危機管理の手引き 
- ネパール旅行者のために -
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ネパール、カトマンドゥ、カンティ・パト

1.1990年以後、治安状況が悪化する

2.その他の状況

3.ねらわれるケース

4.注意と対策

5. 退避先と避難経路(移動手段)を確認

6.治安維持・抗議行動などに関する用語と注意

7.参考サイト


2003年9月9日発行

 


  解 説

 (特定非営利活動法人)ヒマラヤ保全協会では、ネパールにおいてスタディーツアーを毎年開催している。ツアーの実施にあたっては参加者の安全を確保することが第一に必要であり、そのための手引きとして以下の資料を作成した。この資料は、2002年夏のスタディーツアーの事前説明会のおりに参加者に配布し、解説をくわえた。

 ただし、以下の注意はネパールにかぎったものではなく、海外旅行をする場合に役立つ注意として参考にしていただきたい。

 なお、文中の国家非常事態宣言は現在は解除されている。

 


 

1.1990年以後、治安状況が悪化する

  • かつてネパールは、他の国とくらべて治安はかなりよい国であった。
  • しかし、特に1990年の民主化以降、政治的不安定・物価の上昇・貧富の差の拡大・汚職などの問題が深刻化し、このような状況の中で、反政府組織は1996年2月「人民戦争」を宣言し、「人民政府」樹立をめざして武力活動を開始する。
  • 2001年6月1日には国王殺害事件が発生し、武装闘争はさらに激化、その後一時停戦したものの、2001年11月に武装闘争が再開され、2001年11月26日には国家非常事態宣言が発令される。
  • 政府機関・軍隊・警察・国民会議派・大地主・国際協力(開発援助)関係機関などがターゲットになり、また、銀行・インフラ・私立学校が襲撃されることもある。
  • ただし、旅行者がねらわれることはない。

 

2.その他の状況

  • 反政府組織の一員ではなくても、現政権に反感をもつ人はいる。
  • 身分差別(上位階級)に対する反感が一部に存在する。
  • インドから不平等な関係をしいられているため、インド人に対する反感をもつ人が存在する。
  • しかし、ネパールには、宗教的な抗争はない。

 

3.ねらわれるケース

  • ネパールにかぎらず海外では「日本人は金持ち、しかも警戒心がない」とごく普通にみられているうえ、比較的安全な日本の生活感覚からぬけきれないままで行動する人が多いため、格好の的になる場合がある。
  • 事件の例:スリ、置き引き、強盗、暴行、不当な金銭を要求される、など。

 

4.注意と対策

  • 危険・危機にのぞむ心構えが第一に重要である。
  • 「備えあれば憂えなし」:様々なケースを想定して、あらかじめ対策をたてておけば(シミュレーション=思考実験をしておけば)、危険の方がにげていく。
  • 「自分の身は自分でまもる」という気持ちをつねにもつ。
  • いたずらに恐れても意味はなく、このような心構えが重要である。

     

  • 海外傷害損害保険に入っておく。
  • 緊急時連絡先(電話番号など)を確認する。
  • スタディツアー企画の団体および主催の旅行会社。
  • 宿泊先ホテル。
  • 在ネパール日本大使館

 

  • 服装や持ち物で目立ちすぎないようにする。なるべく現地人とおなじような服装をする。
  • 現金・貴金属などはみせびらかさない。貴重品は体からはなさない。
  • 十分に安全が確認されている地区をのぞき、暗くなってからは外出しない。

 

  • 集会・デモなどにはちかづかない。興味本位の見物は絶対にしない。
  • あくまでも旅行者の立場で行動し、政治的な話はしない。反感をかうような行動はしない。
  • 知らない人からすすめられた飲食物は、決して口にしない。
  • あまいさそいの言葉に十分気をつける。

 

  • 最後は一人一人がカンをはたらかせる。

 

5. 退避先と避難経路(移動手段)を確認

  • 退避先と退避経路については、ツアー引率者や現地協力者ととりきめておく。
  • 現地の地図をつねに所持し、自分がどこにいるか確認しておく。
  • 移動手段:
  • タクシー:カトマンズ・リングロードの外ではつかまえにくい。
  • 徒歩:安全かつ最短経路を地図上で確認しておく。
  • 公共バス:バス停を確認しておく。カトマンズ盆地内であれば本数は多い。ただし、わかりにくいので、はじめての人は利用しない方がよい。

 

6. 治安維持・抗議行動などに関する用語と注意

  • バンダ:強制的ゼネラル・ストライキ。空路・観光ホテルなどをのぞき、ほとんどの経済活動が停止する。移動する車両に対して投石がある場合がある。群衆にはちかづかない。予告があるので、移動計画があるときには注意する。
  • カーフュー:政府発令の外出禁止令:一切の外出禁止。
  • チャッカジャム:強制的交通ストライキ。交通機関のみ停止する。移動する車両に対して投石がある場合がある。群衆にはちかづかない。
  • トーチライト・プロセッション:松明行進。行進にはちかずかない。

 

7.参考サイト

 >>>外務省・海外安全ホームページ

 >>>外務省・ネパール各国地域情勢

 >>>在ネパール日本国大使館

 

 

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