地球市民講座「くらがるねぇ」(1)
ネパールからの帰国報告
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ダウラギリ・ヒマール

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<目次>

はじめに

スライド(写真)

総合的なアプローチが重要

質疑応答と参加者の感想


2002年12月10日発行


 解 説

 2002年6月1日、東京にて開催された、(NPO法人)ヒマラヤ保全協会主催・地球市民講座「くらがるねぇ」の当日の講演内容をほぼそのままここに再現・掲載する。

 講演は、現地のスライド上映をふくめて約1時間半にわたっておこなわれ、私は、ネパールからの帰国報告として、青年海外協力隊員の活動やネパールの様子、国際協力のすすめ方などについて話をした。 

 なお、当日の講演の記録では、ヒマラヤ保全協会の会員・岩間春芽さんにご協力をいただいた。ここに感謝の意を表する。

 


 

 はじめに

 みなさん、こんばんは。ただいま、ご紹介いただきました田野倉でございます。私は、2000年の4月から、2年間にわたってネパールに滞在し、青年海外協力隊の国際協力活動をおこないました。ネパールでは、ネパール唯一の国立大学であるトリブバン大学に勤務して、そこの地質学科で学生に地質学をおしえながら、一方で、ネパール人とともにネパール・ヒマラヤの共同研究をおこないました。今日は、青年海外協力隊の活動とネパールの現状・諸問題などについて、できるだけわかりやすく解説させていただきたいとおもいます。

 それでは、さきほど配布しました講演要旨にしたがってすすめていきたいとおもいます。

 


< 講演要旨 >

1 青年海外協力隊の派遣前訓練がおこなわれる。
 1.1 ネパールから地質学の教育と研究の要請がある。
 1.2 駒ヶ根訓練所で合宿訓練がすすむ。
 1.3 人材育成と山岳環境の保全を課題にする。

2 ネパール・ヒマラヤの世界をみる。
 2.1 現地訓練ののちトリブバン大学地質学科に赴任する。
 2.2 ヒマラヤ山脈を調査する。
  2.2.1 ネパール極東部、カリガンダキ川上流、マレク地域、タンセン地域、シーカ谷。
  2.2.2 カトマンドゥ盆地はヒマラヤのヘソである。

3 ヒマラヤは崩壊している。
 3.1 ヒマラヤを「人間社会-文化-自然環境系」(大自然)としてとらえる。   
 3.2 人間社会と自然環境との不調和こそ“環境問題”の本質である。

4 検証の旅。
 4.1 シーカ谷の南側斜面をみる。
 4.2 タプレジュン地域の地滑りをしらべる。
 4.3 ネパール国王一家殺害事件の衝撃。

5 人材育成と現地人参画を構想する。

6 国際協力活動を展開する。
 6.1 ふたたびシーカ谷へいき、地質図を作成する。
 6.2 共同研究をすすめる。
 6.3 パウダル村に協力する。
 6.4 国家非常事態宣言が発令される。

7 問題解決の三段階循環モデルの提唱。
 7.1 人間社会-文化-自然環境系はこわれた。
 7.2 時代は総合的なアプローチをもとめている。
 7.3 フロンティア開拓こそ必要である。
 7.4 現場に根ざす。
 7.5 研究即教育・教育即研究。
 7.6 問題解決のカギは人材育成と参画にある。
 7.7 (1)問題提起→(2)現地調査→(3)状況判断→(4)実験→(5)構想→(6)実施→(7)本質論。


 

 まず最初に、ネパールにいく前のことからです。

 青年海外協力隊というのは、国際協力事業団(JICA:ジャイカ)のブランチのひとつであり、協力隊の隊員は完全公募制で、日本人で39歳以下ならばだれでも応募することができます。

 私は、 1997年と1998年に、ヒマラヤ保全協会の仕事でネパールにいったことがあり、その時は、問題解決の方法であるKJ法のトレーニングをネパール人に対しておこないました。

 そんなこともありまして、ネパールで今後とも国際協力をすすめたいとかんがえて、かねてから、この青年海外協力隊にも興味をもって、いろいろしらべていました。

 そして、1999年の4月におこなわれた募集説明会にいって、案内書をみてみると、ネパールから、地質学という職種で募集があり、派遣国と私の専門分野が一致したので、絶好のチャンスであるとかんがえ、応募しようとおもいました。

 その後、選考試験に合格し、次に、派遣前訓練というのが約3ヶ月間ありまして、全員が、隊員候補生としてこの訓練をうけなくてはなりません。協力隊の訓練所は、長野県駒ヶ根市、福島県二本松市、東京広尾の3ヶ所にあり、毎年約1500人の隊員候補生が訓練をうけています。

 私は駒ヶ根で訓練をうけました。訓練の約60パーセントはネパール語の授業です。私は、それまでネパール語はまったくできませんでしたが、この3ヶ月間でおぼえました。のこりの40パーセントは発展途上国や世界の情勢、異文化に適応するためにはどうしたらよいかなどの講座があります。体育講座もあり体力もつけなければなりません。そのほかに、安全管理や途上国で活動するために必要な事などの講義もありました。

 このような講座をうけながら、私は、ネパールではどのような方針で活動をおこなうか、要請内容とてらしあわせてかんがえました。大学で学生の指導をすることはいうまでもありませんが、そのほかにフィールドワークをやろうとおもいます。それも、純粋自然科学的なことよりも、地滑りや山崩れ・防災などについて、私の専門である応用地質学的な観点から調査・研究し、地域の発展をかんがえていくという実践的なことをやろうとおもいました。

 ネパールは、山岳国、世界最大の山岳国です。国土のほとんどが山。山岳国であるがゆえに、土砂災害などが多発し、国土の保全は大変な困難をともなう大事業になっています。

 また、山の高いほうと低いほうとで自然環境がことなります。その中でくらしている人々もいろいろであり、世界有数の多民族国家にもなっています。したがって、いかにひとつの国としての統合をたもっていくかは、ネパールの大変大きな課題になっています。そのほかにも、貧富の格差、貧困問題、先進国の援助の問題など発展途上国には問題がとても多いのが現実です。ネパールは、10年前に民主化しました。その前は王制でした。王制と民主化といった問題もあります。

 このように、ネパールは国土は非常にせまいですが、多様性の大きさは世界一であり、民族も気候も非常に複雑で、したがって、そこには、世界の縮図的なすがたがみられ、世界の諸問題の見本市のようにもなっています。

 こうした情勢をふまえて、私としては、自分の専門分野を生かしながら、自然環境の保全や人材育成といった課題にとりくんでいこうとおもいました。

 それではスライドをおねがいします。

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(C) 2002 田野倉達弘