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思索の旅 第19号 | |
> 東京大学総合研究博物館(東京・本郷) |
目 次
19-01 絵の見え方は光の環境によって大きく変化する
19-02 商品を売るのではなく、ライフスタイルを提案する 19-03 探検ネットは情報の収束原理を利用している 19-04 問題解決サイクルにより現場情報を処理する 19-05 フィールドワークにより地域の枠組みを大きくとらえる 19-06 フィールドワークにより現実からのフィードバックをおこなう 19-07 思考もアイデアもコミュニケーションも、環境のなかで生まれる 19-08 空間記憶法により、心を場にみたす 19-09 ふかい領域のフィールドワークは、波を通じておこなわれる 19-10 できるだけひろい範囲を効率よくながめる作業がフィールドワークである 19-11 自然環境は社会の場をつくり、自然環境からの刺激は社会に変化をもたらす 19-12 フィールドワークは知識ではなく、みずからふかまる体験である 19-13 対象の背景もしっかりとらえる 19-14 方針とは「この方向へすすめ」という方向性をしめす 19-15 潜在能力を開発することが地域活性化の課題である 19-16 議論の過程で情報処理がくりかえされる 19-17 フィールドワークを通して「観察→体験→場づくり」を実践する 19-18 自然史を想像すると、目のまえの情景を統一的に理解できる 19-19 ディジタル技術と現物観察をくみあわせて認識をふかめる -東大博物館- |
19-01 絵の見え方は光の環境によって大きく変化する「イギリスの首都ロンドンが世界に誇る、“印象派の殿堂”と言えば、コートールド美術館である。マネ最晩年の傑作『フォリー・ベルジェールのバー』をはじめ、セザンヌ、ルノワール、ゴーギャン、ゴッホなど印象派や後期印象派の珠玉の名品が並ぶ」(NHK世界美術館紀行「印象派の神髄はイギリスにあり〜コートールド美術館」)。 19-02 商品を売るのではなく、ライフスタイルを提案する 「商品を売るのではなく、ライフスタイルを提案し、ライフスタイルを売る」(NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」)。岐阜の地場産業グループは、椅子・机・照明・テーブルクロスなどをくみあわせてまとめて展示・販売した。展示場では消費者からも意見がきけ、あたらしい商品開発にもなったという。 19-03 探検ネットは情報の収束原理を利用している「探検ネット」とよばれる図解法では、模造紙の中心に書かれたテーマの周囲に、言語を記載したラベルを配置していく。このとき、中心に記入されたテーマにむかって周囲から情報がひきよせられてくる。これは、テーマから周辺へむかって情報が拡散するのではなく、情報がテーマにむかってあつまってくるのである。テーマを決めると情報は自然に収束してくる。ここには、情報の「収束原理」がはたらいている。 19-04 問題解決サイクルにより現場情報を処理する 問題解決は、問題提起からはじまり、状況把握、仮説形成と3段階をふんでおこなうとよい。3段階目の仮説形成までくると、それ自体が高次元の第1段階になり、さらに、仮説検証、計画立案へとすすむ。計画立案までくると、それがより高次元の第1段階になり、さらに、実施、評価とすすんでいく。それぞれの段階の内部では情報処理がくりかえされる。 19-05 フィールドワークにより地域の枠組みを大きくとらえる フィールドワークとは、地域の「場」を探求する方法である。ある地域をあるいていると、草木があり、花がさき、蝶がとんでいる。家がたちならびさまざまな人々がくらしている。これらは地域という「場」のなかに存在する「要素」といってもよい。これらの「要素」に出会い観察すること自体が情報処理の過程になっている。 19-06 フィールドワークにより現実からのフィードバックをおこなう 問題解決の行為をすすめているとさまざまなおもいつきやアイデアがうまれてくる。ここで注意しなければならないことは、現実からのフィードバックをおこない情報処理のエラーをなくすことである。そのためにフィールドワークが役立つ。 19-07 思考もアイデアもコミュニケーションも、環境のなかで生まれる フィールドワークをおこなっていると、周囲からの刺激のなかでさまざまなことをおもいつく。周囲からの刺激はつぎつぎに私たちの心の中に入ってくる。私たちは環境のなかでものをかんがえる存在なのである。さらに、さまざまな独自な刺激にみちあふれた環境のなかで本当のコミュニケーションもうまれる。 