ナショナル・ジオグラフィック日本語版では、2007年2月号から新たに、「GEO Style 異国望見」の連載がはじまった。その Vol.1 として、ネパールの首都・カトマンドゥがとりあげられた(「古代芸術の街・カトマンドゥを歩く」)。ここでカトマンドゥは、「ヒンドゥー教と仏教が共存する街で育まれた精緻な芸術文化と宗教的生活を垣間見る」と紹介されている。
この地には、15世紀、マッラ王朝の 3 人の王子が、カトマンドゥ・パタン・バクタプールの 3 都市にそれぞれ王朝をきづき、おたがいにきそいあうように、王宮や寺院の数々、それらをかざる精緻な石像や金属像、木柱などをつくり、都市国家を繁栄させた。
都市国家とは、領土国家の時代を人類がむかえる以前の歴史的段階をしめす。人類は、文明を都市国家からスタートさせたのである。文明の発展史という観点に立って、現代の文明を「本格文明」とよぶならば、都市国家の文明は「亜文明」の段階と言ってもよい。地球上の都市国家のほとんどすべてが滅び、現在は遺跡になってしまっているなかで、その面影を実によくのこしている地域がカトマンドゥ・パタン・バクタプールなのであり、これらはまさに人類の遺産である。実際、1979年に世界遺産に登録されている。
しかし、73万人がすむ現在のカトマンドゥは都市化が急激にすすみつつあり、その文化遺産は危機遺産の指定も受けている。
ところで、ナショナル・ジオグラフィック日本語版の同号149ページには、DVDシリーズ 2 月の新刊として、「文明崩壊のシナリオ マヤ」の公告が出ている。「繁栄を極めたマヤの都市国家は9世紀中ごろに次々と衰退し、やがてマヤ文明の崩壊が始まる。偉大な権力を誇ったマヤの王たちにいったい何がおこったのか。遺跡で発見された様々な証拠から考古学者がその謎に挑む!」
文明が始まり発展する一方で、文明が崩壊する。これらの記事を読んでいると、カトマンドゥが崩壊する前に、なんとかそれをくいとめ、考古学者だけでなく、私たち人類全体が、文明についてかんがえなおさなければならないとつくづく感じる。