代語法序説 - 主語廃止論 -』-
▼ 参考文献
三上章著『象は鼻が長い - 日本文法入門 -』くろしお出版、1960年
三上章著『続・現代語法序説 - 主語廃止論 -』くろしお出版、1972年
本多勝一著『日本語の作文技術(新版)』朝日新聞出版、2015年
本多勝一著『実戦・日本語の作文技術(新版)』朝日新聞出版、2019年
川喜田二郎著『発想法(改版)』(中公新書)中央公論新社、2017年
梅棹忠夫著『知的財産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年
栗田昌裕著『「速く・わかりやすく」書く技術』(ベスト新書)ベストセラーズ、2005年