感動をつたえる -「中井精也の絶景!てつたび」(NHK BSP)-

情報処理

見る、感動、表現の一連のながれが作品になります。ぐーっと寄ります。強調します。

鉄道写真家の中井精也さんが、NHK BSP「中井精也の絶景!てつたび 京都 新緑あざやか 古都の鉄路」のなかの鉄道写真講座で、自分の思いが伝わる写真について解説していました(注)。

「いい写真とはどんな写真ですか?」ときかれたとき、「撮り手の意図が明確な写真」と答えるようにしています。こういう風景にであったとき、どこを美しいと思ったのか、どこに感動したのか、もっといえば、この風景のどこを伝えたいのかというのを明確に意識してですね、それを、目立つように撮る。そういうふうに心がけているんですね。

〈写真「南阿蘇鉄道」(2011年8月撮影)〉この写真をとおして僕が伝えたかったこと。それは、風景の美しさでも、鉄道のかっこよさでもなく、夏の色彩だったんですね。その夏の色彩を強調するために、日中の明るい時間であるにもかかわらず、低速シャッターで流し撮りをして、撮影したんですね。

一つの風景に対峙した時、その風景全体を、なんとなく撮ろうとするのではなく、自分が何に感動したのかを、一つ一つの要素を見いだして、それに、ぐーっと寄っていってほしいんですね。そうやって自分が感動したものを強調することによって、自分のねらいが、自分の思いが伝わる作品にすることができると思っています。

みごとな表現者がいます。中井精也さんの解説は、「写真」を文章に、「撮る」を書くにおきかえてもなりたちます。分野はちがっても表現の本質はおなじです。

人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすと、表現するとはアウトプットするということです。アウトプットのまえには、インプットとプロセシングがいります。インプットとは、対象や風景を見ること、プロセシングとは感動することであり、見る、感動、表現の一連のながれが作品になります。この過程で、みずからの意図(メッセージ)をはっきりさせることが大切です。

▼ 注
NHK BSP「中井精也の絶景!てつたび 京都 新緑あざやか 古都の鉄路」(初回放送:2023年7月17日)

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