事業評価の方法 -国際協力NGOの実践-

> ネパール・A村

はじめに

 国際協力事業をすすめるにあたり、NGOあるいはODAを問わず事業評価をどのようにすすめればよいか、近年、非常に大きな課題になってきている。特に国際協力NGOにおいては、住民や会員の参画による、地域や現場に密着した事業評価を、その後の事業展開にいかす方式ですすめるにはどのようにしたらよいか、試行錯誤がつづけられている。
 本論では、私がモデル化した「多角衆目評価法」を紹介する。この評価法は、「多角評価」と「衆目評価」を基本構造としており、ある国際協力NGOの3ヶ年計画終了時評価において実践した方法である。「多角評価」とは、国際協力の分野でよくもちいられている「評価5項目による評価」を応用したものであり、「衆目評価」とは、問題解決と発想の方法として知られる「KJ法」を応用したものである。
 本論では、まず「多角衆目評価法」の具体的な進め方(手順)を説明し、その上で、ある国際協力NGOがおこなった実践事例を紹介し、最後にこれらをふまえて評価法に関する考察をくわえることにする。ここで紹介する評価法は、国際協力の事業評価のためにつかわれたものであるが、国際協力以外の分野でも応用・実践することができるように工夫がほどこされている。
 なお本論は、あくまでも評価の方法を論ずるものであり、実践事例を解説することを目的にはしていない。実践事例はあくまでもサンプルであり、「多角衆目評価法」を理解するための手段として参考にしていただければ幸いである。

要旨

 本論では、あらたにモデル化された「多角衆目評価法」の手順と意義について事例をあげて解説する。
 「多角衆目評価法」は、「多角評価」→「ネットづくり」→「衆目評価」の3ステップからなりたっている。「多角評価」は「評価6項目」の基準による多角的全体的評価であり、「ネットづくり」は、その結果の要点を並列的横断的に評価する。「衆目評価」は、これらをふまえた統合的構造的な評価であり、これにより問題の核心があきらかになる。
 「多角衆目評価法」は情報処理の方法の一種でもあり、これにより、多種多量な情報は要約され、あらたな価値体系や合意が形成され、あたらしい行動ビジョンが生みだされる。つまり評価の結果は、次の事業計画立案のために役立てることができる。

※ 本サイトは、田野倉達弘(著)『『国際協力とKJ法 -ネパール・ヒマラヤでの実践-』に再録しました。

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2005年9月19日発行
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