ゴールデンルールです。説明は後ろにおきます。固定観念をうちやぶります。
NHK ラジオ英会話、2024年9月は、英語のゴールデンルール「説明ルール」にとりくみました。各レッスンのキーセンテンスは以下のとおりです。和訳は(注)にしめしました。
Lesson 101 説明ルール ── 基礎
The man in the brown jacket standing in front of the elevator works here.
Lesson 102 文修飾 ① ── 場所・時を示すフレーズ
We first met at an international high school in Tokyo.
Lesson 103 文修飾 ② ── 付帯状況
I can do it with my eyes closed.
Lesson 104 文修飾 ③ ── 動詞 -ing 形による文修飾
She’s in her bedroom, packing her suitcase for her big trip tomorrow.
Lesson 106 動詞句修飾 ① ── 基礎
Don’t get me wrong.
Lesson 107 動詞句修飾 ② ── フレーズで説明
We need to handle this matter with care.
Lesson 108 動詞句修飾 ③ ── 動詞 -ing 形で説明
You need to enter your password using the keypad.
Lesson 109 動詞句修飾 ④ ── 過去分詞で説明
He left the band a bit disappointed.
Lesson 111 動詞句修飾 ⑤ ── to 不定詞で説明(目的)
He went to England to learn English and other things.
Lesson 112 動詞句修飾 ⑥ ── to 不定詞で説明(感情の原因)
I’m excited to start my new year in university.
Lesson 113 動詞句修飾 ⑦ ── to 不定詞で説明(結果)
Did you always know you would grow up to be a famous writer?
Lesson 114 動詞句修飾 ⑧ ── to 不定詞で説明(判断の根拠)
You must be rich to drive such a nice car.
Lesson 116 形容詞修飾 ① ──「これから・進む」が感じられる形容詞と to 不定詞
I’m ready to receive your orders.
Lesson 117 形容詞修飾 ② ── 可能性・傾向を表す形容詞と to 不定詞
She’s sure to do a good job.
Lesson 118 形容詞修飾 ③ ── 難易を表す形容詞と to 不定詞
The movie is a bit hard to follow.
Lesson 119 名詞と説明ルール
The phone in your pocket is yours, right?
(注)
- 101 エレベーターの前に立っている茶色のジャケットを着た男性はここで働いています。
- 102 私たちは、東京のインターナショナル・ハイスクールで初めて会いました。
- 103 私は、目をつぶっていてもそれができます。
- 104 彼女は、自分の寝室におり、明日の大旅行に備えてスーツケースに荷物を詰めています。
- 106 私を誤解しないでください。
- 107 私たちは、この問題に慎重に対処する必要があります。
- 108 あなたは、キーパッドを使ってパスワードを入力する必要があります。
- 109 彼は、少しがっかりしてバンドを去りました。
- 111 彼は、英語とそのほかのことを学ぶためにイングランドに行きました。
- 112 私は、大学での新しい学年を始めることにわくわくしています。
- 113 あなたは、自分が大人になったら有名な作家になるとずっとわかっていたのですか?
- 114 こんなすてきな車に乗っているなんてあなたはお金持ちにちがいありません。
- 116 私は、あなたの指示を受ける準備ができています。
- 117 彼女は、きっといい仕事をするでしょう。
- 118 この映画は、理解するのがちょっと難しいのです。
- 119 あなたのポケットに入っている電話はあなたのものですよね?
