〈大観→並列→統合〉の3段階が基本です。循環的に累積します。動的フラクタルをつかい発想します。
これまでみてきたように、KJ法の骨格は〈グループ編成 → 図解化 → 文章化〉です。「グループ編成」では、あつまったデータがかたりかけてくる内容の大局をとらえます。大観します。「図解化」では、すべてのラベルを空間的に展開し配置し、島どりし、並列的に処理します。「文章化」では、図解の内容を今度は言葉にして表現します。図解化では、空間をつかって並列的に情報を処理しましたが、文章化では、言葉をつかって直列的に情報を統合します。文章とは基本的に前から後ろへながれるものであり、直列的なものです。
このように、グループ編成の本質は大観であり、図解化の本質は並列であり、文章化の本質は統合であり、〈1.大観 → 2.並列 → 3.統合〉という3段階を意識してKJ法にとりくむとよいでしょう。
そしてKJ法(グループ編成 → 図解化 → 文章化)は1回おこなうだけでも効果がありますが、2回以上くりかえしておこなうともっと効果があります。KJ法の作業をすすめていると、「そういえば・・・」「・・・ではないだろうか」「・・・にちがいない」など、さまざまなことをあらたにおもいつきます。あたらしいラベルにそれらを記入してグループ編成をふたたびおこなうことができます。〈グループ編成 → 図解化 → 文章化〉を1回おこなうことを「狭義のKJ法1ラウンド」ということがあり、これをくりかえす方法は「累積KJ法」といいます。循環的にくりかえすことにより累積的効果がうまれます(図1)。

累積KJ法は、問題の核心にせまり、問題を解決するために、6回累積するやりかたがモデル化されており、これは「6ラウンド累積KJ法」といい、(1)問題提起、(2)状況把握、(3)本質追求、(4)構想計画、(5)具体策、(6)手順化、という6つのラウンドからなります。これらは部分的に活用し、柔軟に実践することも可能であり、ネパール・サリジャ村の今回の例では、状況把握、本質追求と、2回累積しました。
ところで、グループ編成の手順はすでにみてきたように〈ラベルひろげ → ラベルあつめ → 表札づくり〉です(図2)。

「ラベルひろげ」では、ラベルを縦横にひろげ、全体をひろくみわたします。目をきょろきょろさせずに風景をみるように、中心視野だけでなく周辺視野もつかって大局をとらえます。つまり大観します。まずは、細部にはとらわれず全体観をもつことが大事であり、それによってその後の作業が円滑にすすみます。
「ラベルあつめ」では、今度は、それぞれのラベルを1枚ずつよんでいきます。よむときにはラベルの志をよくきくようにします。志とはベクトルととらえるとわかりやすいでしょう。ひととおりよみおわったら、ふたたび最初からよみなおし、これを5回ぐらいくりかえします。するとこのラベルとあのラベルは志が似ているというラベルがうかびあがってくるので、それらのラベルをセットにします。因果関係ではなく相似関係に注目します。直列的ではなく並列的に処理します。
「表札づくり」では、ラベルのセットをとりだし、それらのラベルがうったえかけてくる志をよくきき、それらの内容を統合し要約し、あたらしいラベルに一文につづります。
このように、ラベルひろげ、ラベルあつめ、表札づくりの本質もそれぞれ、大観、並列、統合であり、ここでも、〈1.大観 → 2.並列 → 3.統合〉という3段階を意識して作業をすすめます。
そして図1に図2をくみこむと図3になります。

大観、並列、統合に注目すると、ラベルひろげはグループ編成に通じ、ラベルあつめは図解化に通じ、表札づくりは文章化に通じます。
ラベルひろげとグループ編成の本質はともに大観ですが、ラベルひろげにくらべてグループ編成はより高次の大観になります。ラベルあつめと図解化の本質はともに並列ですが、図解化はより高次の並列になります。表札づくりと文章化の本質はともに統合ですが、文章化のほうがより高次の統合になります。
第1段階(大観)、第2段階(並列)、第3段階(統合)とすすみ、第3段階がおわると、それまでがより高次の第1段階になり、そしてより高次の第2段階、より高次の第3段階へすすむという仕組みがあります。これは、「3段階循環モデル」とよぶことができ、3つの段階が循環して展開していく体系であり、高次の第1段階のなかに、ちいさな3つの段階がふくまれ、部分と全体が相似な形をしており、フラクタルになっています。フラクタルとは、部分と全体が相似になっている図形であり、一部をきりとっても全体と似た形があらわれる自己相似性をもち、個即全・全即個の階層構造をしめします。フラクタルの例は、宇宙の構造、海岸線(リアス海岸など)、雲、雪の結晶、樹木、血管、ロマネスコ(野菜)、マンダラなど、いろいろなところでみられます。
このようなフラクタルの観点にたつと図3から図4を類推できます。フラクタルは、どんなに拡大しても、どんなに縮小してもおなじパターンがあらわれ、マクロにも、ミクロにも無限にひろがります。しかも図4は、動的なフラクタルになっています。
動的フラクタルをつかえば、おなじところをグルグルまわりつづけるのではなく高次の段階に飛躍することが可能になります。発想には飛躍が必要であり、累積KJ法の醍醐味がここにあります。
このようにKJ法は、フラクタルの技術化としてとらえなおすこともでき、それは動的フラクタルであり、はじめにすべてがある、部分に全体がふくまれているといえ、大観とは未分化な現象であり、そこから並列と統合がでてきます。並列と統合は大観に胚胎されています。この仮説は、情報処理の3段階(インプット→プロセシング→アウトプット)と論理の3段階(仮説法→演繹法→帰納法)に応用することもできます。
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▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『野外科学の思想と方法』(川喜田二郎著作集 第3巻)、1996年、中央公論社
川喜田二郎(著)『KJ法 渾沌をして語らしめる』(川喜田二郎著作集 第5巻)、1996年、中央公論社
田野倉達弘(著)『野外科学と実験科学 − 仮説法の展開 −』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『KJ法実践記 情報処理と問題解決』、2023年、アマゾンKindle
田野倉達弘(著)『国際協力とKJ法 ネパール・ヒマラヤでの実践』、2024年、アマゾンKindle
(冒頭写真:ネワールの踊り(ネワールとはカトマンドゥ盆地を故地とする民族)、ネパール、バクタプル、タチュパル広場、1998年2月21日、筆者撮影)






