関係詞も、説明ルールでつかいこなす(NHK 英会話☆定番レシピ, 2022.12)

情報処理

根本に原則があります。説明は後ろにおきます。wh語は選びとるイメージ、that は導くイメージです。

NHK Eテレ「英会話☆定番レシピ」2022年12月号が関係詞節修飾についてわかりやすく解説しています(注)。関係詞も、「話すための7つの文法レシピ」(英語の7つの原則)のひとつ「説明ルール(説明は後ろに置く)」で自由自在につかいこなせます。

MENU 129 関係代名詞節による修飾 ① 基本は組み合わせ修飾

Oh, this is the actor my father loves.

「the actor」(名詞)を、後続する節「my father loves」が説明しています。「説明ルール」がつくる形です。

MENU 130 関係代名詞節による修飾 ② 前置詞の目的語に空所

This is the key I was looking for.

まず、「This is the key」といいきり、「the key」を説明する意識で「I was looking for」とつづけます。

MENU 131 関係代名詞節による修飾 ③ 関係代名詞 who

I married a girl who I met in high school.

「a girl」(先行詞)を、「who I met □ in high school」で説明します。who は、空所(□)が人であることを指定します。

MENU 132 関係代名詞節による修飾 ④ 関係代名詞 which

This is the pen which I borrowed from Ken.

人以外の先行詞(この場合は「the pen」)のときには which をつかいます。

MENU 133 関係代名詞節による修飾 ⑤ 関係代名詞 that

By the way, is this the book that you were talking about?

that のイメージは「導く」です。「the book」を、その説明「you were talking about」に導く意識がはたらいています。that は「導く」だけですから、先行詞が人でも人以外でもつかえます。

MENU 134 関係代名詞節による修飾 ⑥ 主語位置の空所

That’s the man who stole my bag!

「the man」を、「who □ stole my bag」が説明します。空所(□)が主語の位置にあることに注意してください。

MENU 135 関係代名詞節による修飾 ⑦ 空所のセンスを磨け!

Is that the man that Cindy likes?

「the man」を、「that Cindy likes □?」で説明します。空所(□)の位置に注意してください。

MENU 136 関係代名詞節による修飾 ⑧ 関係代名詞 whose

Well, I have a friend whose father is a lawyer.

whose は、「誰の、誰のモノ」を指定する wh語です。

MENU 137 関係代名詞節による修飾 ⑨ 統合力と that のすすめ

He is a person that you can count on.

初心者には that の使用をおすすめします。先行詞が人・人以外のどちらでもつかえます。

MENU 138 関係副詞説による修飾 ① 関係副詞 where

Urawa is the place where I was born.

先行詞(この場合は「the place」)をのべ、その場所で、何がおこるのか、何がおこったのかと説明する意識をはたらかせます。

MENU 139 関係副詞説による修飾 ② 関係副詞 when,why

I remember the time when we first met.

先行詞(この場合は「the time」)をのべ、そのとき、何がおこるのか、おこったのかを意識します。

MENU 140 追加情報の「カンマつき関係詞」

My friend, who speaks English fluently, will show you around.

カンマ(発音上は かるい休止)をおき、関係詞(関係代名詞・関係副詞)で文をつづけます。「ところでそれは・・・、ちなみに・・・」と追加情報をつけたす形です。

MENU 141 追加情報の which

I stayed at the Hotel New Onishi, which my wife recommended to me.

先行詞(the Hotel New Onishi)は人以外ですから「, which」をつかいます。「, which」は、名詞以外のさまざまな要素にも情報を追加できます。

MENU 142 説明はすべて同じ意識で ①

I have to get up at five tomorrow morning.

「I have to get up」を「at five tomorrow morning」で説明しています。関係詞節修飾もこの形とおなじで「説明ルール」の形です。関係詞節修飾、付帯状況の with、〜ing 形、to 不定詞など、従来の文法書にはむずかしいことがのっていますが、すべて「説明ルール」の形です。すべての英文を「説明ルール」のおなじ意識でアウトプットします。

MENU 143 説明はすべて同じ意識で ②

Look at the woman in the dark glasses.

「the woman」を、「in the dark glasses」で説明しています。説明は後ろにならべます。説明の意識でアウトプットします。

MENU 144 -thing / -one / -body + 説明

I’m looking for somebody better.

something、anyone、anybody など、意味のうすい名詞は、説明するためのフレーズが後ろに頻繁におかれます。

以上のように、関係詞節修飾も「説明ルール」にしたがっており、説明はうしろにおきます。先行詞をまずいいきり、それを説明する意識で修飾節をつづけます。

以下の例文は、いずれも説明ルールの形の文です。太字の部分をアンダーラインの部分が説明しています。

  • I ran really fast.(動詞句−様態副詞)
  • I met her at a café in Ginza.(文内容−場所(時))
  • We call him Jimmy.(目的語説明型)
  • I think he’s a great teacher.(リポート文)
  • I know a girl who wants to become an astronaut.(関係代名詞節修飾)
「英文法ガイダンス」(英会話☆定番レシピ テキスト)

何かをのべても、情報がたりないと感じたら、それをおぎないたいという気持ちが誰にでも生じるとおもいます。たりないその情報をうしろでおぎなうのが説明ルールであり、このルールは、大切なことは先にのべ、くわしい説明はあとにまわすという意識をあらわしていて、関係詞節による修飾も例外ではありません。説明ルールの形の文はすべておなじ意識でアウトプットすることが大事です。

また who をはじめ wh語には、選びとるつよい意識がはたらきます。たとえば疑問文をかんがえてみると、Who?、 which?、Where? は「誰?」「どれ?」「どこ?」というように、特定の人や物・場所を選択(ピックアップ)させます。これとおなじ意識が、wh修飾(関係詞節修飾)でつかわれる wh語にもかよいます。

The woman who lives next door is an English teacher.

