3D 国立科学博物館「自然をみる技」 – 望遠鏡による視覚の拡張 –

地球

望遠鏡をつかえばとおくがみえます。視覚が拡張します。インプット能力がたかまります。

国立科学博物館の日本館1階・南翼は「自然をみる技」展示室であり(注1)、その第1コーナーのテーマは「天を知る - 天球儀・天文 -」です。

ステレオ写真はいずれも平行法で立体視ができます。
立体視のやり方はこちらです。

展示室入口
展示室入口
トロートン天体望遠鏡(トロートン・アンド・システム社製、口径20cm、重要文化財)
トロートン天体望遠鏡
(トロートン・アンド・システム社製、口径20cm、重要文化財)
遠眼鏡(望遠鏡)
遠眼鏡(望遠鏡)
遠眼鏡分解見本
遠眼鏡分解見本
銅製天球儀『渾天新図』(渋川春海作、1673(寛文13)年ごろ)
銅製天球儀『渾天新図』
(渋川春海作、1673(寛文13)年ごろ)
紙張子製地球儀(渋川春海作、1695(元禄8)年、重要文化財(レプリカ))
紙張子製地球儀
(渋川春海作、1695(元禄8)年、重要文化財(レプリカ))
紙張子天球儀(渋川春海作、1697(元禄10)年、重要文化財(レプリカ))
紙張子天球儀
(渋川春海作、1697(元禄10)年、重要文化財(レプリカ))
紙張子製天球儀(1690(元禄3)年)
紙張子製天球儀
(1690(元禄3)年)
黒漆塗天球儀(18世紀後半ごろ)
黒漆塗天球儀
(18世紀後半ごろ)
紙張子製天球儀(江戸時代後期(19世紀)ごろ
紙張子製天球儀
(江戸時代後期(19世紀)ごろ)
渾天儀(江戸時代後期(19世紀)ごろ)
渾天儀
(江戸時代後期(19世紀)ごろ)

「トロートン天体望遠鏡」は、イギリスの科学機器・光学機器会社であるトロートン・アンド・システム社で製作された本格的な天体望遠鏡であり、1880(明治13)年、明治政府によって設立された内務省地理局観象台に輸入・導入され、のちに、天体観測と暦の編纂が文部省の所管にうつったことにともない東京天文台(現国立天文台)にうつされ、天体観測と天文学教育に活用されました。

「遠眼鏡(望遠鏡)」は、1608年に発明され、その5年後に日本にもはいってきて徳川家康に献上されました。当時の日本では望遠鏡を「遠眼鏡」といい、とおくを拡大してみることができる眼鏡としておもしろがられましたが、軍事品としてつかえることから江戸時代初期には一般の製作・販売は禁止されました。しかし江戸時代中期以降は、一般の製作者もあらわれ、幕府天文方で天体観測に使用され、幕末になると、天体観測を趣味とする人々もあらわれました。明治維新後は、近代的な望遠鏡が輸入され、測地や航海に役立つ天文学のために重宝されました。

「遠眼鏡分解見本」は、遠眼鏡の筒を分解してしめしています。江戸時代に製作された遠眼鏡のほとんどは「一閑張(いっかんばり)」とよばれる紙張子製であり、一閑張とは、紙をはりかさねて糊づけし、そのうえに漆をぬってかたく保護したものです。筒は多重で、伸縮して焦点をあわせ、いちばん先の第一筒には対物レンズ1枚が、最後の筒には正立レンズ1枚とさらにちいさな筒がうめこまれ、そこに2枚の接眼レンズがあります。

「銅製天球儀『渾天新図』」(渋川春海作、1673(寛文13)年ごろ)は、旧宮崎延岡藩に伝来した天球儀であり、旧熊本藩主細川家に伝来し重要文化財に指定されている天球儀の姉妹品のひとつです。天球儀とは、天球に投影された星座・赤道・黄道などを球体の表面に記入し天の南北両極を軸に回転できるようにしたものであり、天体の位置をしるためにつかいます。

「紙張子製地球儀」(渋川春海作、1695(元禄8)年)は、1695(元禄8)年に製作された現存する地球儀としては日本製最古のものです。イエズス会の中国宣教師マテオ=リッチが1602年に北京で刊行した大型の世界地図「坤輿万国全図(こんよばんこくぜんず)」にもとづいており、日本列島もしっかりえがかれています。

