英語と日本語では原則がことなります。英語は、主語のあとに述語が展開します。日本語は、補足語を述部が統括します。
NHKテレビ「大西泰斗の英会話☆定番レシピ」の2022年度の放送がはじまりました。番組のキャッチフレーズは「話すための7つの文法レシピ」であり、今月のテーマは「英語と日本語の違いを知る」です。
英文づくりに不可欠な「レシピ」はたったの7つしかありません。この7つを習得すればどんな英文でもつくれます。5つの基本文型と2つの修飾方向です。
基本文型
他動型:主+動+目
自動型:主+動
説明型:主+動+説明語句
授与型:主+動+目+目
目的語説明型:主+動+目+説明語句修飾方向
指定ルール:指定は前に置く
説明ルール:説明は後ろに置く
これらは英語の語順の原則といってもよく、これらをつかって練習すれば英語がおのずと身につきます。英文法は、たくさんのことをおぼえなければならず大変だとおもっていましたが簡単でした。これらにより学習は一気に加速し驚異的な効果があらわれます。文法学習の時間が短縮でき音声訓練や単語の記憶に時間をさけます。
英語に対して、日本語の語順の原則はつぎのとおりです。
- 述部(動詞・形容詞・形容動詞)を最後に。
- 形容する詞句を先に(修飾辞が被修飾辞の前にくる)。
- ながい修飾語ほど先に。
- 句を先に。
たとえばつぎの例文をみてください。
英 語 I gave Mary a present.
日本語 プレゼントをメアリーに私はあげた。
このように、英語と日本語では語順がことなります。このことに気づかず、日本語の語順で英文をとらえたり(これまでのいわゆる英文和訳・英文読解)、英文法を日本語に無理にあてはめたりしていると語順の原則は身につかず、アウトプット能力がのびません。
つぎの例もみてみましょう。
英 語 The teacher gave the boy the book.
日本語 先生は少年に書物をあげた。
構造化します。
英語は、「主語」と「述語」のブロックにおおきくわかれ、文頭に、主語「The teacher」をおき、そのあとで文が展開し、それぞれの語句の機能・意味が文のなかの位置によってきまります。
それに対して日本語は、すべての修飾成分が述部「あげた」によって統括される述部中心の言語であり、述部以外はすべて、その「補足語」として機能します。「先生は」も補足語のひとつにすぎず、文頭に配置するという原則はなく、したがって日本語には “主語” は存在しません。それが証拠に、述部の前であれば「先生は」をどこにでも配置できます。
- 先生は少年に書物をあげた。
- 先生は書物を少年にあげた。
- 少年に先生は書物をあげた。
- 書物を先生は少年にあげた。
- 少年に書物を先生はあげた。
- 書物を少年に先生はあげた。
いずれの文も成立します。ただし修飾語のながさ(字数)がことなる場合は「ながい修飾語ほど先に」の原則がはたらきます。
- 地域の歴史をくわしく解説した書物をひっこしてきた少年に先生はあげた。
かつて学校で、「主語『○○は』を文頭に書きなさい」と指導した教員がいましたがそれはまちがいでした。
- 先生は地域の歴史をくわしく解説した書物をひっこしてきた少年にあげた。
たいへんわかりにくく誤解が生じるため、この場合は、「逆順のテン」の原則によりテンがいります。
- 先生は、地域の歴史をくわしく解説した書物をひっこしてきた少年にあげた。
語順とテンの原則がはたらくことに気がつかねばならず、主語を文頭に配置するという原則はなく、日本語にはそもそも主語はありません。
このように英語と日本語を対比してみると英語のみならず日本語もよくわかります。英語でも日本語でも原則がわかれば見通しがよくなり、アウトプットが容易になり、コミュニケーションがすすみます。
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▼ 参考文献
『大西泰斗の英会話☆定番レシピ 2022年4月号』NHK出版、2022年
『<新版>日本語の作文技術』(朝日文庫、Kindle版)朝日新聞出版、2015年
(冒頭写真:成田国際空港、2013年、筆者撮影)