『一億人の英文法』(p.417)

「The woman who …」では、いろいろいる女性のなかから、どういう「the woman」なのか、その女性を選択する(ピックアップする、ピンポイントでつまみあげる)意識がはたらきます。そしてその女性について、「この人は隣りに住んでんだけど」と説明をくわえます(説明ルール)。 つまみあげて、それを説明する。wh語が、ターゲットと修飾文とをつよくむすびつけていることがわかります。wh疑問文でつかわれても、関係代名詞としてつかわれても、 who のはたらきは かわりません。このような選びとる意識をはたらかせながらアウトプット訓練をします。

また that のイメージは「導く」です。

This is the girl that Jim loves.

『ハートで感じる英語塾』(p.139)

「その女の子はね」、どういう女の子かというと、「ジムが好きな・・・」というように説明を導きます。「the girl」と「Jim loves」がむすびつきます(つながります)。

以下(A, B, D)のようにもいえます。

  1. This is the girl whom Jim loves.
  2. This is the girl who Jim loves.
  3. This is the girl that Jim loves.
  4. This is the girl Jim loves.
『ハートで感じる英語塾』(p.139)

A の whom は、文法的にはもっとも「正しい」形ですがフォーマルな文章にかぎられ、口語では今はつかわれません。B の who は、はっきりと人を指定します。C の that は、who・which よりも口語でこのまれます。人と人以外などと区別する必要が that にはないためつかいやすいです。D は、とくに口語で、もっとも頻度がたかく、いちばん簡単で楽です。

who・which は、人・物を指定し、がっちりと修飾関係をつくりますが、that は、ゆるやかに導くだけであり別物です。選びとる wh語と、導く(つなげる)だけの that ということです。that には、人・物の指定がないため、どちらにも共用できる便利さがあり、初心者は that をまずつかってみるのがよいです。

なおつぎの例文でも that のイメージが確認できます。

  1. That is a window.
  2. That he is hiding something is plain to see.
  3. I think that he is the best captain we’ve ever had.
  4. I came to the conclusion that it was pointless discussing anything with her.
  5. The woman that lives next door is an English teacher.
『一億人の英文法』(p.198)

Aは、「あれはね」と相手を窓に導きます。この感触をつかんでください。Bは、「彼が何かをかくしている」という出来事に聞き手の注意を導きます。Cは、「わたしがおもう」内容に相手を導きます。Dは、conclusion を、「どういった結論かというとね」とその内容に導きます。Eは、the woman の説明「となりにすんでいる」に導きます。いっけん多彩な that ですが、どれもが「導く」がうみだす自然なつかいかたです。

これで、説明ルール、wh語 のイメージ、that のイメージがよくわかりました。関係詞節修飾で wh語 と that がどうしてつかわれるのかもわかりました。こんなに簡単なことだったのか!

「英会話☆定番レシピ」と「ラジオ英会話」のテキストには「英文法ガイダンス」がでており、英文法の本質を単純明快に解説しています。こんなにすくないページで文法の本質をかたりつくすとは。その合理性・体系性・見通しのよさにおどろかされます。短時間で理解でき、ストレスがまったくなく、すっきり、はればれした気持ちになれます。かつて、ぶあつい文法書をよみながら四苦八苦したのはいったい何だったのか。わかりにくい文法用語や文法事項はもう必要ありません。

わたしは、大西泰斗先生らの講座・テキストで、いっけん複雑にみえる英語にも単純な原則が根本にあることをおしえられました。原則は法則といってもよく、いったんわかってしまえば、あとはそれをつかっていくことができます。つぎの段階に容易にすすめます。

原則をつよく意識すれば情報のながれがすぐによくなります。〈インプット→プロセシング→アウトプット〉がすすみます。意識とは心といいかえてもよく、心とは情報処理のしくみです。この方法は、従来の暗記だけにたよるやり方とはまったくことなり、主体的・発展的に人間の能力をのばし、あらゆる分野に応用できます。

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▼ 注
日本放送協会編『大西泰斗の英会話☆定番レシピ 2022年12月号』NHK出版、2022年

▼ 参考文献
大西泰斗・ポール=マクベイ著『一億人の英文法』(東進ブックス)、ナガセ、2011年
大西泰斗・ポール=マクベイ著『ハートで感じる英語塾 英語の5原則編』NHK出版、2008年

(冒頭写真:アメリカ合衆国、ハワイ州オワフ島、ワイキキ・ビーチ(Waikiki Beach)、2015年、筆者撮影)

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