「紙張子天球儀」(渋川春海作、1697(元禄10)年)は、江戸時代初期の天文学者・渋川春海が独自に観測・研究した成果が反映された天球儀であり、中国伝来の星座のみしかしるされていない「銅製天球儀」とはことなり、日本の天文学の進歩をしるための貴重な資料です。

「紙張子製天球儀」(1690(元禄3)年)は、津藤堂家の分家、名張藩二万石を領した藤堂家につたわったやや小型の天球儀であり、渋をほどこした天球表面に中国星座が黒・赤の点でしるされています。1684(貞享元)年に渋川春海が製作した星図にもとづいてつくられたとかんがえられます。

「黒漆塗天球儀」(18世紀後半ごろ)は、旧宮崎延岡藩主内藤家に伝来した天球儀であり、紙張子で黒漆をぬってあり、真鍮製の地平環・子午環でささえられています。星は4色の円形であらわされ、あかるさによって大小にえがきわけられ、星座星名は金で記入されています。

「紙張子製天球儀」(江戸時代後期(19世紀)ごろ)は、谷津家に伝来した天球儀であり、赤経・赤緯の線や西洋流の星座がえがかれていることから江戸時代末期の作とかんがえられます。

「渾天儀」(江戸時代後期(19世紀)ごろ)は、江戸時代後期の説明・教育用の渾天儀であり、渾天儀とは、観測者の地平座標をしめす子午環・地平環や、天球の位置をしめす赤道環・黄道環など、いくつかの環からなる天文機器であり、もともとは天体の位置を観測するための機器です。

人間は古来、みずからの目で周囲をみてきましたが、望遠鏡を発明・開発したことにより とおくのものもみえるようになり、天体をみて大地をみて世界認識をいちじるしくすすめ、天球儀と地球儀にその成果を結実させました。

望遠鏡は、本来はみえなかったものをみえるようにし、わたしたちの視覚をいちじるしく拡張します。視覚とは、外界の情報を目から内面にインプットすることであり、望遠鏡をつかえば、インプットする情報を格段にふやすことができます。

わたしも、望遠鏡(双眼鏡・単眼鏡)の恩恵にあずかっており、旅行やフィールドワークでは双眼鏡(注2)が欠かせません。肉眼で風景をみて、ここぞというところは双眼鏡でみて、そして現場にいってたしかめます。ネパール・ヒマラヤのような広大なエリアではとくに重要です。

また博物館や美術館では単眼鏡(注3)が活躍します。要所要所で単眼鏡をつかうとこまかいところまでよくわかり、視覚体験が倍増し、記憶にもよくのこります。

双眼鏡や単眼鏡をつかえば誰でも簡単にすぐに視覚を拡張することができ、インプットする情報をふやすことができます。インプット能力を手軽にたかめることができます。双眼鏡や単眼鏡をつかわない手はありません。

そもそも人間は、望遠鏡にかぎらず、顕微鏡・温度計・気圧計・湿度計・騒音計・振動計・電波望遠鏡・電子顕微鏡など、さまざまな観察・観測機器を発明し開発し、感覚を拡張してきました。感覚の拡張とともに認識がふかまり知識がふえ文明が発達しました。

望遠鏡と測地・天文の歴史をみてこのような観点から科学・技術をとらえなおせば、みずからの感覚を拡張し、インプットする能力をのばすきっかけがえられるとおもいます。

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3D 国立科学博物館(記事リンク集)

▼ 注1
国立科学博物館
日本館1階(南翼)「自然をみる技」
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▼ 注2
Vixen 双眼鏡 ニューアペックスシリーズ 8×24
わたしが長年つかっている双眼鏡です。小型軽量で携帯性にすぐれ、とてもよくみえます。

▼ 注3
Vixen 単眼鏡 マルチモノキュラー 4×12
わたしがいつもつかっている単眼鏡です。小型軽量で携帯性にすぐれ、とてもよくみえます。

▼ 参考文献
国立科学博物館編集『日本列島の自然と私たち』(日本館ガイドブック)国立科学博物館発行、2008年3月31日

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