3段階モデル(仮説法→演繹法→帰納法)を情報処理の観点からとらえなおします。事実をインプットし、仮説をたて、検証します。眼力・直観・理性が大事です。
あるエピソード
昨日、ある会社の東京本社に山梨支社から箱が1個とどきました。つぎの日、Aさんが出社してみると、デスクのうえにブドウが1房おいてありました。そういえば山梨はブドウの産地だから、昨日とどいた箱の中にはブドウがはいっていて、そこからこれはとりだされたのではないだろうかとAさんはおもいました。
- 事実:山梨から箱がとどいた。デスクのうえにブドウが1房おいてあった。
- 前提:山梨はブドウの産地である。
- 仮説:箱の中にはブドウがはいっているのではないだろうか。
これは〈事実→前提→仮説〉とすすむ論理であり、仮説法です。
仮説がたてられると推論ができます。
- 前提:山梨はブドウの産地である。
- 仮説:箱の中にはブドウがはいっているのではないだろうか。
- 予見:同僚もブドウをもらっただろう。
そこで同僚に確認したところ、Bさん・Cさんは「ブドウ」とこたえました。しかしDさんは「モモ」とこたえました。これは〈前提→仮説→予見と確認〉とすすむ論理であり、演繹法です。
当初の仮説は否定(反証)されたので、Aさんは仮説をたてなおし、あらためて推論(演繹)しました。
- あらたな前提:山梨は、ブドウとモモの産地である。
- あらたな仮説:箱の中には、ブドウとモモがはいっているのではないだろうか。
- あらたな予見:同僚は、ブドウあるいはモモをもらっただろう。
そしてのべ10人にきいてみたところ、7人がブドウを、3人がモモをもらったというデータがえられました。データから、7/10がブドウ、3/10がモモ、つまり70%がブドウ、30%がモモであることがわかり、このことから、のべ100個の物が箱の中にはいっているとすると、それらはブドウ約70房、モモ約30個であると推計できます。
- 仮説:箱の中には、ブドウとモモがはいっているのではないだろうか。
- 事実(データ):7人がブドウを、3人がモモをもらった。
- 一般(推計):箱の中身はブドウ約70房、モモ約30個だろう。
これは〈仮説→事実→一般〉とすすむ論理であり、帰納法です。
以上のように、仮説法・演繹法・帰納法はこの順序でつかうと効果的であり、〈仮説法→演繹法→帰納法〉を「3段階モデル」といいます。
この過程を、人間主体の情報処理(人間がおこなう情報処理)の観点からとらえなおすとつぎのようになります。
Aさんが最初に、「デスクのうえにブドウが1房おいてあった」ことを目でみたのは情報(事実)のインプット(感覚器官から内面に情報をとりこむこと)です。
つぎに、「箱の中にはブドウがはいっているのではないだろうか」とおもったのは(仮説をたてたのは)Aさんの心のなかでおこったことですからプロセシングです。
そして、それにつづく演繹法と帰納法は仮説を検証する作業であり、アウトプットです。検証作業は実験ということもあります(図)。
ただし演繹法において、「同僚は、ブドウあるいはモモをもらっただろう」と予見(想像)するところまではAさんの心のなかでおこったことですから厳密にはプロセシングです。この部分は思考実験ということもあります。演繹法において予見(想像)をするとアウトプットへ円滑に移行できます。予見(想像)は、仮説と検証をむすびつけるために重要です。
なおいわゆる調査には、仮説をたてるための調査(インプット→プロセシング)と仮説を検証するための調査(プロセシング→アウトプット)とがあり、これらは、情報処理の段階がことなることに注意してください。調査の段階を自覚すると情報処理がすすみます。
また図1により、インプットでは眼力が、プロセシングでは直観力が、アウトプットでは論理力や理性がおもに大事だということもわかります。
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