モデル思考のすすめ - 交通博物館 -
本 文
>>> 立体写真 
>>> 図 解 
>>> HOME 

模型鉄道パノラマ
<交通博物館 1階展示室>

<目 次>

乗り物の歴史をみる

模型はモデルである


>>> 地 図

 


2003年9月15日 発行

 

 乗り物の歴史をみる

 2003年9月、東京・神田の交通博物館へいった。ここは、鉄道を中心にした交通に関する専門博物館である。

 館内には、乗り物の実物や模型が多数展示されており、これらをひとつひとつみていくと、乗り物や交通の歴史がとてもよくわかる。鉄道は、蒸気機関車からはじまり、電車、新幹線へと発展してきた。そして、それはもう鉄道とはいえないかもしれないが、リニアモーターカーの研究開発へとつづいている。

 鉄道に付随して、自転車・オートバイ・自動車、船舶、航空機の歴史もみることができる。時代とともに、乗り物は大きく発展し、国土は開発され、社会も人間もそれにあわせて大きくかわってきた。

 それにしても、乗り物の世界は実に多様である。陸・海・空のそれぞれの空間をうめるかのように、その空間にあわせて技術が発達した。乗り物は、それが生かされる特定の空間をもっており、その特定の空間の中でそれぞれに重要な役割をはたしている。

 このように、この博物館では、乗り物の歴史とその多様性を同時にみることができる。歴史のなかで、乗り物はたえず発展してきたが、だからといって、昔開発されたふるいタイプの乗り物がほろんでしまったというわけではない。技術が発達した今日でも、低速の乗り物もそれぞれに人々のニーズにこたえている。ここに、しめる空間のちがいによる各種の役割分担をみることができ、技術の発展という歴史的時間的側面を空間的地理的にみることができるのである。

 そして、ある乗り物によってある空間がしめられると、未開拓の空間をめざしてあらたな技術が展開されるという様子も理解することができる。

 

 模型はモデルである

 こうして、技術の歴史的時間的側面と地理的空間的側面、そして両者の密接な関係をこの博物館はおしえてくれる。複雑な現象の中からこのような本質的なことがうかびあがってくるのは、ここが、交通にテーマをしぼった専門博物館であり、このようにテーマを明確にしているためであろう。

 博物館は、あるテーマについて短時間で学習できる場として最適である。そこには、人間の体験や人類の歴史が圧縮されており、それら全体を一望のもとにみわたすことができる。しかも、模型やパネルなどの展示を通して様々な情報が視覚的に印象にのこり、重要なことがらを一気に記憶することもできる。いわば効率のよい高速学習の場である。

 1階には、模型鉄道パノラマ運転場があり、子供たちに一番の人気だ。このような模型を子供のオモチャだといってバカにしてはいけない。このような模型パノラマは、全体を一望のもとに一気にみわたすという鳥瞰的なものの見方の重要性をおしえてくれる。模型とはモデルであり、大きなもの複雑なものを圧縮・単純化し、その本質を瞬間的につかむ道をひらいてくれるものである。これは、情報を、ひとつひとつていねいにならべていく作業とは根本的にことなるものであり、直観に通じる重要な方法である。

 博物館を、このような「モデル思考」の場として、これからも大いに活用していきたいものである。

 

本 文
>>> 立体写真
>>> 図 解
>>> HOME

(C) 2003 田野倉達弘