*
Lesson 106「Don’t get me wrong.」においては、get me の後ろに wrong をならべて get me を wrong で説明しています。英語では説明は後ろに置くのであり、説明したかったら後ろに気軽にならべます。「get me wrong」は「まちがったやり方で私を理解する」であり、「Don’t get me wrong.」は「私を誤解しないでください」という意味になります。
wrong には、wrongly という副詞がありますが、このフレーズでは wrong をつかいます。英語は、配置の言葉ですから、動詞句の後ろにおけば副詞の働きをすることがあきらかであり、みじかい wrong が、シャープな印象とともにつかわれます。
同様な例としてつぎもあります。
Think different.(人と違った考え方をしなさい。)
アップルコンピューターの共同創業者のひとりであったスティーブ=ジョブズが最高経営責任者に復帰したときに同社がつかったスローガンです。固定観念をなくしたあらたな発想が重要であることを強調し、そのご実際に、アップル社は飛躍的に発展し、世界をかえました。
この英文をみて、「different」ではなく「differently」がただしいのではないかとおもった人がいたかもしれませんが、これは、説明ルールにしたがい動詞の説明をしており、つまり副詞として機能しています。英語は、配置主導の言語ですから、位置が、表現の働きをきめます。動詞の後ろにあればまぎれもなく副詞だと理解できます。
たとえば「You guys will do fine.(あなた方はうまくするでしょう。)」、「Come quick.(急いで来なさい。)」も同様です。fine や quick は形容詞としてもつかわれますが、ここでは、動詞(句)の説明、つまり副詞です。英語では、表現の働きを配置がきめることをしらなければなりません。
*
Lesson 104「She’s in her bedroom, packing her suitcase for her big trip tomorrow.」では、「彼女は寝室にいる」に、何をしながらなのかについての説明をくわえています。動詞 -ing 形を中心とするフレーズで文の説明をすることもよくあり、「~している」を意味する動詞 -ing 形ですから、同時進行している状況を説明することになります。
次のように、動詞 -ing 形フレーズを、標準的な位置である文末から文頭に前置き(倒置)することもできます。
Holding his breath, he watched the plane taking off.(息を止めながら、飛行機が飛び立つのを彼は見ました。)
「息を止めながら、彼は~」といえば、聞き手は、「何が起こったのだ」と興味をひかれます。この前置き(逆順)は、聞き手の興味をひくために書き言葉でおもにつかわれるテクニックです。この形は、「分詞構文」としておぼえた人がおおいとおもいますがそれは必要なく、説明ルールと前置き(逆順)ですんなり理解し記憶できます。
*
英語と日本語では語順がことなり、この原則のちがいが、日本人の英語上達をこばむ原因になっています。そこで「説明ルール」が役だちます。説明は後ろに置く!ポンポンと後ろにならべるだけです。このルールによっておおきな一歩をふみだせます。
上記の例文を、ネイティブスピーカーの音声でくりかえしきいて、英語の語順を自然に感じることができるようになれば、語順のちがいを克服し、英語を自由にあやつることができるようになります。
しかし日本語におきかえて、日本語の語順で理解しようとしているといつまでたっても上達しません。英語と日本語では、語順がちがうことをまず認識しなければなりません。それぞれの言語にはそれぞれに原則があります。
従来のふるい勉強法をつづけているかぎり効果があがりません。固定観念をうちやぶり、あらたな発想でとりくむことが大事です。
▼ NHK ゴガクル
上記のキーセンテンスは、NHK ゴガクルのサイト(無料)をつかって効率的に練習できます。
NHK ゴガクル “ラジオ英会話” フレーズ集
このサイトでたとえば、「聴き取り」をタップ(あるいはクリック)して、ネイティブスピーカーの音声を文字をみないできいてリズムをつかみます。そしてネイティブスピーカーのあとにつけて発音あるいはシャドウイングで発音練習をしてリズムにのります。必要に応じて文字や和訳をみて確認します。
▼ 参考文献(テキスト) & 音声教材
『NHK ラジオ英会話』(2024年9月号、NHK テキスト), 2024年, NHK 出版
『NHK ラジオ英会話 音声(Audible版(上)』, (2024年9月号), 2024年, NHK 出版
『NHK ラジオ英会話 音声(Audible版(下)』, (2024年9月号), 2024年, NHK 出版
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大西泰斗・ポール=マクベイ著『NHKラジオ英会話 語順でシンプル 英語文法マップ』 NHK出版、2022年
(NHK「ラジオ英会話」2021年4月号~2022年3月号のテキストのエッセンスを再構成してまとめたものです。2021年度のラジオ英会話をきけなかった人のために、きいた人には復習のためにおすすめします。基本文型・説明ルール・指定ルールというたった3つの原則で展開される英語の本当の世界をたのしんでください。あなたの英語観がかわります。音声はダウンロードできます。)
大西泰斗・ポール=マクベイ著『NHKラジオ英会話 英文法パーフェクト講義 上』NHK出版、2019年
大西泰斗・ポール=マクベイ著『NHKラジオ英会話 英文法パーフェクト講義 下』NHK出版、2019年
(冒頭写真:米国, ハワイ州オアフ島, フォスター植物園(Foster Botanical Garden, Oahu, Hawaii, USA), 2015年, 筆者撮影)