平行法と交差法があります。目からのインプット能力がたかまります。情報処理がすすみます。
(2017年2月24日発行)
(2022年8月6日更新)
ステレオグラムあるいはステレオ写真をつかった(裸眼)立体視には平行法(パラレル法)と交差法(クロス法)の2つの方法があります。下記を練習すれば立体視が誰でもできるようになります。3Dワールドをぜひおたのしみください。
平行法(1)
ステレオグラムをつかった立体視・平行法(パラレル法)では、左目では左の図をみて、右目では右の図をみます。すると元来は2つの画像が1つの画像に合成されて立体的にみえます。図1がステレオグラムとよばれる立体視をするための図のひとつであり、平行法をまず実験します。
立体視をやりやすくするために、図1の左右2つの図の中間に、図1がえがかれた平面に対して垂直になるように紙(あるいは下敷き)をおきます(図2)。
顔を紙にちかづけ(目を図2にちかづけ)、左目では左の図を、右目では右の図をみます。紙をおくことによって、左目では右の図がみえなくなり、右目では左の図がみえなくなります(図3)。
すると最初は2つの画像がみえますが、しばらく、ぼんやりととおくをみるようにしてじっと我慢してみます。すると2つの画像が融合して1つの画像になる瞬間があるとおもいます。その状態をしばらく保持するようにします。最初はむずかしいとおもいますがくりかえし練習します。
ちいさな内側の円がうきあがってみえたら実験は成功です。つまりつぎのことが証明されたことになります。目はセンサーであり、脳はプロセッサーであり、目は2個あるので、ことなる2系統の情報が脳におくられ、脳で処理されて1つの 3D 画像が成立します。ステレオグラムによる立体視にトライすることによって人間の視覚系の情報処理について実体験し理解をふかめることができます。
なお集中して訓練を急にやりすぎると頭がいたくなることがあるかもしれません。そのような感じがしたときには一旦休憩するか、あらためて明日やってみましょう。
交差法(1)
ステレオグラムをつかった立体視・交差法(クロス法)では、左目では右の図をみて、右目では左の図をみるようにします。すると元来は2つの画像が1つの画像に合成されて立体的にみえるようになります。
交差法による立体視をやりやすくするためにつぎのようにします。
- A4の1/4の大きさの紙を2枚用意します(紙の大きさは目安です)。
- それらの紙をまるめて2本の円筒をつくります。
- これらを、クロスした双眼鏡のようにつかって図4をみます。
- まず左目を閉じて、右目だけで円筒をとおして図1をみます。そして図4の左の図の方向に円筒をかたむけて、右目では左の図のみがみえて、右の図はみえないように調整します。
- そのままの状態で、つぎに右目を閉じて、左目だけで図4をみます。右の図の方向に円筒をかたむけて、左目では右の図のみがみえて、左の図はみえないように調整します。
- 図4にちかづいたりはなれたりして調整します。
- その状態で両目をひらくと、円筒をとおして、右目では左の図のみがみえ、左目では右の図のみがみえます(図5)。
しばらくみつめていると、2つの画像が融合して1つの画像になる瞬間があるとおもいます。その状態をしばらく保持するようにします。最初はむずかしいかもしれませんがくりかえし練習してみます。ちいさな内側の円がうきあがってみえたら実験は成功です。なお集中して急にやりすぎると頭がいたくなることがあるかもしれません。そのような感じがしたときには一旦休憩するか、あらためて明日トライしてみましょう。
平行法(2)
平行法で立体視をするにはつぎのようにします。
- 両目の焦点が、図6(画面)のむこう側であうように、とおくをみるようにします。図6に焦点をあわせるのではなく、ぼんやりととおくをながめる感覚です。
- 具体的に、図6(画面)の背後(約1〜2m先)に目標物にさだめ、それに焦点をあわせてもよいです。
- すると図6のなかにある黒点が、左目の視野に2つ、右目の視野に2つ、合計4つぼんやりとみえるはずです(図7)。
- 図6(画面)に対して目(頭)を前後させながらしばらくみつめていると、ある位置で、内側の2つの黒点がかさなってみえる(4つの黒点が3つにみえる)瞬間があります(図8)。このとき図6の四角形も3つみえます。
- この状態をしばらく保持するようにします。
黒点が3つのまま、視線はうごかさずに図6の真ん中の図をじっとみつめます。黒点がうきあがってみえ、真ん中の図が四角錐にみえたら(ピラミッドを上からみているようにみえたら)実験は成功です(その左右のピラミッドはぼやっとみえている状態になります)。