19-08 空間記憶法により、心を場にみたす フィールドワークをおこなっていると、五感を通して大量の情報が心の中に入ってくる。周囲の情景がイメージとして記憶され、周囲の場は心のなかにみちてくるといった感覚が生じる。これは「場を心にみたす」ということである。 19-09 ふかい領域のフィールドワークは、波を通じておこなわれる 秦の始皇帝陵は地球物理学的な手法で探査され、その基本構造があきらかなった(「大兵馬俑展」上野の森美術館、2004年)。これは、物理的な手法で、重力や反射波を解析することで、直接みることができない地下の様子をさぐっていく探査法である。遺跡を直接発掘するのではないため、貴重な遺跡を破壊しないですむという大きなメリットがある。 19-10 できるだけひろい範囲を効率よくながめる作業がフィールドワークである フィールドワークでは、まず観察の場をひろげること、そして、全体をすみやかに点検できるようにすることが必要である。そのためには、実際に現場をあるくだけでなく、地図や写真を活用することも重要である。できるだけひろい範囲を効率よくながめる作業がフィールドワークである。これによってその地域を大観できるようになる。 19-11 自然環境は社会の場をつくり、自然環境からの刺激は社会に変化をもたらす ひとつの地域は、中心に社会があって、その周囲を自然環境がとりまいて成立している。自然環境(とくに地形)が社会の基本的枠組みあるいは場をつくりだしている。つまり、自然環境によって社会の大局が影響され、自然環境からのさまざまな自然現象によって社会のなかにこまかい影響が生じている。 19-12 フィールドワークは知識ではなく、みずからふかまる体験である フィールドワークは知識ではなく、みずからふかまる体験である。フィールドワークをおこなっていると、五感を通して膨大の情報が心の中に入ってくる。これは通常の生活や勉強ではえられない現象であり、心のなかに定着するのは知識ではなく体験であるといえる。 19-13 対象の背景もしっかりとらえる フィールドワークでは聞き取り調査をよくおこなう。現地の住民は現地に関する膨大な情報をもっているので聞き取りは必須であり、実際、ていねいな聞き取り調査をおこなうと とても沢山の情報を効率よくあつめることができる。住民の話は、問題を解決するためのさまざまなヒントもあたえてくれる。 19-14 方針とは「この方向へすすめ」という方向性をしめす 地域の活性化プロジェクトにとりくんでいると、ある段階で地域の情勢が判断される。情勢が判断されると、問題を解決するための方針や目標が決定される。ここで問題になるのが方針と目標についてである。多くの人々が方針と目標を混同してつかっているが、そもそも方針と目標とはちがうのである。 19-15 潜在能力を開発することが地域活性化の課題である 人間の能力には、すでに表面にあらわれている見かけの能力と、まだあらわれていない潜在能力とがある。潜在能力はただしい方法をつかうことによってこれから開発できる能力である。 19-16 議論の過程で情報処理がくりかえされる 地域活性化事業などで、地域住民とともに議論をしていると非常にたくさんの話をきくことができる。他人の話をきいていると、その話に反応して実にたくさんのことをおもいつく。いろいろな記憶もよみがえってくる。そして、おもいついたり想起されたことのなかから重要な事柄を選択し、圧縮・要約して発言する。 19-17 フィールドワークを通して「観察→体験→場づくり」を実践する 地域の活性化のためにはフィールドワークが必須である。フィールワークは現場を観察することからはじまる。観察をつみかさねることにより人々は体験をふかめることができる。情報収集能力も向上する。えられた情報をもとにして議論をすることもできる。 19-18 自然史を想像すると目のまえの情景を統一的に理解できる フィールドワークをしていると、人や動物がみえる。木や花や虫がみえる。岩や川や空がみえる。これらはすべて大地がささえている。これらさまざまな物は一見するとまとまりがないようにみえる。大地はすべてをささえるといっても、岩石や地層で構成された物質にすぎない。 19-19 ディジタル技術と現物観察をくみあわせて認識をふかめる -東大博物館- 東京大学総合研究博物館で、企画展「ディジタルとミュージアム」が開催された。ディジタル技術により再現された、バーミアンの全景や壁画、長野県・戸隠神社の天井画の復元など、大変すばらしい展示が見られた。 (2004年12月)
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