「地球を感じる」(ナショナルジオグラフィック 2021.12号)

地球

地球は感じる場です。感覚とは、情報をインプットすることです。インプットができれば、プロセシングとアウトプットがすすみます。

『ナショナルジオグラフィック』(2021年12月号)が、「地球を感じる」と題して、模様・音・色・香り・スピードをとりあげています(注)。

米国ヒューストン動物園のマサイキリン。長い首の模様は思い思いに縫い合わせたパッチワークのようだ。

クモは巣に伝わる振動を脚先で感じる。(中略)獲物や交尾相手、脅威などの存在を知るという。

この鳥(キガオミツスイ)が種として生き残れるかは、年長の雄が若い雄に求愛の歌を伝えられるかどうかにかかっている。

地震活動を記録する際に邪魔もの扱いされてきたクジラの声だが、地殻構造を画像化するのに活用できると期待されている。

高温の溶岩は黄白色の光を放ち、やがて冷えてオレンジ色から赤色に、最後には漆黒へと変わる。

100年以上前、ハワイの山腹でひっそりと姿を消した花。永遠に失われたその香りが科学者たちの手でよみがえった。

2007年、16年、21年のスイスのローヌ氷河。並べて比較すると、この短い間に大量の氷河が解けたことがわかる。

模様は、さまざまな動物たちにみられます。何らかの目的があると解釈できるものもありますが、おもいのままに形と色をえらび奔放さをくわえたものもあり、まさに天然アートです。

音は、生存に必要な情報をはこび、動物たちにとってなくてはならない伝達手段です。かつては人間も音を大事にしていました。なお今回の記事は、よむだけでなく、スマートフォンのカメラでコードをよみとると実際の音がきけます。

山が発する色は、みるというようりも感じるものです。色の変化は活動の転換をしめし、一旦おさまったとおもってもふたたび息をふきかえします。地球の力を感じます。

香りといえば植物です。科学者は、香りをうみだす分子を特定し、その DNA を分析します。香りは魔法です。しかし残念ながら、インターネットでは香りはつたえられません。植物園に是非いってください。

地球温暖化により氷河が後退していることは一目瞭然です。2000年以降、世界の氷河からとけだした水は5.3兆トン以上にのぼり、海水面が1.5センチちかく上昇しました。パタゴニア氷河の後退スピードも今が一番はやいといいます。

「感じる」とは、目・耳・鼻・舌・皮膚などの感覚器官をつかって外界から内面へ情報をインプットすることです。誰もが、感覚器官をもっており、小学生の低学年ぐらいまではあらゆる感覚器官をつかって生活していました。観察の時間もありました。しかし試験勉強・受験勉強がはじまるとさまざまな感覚器官をつかうことをわすれてしまいます。現代人は、言葉のインプットに極端にかたよりすぎ、感覚が退化してしまいました。

今日、情報化時代にはいり、あらためて感覚がみなおされます。感覚をとらえなおし、感覚を自覚することに光があたります。感覚をとりもどすということはインプット能力をたかめることになり、インプット能力がたかまれば、プロセシングとアウトプットもすすみます。

『ナショナルジオグラフィック』は、地球を感じ、インプットを自覚するためにとても役だちます。

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▼ 注:参考文献
『ナショナル ジオグラフィック日本版』(2021年12月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2021年

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