交差法(2)
交差法で立体視をするにはつぎのようにします。
- 図9をみながら、人差し指を、図9と自分の目(顔)の中間点あたりにもってきます。
- 人差し指をみつめます(人差し指に焦点をあわせます)(図10)。
- すると人差し指の背後に、左目の視野に2つ、右目の視野に2つ、合計4つの黒点がぼんやりとみえます(図11)。
- 指先をみつめたまま、すこしずつ指を前後にうごかします。
- するとぼんやりと背後にみえている4つの黒点のうち、内側の2点がかさなる瞬間があります。つまり黒点が3つになる瞬間があります(図12)。このとき図9の四角形も3つになります。
- この状態をしばらく保持するようにします。
黒点が3つのまま、視線はうごかさずに真ん中の図をじっとみつめます。黒点がうきあがってみえ、真ん中の図が四角錐にみえたら(ピラミッドを上からみているようにみえたら)実験は成功です。
平行法(3)
平行法をつかって立体視にトライしてみてください。左右の図のあいだに紙をおくやり方でも補助点(黒点)をつかうやり方でもどちらでもよいです。補助点をつかう場合はそれらが3つになった瞬間を保持します。立体的にみえたと感じてもすぐにやめないでしばらくじっとみつめていると、さらにくっきりと立体的にみえてきます。ちいさい正方形がうきあがって、台のように立体的にみえたら実験成功です。
図14についても平行法でトライしてみてください。紙をつかう方法でもよいです。補助点(黒点)はありませんが、たとえば階段の2段目の手前の角の1点に注目して、そこを補助点のようにつかってもよいです。
階段が立体的にみえたら成功です。
交差法(3)
図15のステレオグラムをみて交差法をつかって立体視にトライしてみてください。紙の円筒をつかうやり方でも補助点(黒点)をつかうやり方でもどちらでもよいです。
立体的にみえたと感じてもすぐにはやめないでしばらくじっとみつめているとさらにくっきりとみえてきます。台のように立体的にみえたら実験は成功です。
図16についても交差法でトライしてみてください。
階段が立体的にみえたら実験は成功です。
平行法(4)
ステレオグラムをつかって立体視をする方法は、ステレオ写真(3D写真)を立体視する方法としてもそのままつかえます。写真 1a は平行法で立体視ができます。ステレオグラムのときに2つの図の間に紙をおいて立体視をしたように、2枚の写真の間に紙(あるいは下敷き)をおいてみるとよいです。あるいは花の中央の黒点を補助点(目印)としてつかってもよいです。
3D(3次元)でみえたでしょうか。はじめは時間がかかるかもしれませんがしばらくするとみえてきます。
交差法(4)
ステレオ写真(3D写真)は交差法をつかっても立体視できます。ステレオグラムの交差法がそのままつかえます。ステレオグラムのときのように紙の円筒をつかってもよいですし、花の中央部を補助点(目印)としてつかってもよいです。
3D(3次元)でみえたでしょうか。はじめは時間がかかるかもしれませんがしばらくするとみえてきます。ステレオ写真がみられるようになると視野がおおきくなり、世界がひろがります。写真の花はラン(Orchid: Aranda, Chao Praya Beauty)、シンガポール植物園(Singapore Botanic Garden)で撮影しました。
平行法(5)
ステレオ写真(3D写真)による立体視は動物でもできます。写真 2a は平行法で立体視できます。ステレオグラムのときに2つの図の間に紙をおいて立体視をしたように、2枚の写真の間に紙(あるいは下敷き)をおいてみるとよいです。目印(補助点)としてカメをつかってもよいです。
3D(3次元)でみえたでしょうか。はじめは時間がかかるかもしれませんがしばらくするとみえてきます。
交差法(5)
交差法でも動物が立体視できます。ステレオグラムのときのように紙の円筒をつかってもよいですし、目印(補助点)としてカメをつかってもよいです。
3D(3次元)でみえたでしょうか。はじめは時間がかかるかもしれませんがしばらくするとみえてきます。写真はアオウミガメ(Honu: Hawaiian Green Sea Turtle)、ハワイ・シーライフ・パーク(Sea Life Park Hawaii)で撮影しました。
平行法(6)
ステレオ写真をつかえば風景写真も立体視できます。写真 3a は平行法で立体視できます。ステレオグラムのときに2つの図の間に紙をおいて立体視をしたように、2枚の写真の間に紙(あるいは下敷き)をおいてみるとよいです。目印(補助点)として中央奥の山頂をつかってもよいです。
