3D「恐竜博 2023」(国立科学博物館)

地球

恐竜学の最前線にいざなわれます。鳥類だけが生きのこりました。人類の進化と絶滅を推理するためにも参考になります。

特別展「恐竜博 2023」が国立科学博物館で開催されています(注)。恐竜の進化と絶滅に関する最新の研究成果が展示・発表されています。

ステレオ写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやりかたはこちらです。

ズール(後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)(ホロタイプ標本(正基準標本))
ズール(後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)
(ホロタイプ標本(正基準標本))
ズール(左、後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)vsゴルゴサウルス(右、後期白亜紀、カナダ・アルパータ州)
ズール(左、後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)
vs
ゴルゴサウルス(右、後期白亜紀、カナダ・アルパータ州)
ティラノサウルス「タイソン」(左)(後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)とティラノサウルス「スコッティ」(右)(後期白亜紀、カナダ・サスカチュワン州)
ティラノサウルス「タイソン」(左)(後期白亜紀、アメリカ・モンタナ州)
ティラノサウルス「スコッティ」(右)(後期白亜紀、カナダ・サスカチュワン州)
カルノタウルス(後期白亜紀、アルゼンチン・チュブ州)
カルノタウルス(後期白亜紀、アルゼンチン・チュブ州)
カワセミ(鳥類)
カワセミ(鳥類)とその巣穴
(現世、国立科学博物館付属自然教育園)
恐竜類の系統図
恐竜類の系統図

会場には、恐竜類進化の全体像をしめす系統図が展示されており、本展で紹介されている恐竜がハイライトされてそこにしめされています。これをみれば一目瞭然です。

恐竜類は、竜盤類と鳥盤類にまず分化し、竜盤類は、獣脚類と竜脚形類に分化し、獣脚類は、アヴェロストラ類とエオドロマエウスに分化し、アヴェロストラ類は、コエルロサウルス類とアベリサウルス科に分化し、コエルロサウルス類は、マニラプトル類とコンプソグナトゥス科とティラノサウルス科とメガラプトル類とに分化し、マニラプトル類は、鳥類とオヴィラプトロサウルス類に分化し、そして鳥類だけが現世まで進化し生きのこり、ほかの恐竜類は絶滅しました。

鳥類が、恐竜類に分類され、恐竜の進化の過程で鳥類が誕生したことに注目してください。鳥類の代表として、ドードーとカワセミが本展では展示されています。

近年、「羽毛恐竜」や初期の鳥類の化石が発見され、どこまでが恐竜でどこからが鳥類か、その境界線がひけないほど連続した進化があったことがわかっています。恐竜は完全に絶滅したのではなく、鳥類として現在も進化をつづけています。

それでは鳥類以外の恐竜はなぜ絶滅したのでしょうか? 現在のところ、カリブ海への巨大隕石の衝突説、後期白亜紀の末期における恐竜の多様性低下説が有力です。巨大隕石の衝突により、気温の低下や森林の減少など、環境の急激な変化がおこり、鳥類以外の恐竜は絶滅したのではないか。また後期白亜紀の恐竜の種数の変遷をみると、後期白亜紀末期には恐竜の種数はしだいに減少しており、つまり恐竜の多様性は低下しており、その背景には、世界的な寒冷化と、植物食恐竜の多様性の低下があったとされます。すなわち恐竜類は、繁栄のピークをとおりすぎて、後期白亜紀末期には衰退期にはいっていたのではないか。

恐竜類の衰退がそもそもはじまっており、そこに、隕石の衝突による環境変化がくわわって鳥類以外の恐竜類は絶滅したのではないかという仮説がたてられます。

それではどうして鳥類だけは生きのこったのでしょうか? 鳥類は体がちいさく、必要とする食糧がすくなくてすんだために絶滅をまぬかれたのではないかとかんがえられます。また鳥類をよく観察すると、歯ではなくクチバシをもったものだけが生きのこっていることがわかります。クチバシがあれば、かたい実やタネをわってたべることができ、また発生に時間がかかる歯がないために、卵の期間を短縮できたことなどが有利にはたらいたのではないでしょうか。

現世の鳥類のなかには、カワセミのように地中に巣をつくるものもいます。もし、恐竜類の大量絶滅前後にも地中に巣をつくる鳥類がいたとしたら、隕石衝突などの影響をうけずに生きのこることができたのではないかという仮説もたてられます。

もしそうだとしたならば、白亜紀後期の地層のなかに、巣穴の化石が発見されるはずであるという推論(予想)もできます。実際に発見されるかどうか、今後に注目します。

古生物学者は、大量絶滅は、急激な温暖化あるいは寒冷化のときにおこるといいます。急激に環境が変化してしまうと、あらたな環境に生物が適応できなくなる、環境の変化に進化がおいつかないということです。恐竜の進化と絶滅は、人類の進化と絶滅を推理するためにも参考になります。

▼ 関連記事
特別展「恐竜博 2019」(国立科学博物館)をみる
恐竜の謎をさぐる(国立科学博物館・地球館地下1階)
絶滅したはずの恐竜が現代の空をとんでいる -『のび太の新恐竜』(Newton 2020.4号)-
事実と想像を区別する -「恐竜はどのように鳥になったか?」(ナショナルジオグラフィック 2018.5号)-
恐竜は鳥に進化した - 大英自然史博物館展(1)-
恐竜から鳥への進化を想像する - 国立科学博物館「恐竜博 2016」(4)-
想像や推理の方法を知る - 国立科学博物館「恐竜博 2016」(まとめ&リンク)-
3D画像 をつかって奥行きの情報もインプットする -『恐竜3D図鑑』-
3D「化石ハンター ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」(国立科学博物館)

大進化がおこる -『地球のあゆみ えほん 46億年のれきし』-
生物多様性と種を保全する - 大英自然史博物館(7)-

もう一方の進化 -「鳥の知能」(ナショナルジオグラフィック 2018.2号)-
鳥たちを立体視する - 栗田昌裕『身近な鳥の3D写真』-
鳥を撮影してみよう -「北海道 鳥を待つ森」(ナショナルジオグラフィック 2018.12号)-
渡り鳥をまもる -「鳥たちのはるかな旅」(ナショナルジオグラフィック 2018.3号)-
鳥の多様性と進化 -「鳥たちの地球」(ナショナルジオグラフィック 2018.1号)-

3D 国立科学博物館 − 自然史と科学 −(記事リンク集)

▼ 注
特別展「恐竜博2023」
会場:国立科学博物館・地球館
会期:2023年3月14日〜6月18日
特設サイト
※ 写真撮影が許可されています。本項の写真は、2023年5月24日に筆者が会場で撮影しました。

▼ 巡回展(大阪会場)
会場:大阪市立自然史博物館・ネイチャーホール
会期:2023年7月7日~9月24日

▼ 参考文献
真鍋真(監修)『特別展 恐竜博 2023』(図録), 2023年, NHK・NHKプロポーション・朝日新聞社(発行)

▼ さらに まなぶために
真鍋真(著)『鳥になった恐竜の図鑑』, 2021年, 学研プラス
真鍋真(著)『きみも恐竜博士だ! 真鍋先生の恐竜教室』, 2022年, 岩波書店
真鍋真(著)『恐竜学』, 2020年, 学研プラス

アーカイブ

TOP