IV.衆目評価

4-1 衆目評価とは

 「衆目評価」とは、文化人類学者の川喜田二郎氏が開発した、発想と問題解決の方法である「KJ法」(川喜田,1986)を応用した評価方法である。「衆目評価」は、「多角評価」と「ネットづくり」を踏まえて、より本質的な評価をおこなうためにグループワークにより実施する。
 この方法は、「多段評価」→「グループKJ法」→「評価図解作成」の3場面からなり、定性的評価にくわえて5段階の定量的な評価もおこなう。これは、評価活動に参加した人々の「多様な目」による評価をおこなうものであり、各事業(各分野)を横断した構造的な評価を可能にする。
 「多角評価」の「6項目の基準」と「衆目評価」の「多様な目」とは相互に補完・補強の関係にあり、これによりもれおちる観点がなくなり総合的な評価ができる。また「衆目評価」は、評価結果を、将来おこなう事業の構想計画を立案するために活用することも可能にする。

4-2 衆目評価の進め方

(1)多段評価

 作成された「ネット図解」上に配置されたラベルの重要度を段階的に評価していく。この評価では、「多角評価」を踏まえつつも、評価活動に参加する人々各人の独自の判断で評価をおこなうことがポイントである。あくまでも「多様な目」による評価をめざす(図4-1)。

図4−1 多段評価の進め方

  • 各人が赤色サインペンを1本ずつもち、重要だと感じたラベルの左上に赤○をつける。多めに○をつける。各自の判断でおこない、他人と相談する必要はない。
  • すでに他人が赤○をつけている場合は、あらためて○をつけ○○とはしない。
  • 赤○がついたラベルの枚数を数える。これで1段目の評価はおわりである。
  • つぎに、赤○がついたラベルだけを読み、さらに重要だと感じたラベルについて、赤○を右側につけくわえ○○とする。すでに他人が○をつけくわえ○○となっていたらさらにつけくわえない。
  • ○○となったラベルの枚数を数える。これで2段目の評価はおわりである。
  • 以下同様、評価(ピックアップ)されたラベルの枚数が目標枚数(通常30枚)にちかづくまでくりかえす。
  • 目標枚数にちかづいたら、今度は、赤色の太いマジックペンを1本用意する。
  • チームの1人がそのペンをもち、もっとも重要であると評価したラベルを1枚えらび、その文章をよみあげ、ラベルのまわりを四角くかこう。他人と相談する必要はなく、独自の判断でおこなう。
  • マジックペンを次の人にわたし、その人も同様に1枚のラベルをえらび、よみあげ、四角くかこう。
  • 同様にペンをまわしていき全員がラベルをえらんだ段階で1サイクル目がおわる。
  • 同様に2サイクル目、3サイクル目をくりかえし、目標枚数(通常30枚)のラベルがえらばれるまでおこなう。
  • 最後に、「どうしてもこれはえらんでおきたいというラベルはありますか?」ときき、もしあれば1〜2枚さらにえらんでもよい。

(2)グループKJ法

 評価された約30枚のラベル(意見)を「グループKJ法」という方法でまとめる。これにより、最終的におこなう「衆目評価」の基礎図解ができあがる(図4-2)。

図4−2 グループKJ法の進め方

  • えらばれたラベルをあたらしい別のラベルに転記する。
  • グループワークをおこなうための土俵をつくる(図4−3)。
  • すべてのラベルを均等に全員にくばる。
  • 各自でそれらのラベルを5回以上よむ。
  • まず1人が1枚のラベルをよみあげ、土俵の中央にだす。これが「親札」になる。
  • そのラベルのうったえかける志が似たラベルをもつ人は、そのラベルを外側の円のところにおく。
  • 志が似ているかどうかを全員で検討し、もし似ていればそれらを1セットにして「婚約」にいれる。
  • もし似ていなければ、親札は「独身」に入れる。
  • 同様に、次の人が「親札」をだし、同じ事をくりかえしていく。
  • 全員の手元にラベルがなくなったら、「婚約」にあつまったラベルのセットを中央にだし、集まった複数のラベルの本質(エッセンス)を要約して、別のあたらしいラベルにかく。これが「表札」である。
  • 以下同様にくりかえし、ラベルのセットの数が10以下、できれば5〜7束までになったら、グループ編成は終了する。
  • ラベルの束を模造紙上に展開し、図解を作成する。
  • 最後に、図解の内容をチーム内で発表する。

図4−3 グループKJ法でつかう土俵

(3)評価図解作成

 作成された「KJ法」図解上には評価結果の最終的な要約がしめされる。この要約に対して、各自がさらに評価をくわえ、その結果を集計し、図解以上に模様で表現する(図4-4)。

図4−4 評価図解作成の手順

  • どの「島」を評価対象にするか、評価対象となる単位を決定する。一般的には、最終(最上位)の島を評価対象とする。
  • 評価対象となる「島」に「ア、イ、ウ・・・」と符号をつける。
  • 符号がつけられた「島」に対して、もっとも重要だと判断されるものには5点、つぎに重要なものには4点、以下3点、2点、1点の島をえらびだす。
  • 「島」ごとに得点を集計する。
  • 集計結果をABCDEの5ランクにランクづけ(格づけ)する。
  • ランクごとに色(模様)をぬる。これで、「KJ法図解」から「評価図解」が作成される。
  • 最後に、評価結果を発表する。
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2005年9月19日発行
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