山並みが幾重にもかさなっている様子が立体的にみえたでしょうか。左右2枚の写真が融合して立体的にみえたと感じてもすぐにはやめないでしばらくみつめているとさらにくっきりみえてきます。普通の平面(2次元)の写真ではみえないことがステレオ写真(3D写真)ではみることができます。
交差法(6)
写真 3b は交差法で立体視ができます。ステレオグラムのときのように紙の円筒をつかってもよいですし、目印(補助点)として中央奥の山頂をつかってもよいです。
山並みが幾重にもかさなっている様子が立体的にみえたでしょうか。左右2枚の写真が融合して立体的にみえたと感じても、すぐにはやめないでしばらくみつめていると、さらにくっきりとみえてきます。
写真はヒマラヤ山脈(Himalayan Range)、中央奥にそびえる山は世界最高峰エベレスト(Everest, 標高 8848 m)です。タイ国際航空機(カトマンドゥ-バンコク便)から撮影しました。立体視をすると、ヒマラヤ山脈はたった一本の山脈ではなく、東西にのびる何本もの山並みが平行にはしってできていることがわかります。このような地形あるいは構造はどのようにしてできたのか、興味がつきません。
平行法(7)
写真 4a は平行法で立体視できます。
奥行き・背景もわかり、その場の全体が立体的にとらえられます。
交差法(7)
写真 4b は交差法で立体視できます。
立体視により、わたしたちが3次元空間で生活していることをあらためて自覚できます。写真は、ネパール・バクタプル、トウマディー広場(Toumadhi Square, Bhaktapur, Nepal)で撮影しました。
*
平行法と交差法のどちらでもやりやすい方からとりくんでください。なれることからはじめて、一度できるようになると、あとはいつでも簡単にできるようになります。
わたしたちには左右2つの目があり、それぞれの目に光がはいってきて、それらは、電気信号に変換されて神経をとおって脳におくられ、情報が処理されて(両眼の視差も検出されて)立体的(3D)にみえます(図17)。
2系統の情報が融合して立体的にみえるということは人間の意識のなかで情報処理がおこっていることをしめしており、立体視は、情報のインプットとプロセシングがおこっていることをわたしたちに自覚させ、人間が情報処理をする存在であると認識させてくれます。このように人間をとらえなおすことは高度情報化時代においてとても重要です。
立体視をすれば、平面(2次元)の図や写真ではみえなかったものがみえます。大観力・観察力がつよまり、目からのインプット能力がたかます。奥行きや背景もわかり、あらゆる物事が立体的に高次元でとらえられるようになります。
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▼ 参考文献
藤田一郎著『「見る」とはどういうことか 脳と心の関係をさぐる』(Dojin選書)化学同人、2007年
藤田一郎著『脳がつくる3D世界 立体視のなぞとしくみ』(Dojin選書)化学同人、2015年
栗田昌裕著『脳活性3Dトレーニング・ドリル 見ているだけで頭が良くなる』(Gakken Mook)学研プラス、2005年
ジョージ3著・鴨下恵子著・今野清志監修『ミラクル3Dアイ』日本文芸社、2017年
徳永貴久監修『横とじだから見やすい! どんどん目が良くなるマジカル・アイ 癒やしの風景』 宝島社、2020年
『感覚―驚異のしくみ』(ニュートン別冊)ニュートンプレス、2016年
岩堀修明著『図解・感覚器の進化 原始動物からヒトへ 水中から陸上へ』(ブルーバックス)講談社、2011年
栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本』(王様文庫)三笠書房、2001年
栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本 -アメリカ旅行編-』(王様文庫)、三笠書房、2008年
栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本【動物編】』(王様文庫)三笠書房、2002年
栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本【植物編】』(王様文庫)三笠書房、2005年
栗田昌裕著『身近な鳥の3D写真 見るだけで目がみるみる良くなる!』三笠書房、2018年