推理と対決 -『刑事コロンボ』研究 -
11.悪の温室 “THE GREENHOUSE JUNGLE”
目 次
トップ
まえがき
01.殺人処方箋
02.死者の身代金
03.構想の死角
04.指輪の爪跡
05.ホリスター将軍のコレクション
06.二枚のドガの絵
07.もう一つの鍵
08.死の方程式
09.パイルD-3の壁
10.黒のエチュード
11.悪の温室
12.アリバイのダイヤル
13.ロンドンの傘
14.偶像のレクイエム
15.溶ける糸
16.断たれた音
17.二つの顔
18.毒のある花
19.別れのワイン
20.野望の果て
21.意識の下の映像
22.第三の終章
23.愛情の計算
24.白鳥の歌
25.権力の墓穴
26.自縛の紐
27.逆転の構図
28.祝砲の挽歌
29.歌声の消えた海
30.ビデオテープの証言
31.5時30分の目撃者
32.忘れられたスター
33.ハッサン・サラーの反逆
34.仮面の男
35.闘牛士の栄光
36.魔術師の幻想
37.さらば提督
38.ルーサン警部の犯罪
39.黄金のバックル
40.殺しの序曲
41.死者のメッセージ
42.美食の報酬
43.秒読みの殺人
44.攻撃命令
45.策謀の結末
考察 -コロンボの方法-
参考文献
作品評価

キーイメージ

 ジャービス=グッドインと甥のトニーが、スポーツカーを谷底におとす。

DVDチャプターリスト

(1)メイン・タイトル/狂言誘拐 (2)コロンボ登場 (3)トニー自筆の脅迫状 (4)奪われた身代金 (5)奇妙な誘拐犯 (6)誘拐から殺人事件へ (7)すり替えられた拳銃 (8)悪の温室 (9)エンド・クレジット

犯行の動機

 ランの愛好家のジャービス=グッドイン(主犯)は、甥のトニー=グッドイン(共犯・被害者)の信託財産の共同管理人になっていた。トニーの父は、息子が浪費できないように遺産を信託の形でのこしたのであった。しかし、これは緊急事態が発生した場合にはまとまった額をひきだせることになっている。
 ジャービスは、トニーの誘拐をよそおって、身代金として遺産をひきだし、最終的にそれを我がものにする計画をたてる。

コロンボはいつどこでピンときたか

 甥が誘拐され、身代金が必要だという一大事なのに、ジャービスは、自分の温室によってから銀行へ行ったと部下から聞いたとき。
 その後、温室に行ってジャービスに会い、ジャービスが極度のラン愛好家であり、甥のことよりもランの方が重要だということを確認した。
 ジャービスは、甥のトニーは価値のない人間であり、人間のくずだと言ってごまかす。

犯行を裏付ける事実

 車の運転席の窓には銃で撃った跡があり、弾丸は運転席のシートにのこっている。この角度で撃ったならば運転手に命中したはずであるが、血痕はどこにもない(血痕がないということは、運転席は空であり、犯人は、運転手を外に出してから銃をうったことになる)。トニーの誘拐現場にのこされていたタイヤ痕は中型車のものだった(トニーのスポーツカーにおいつけなかったはずである)。事件当時、トニーの車のライトは消えていて、ギアはニュートラルになっていた(わざわざライトを消して、ニュートラルにしなければならない理由はない)。
 身代金をうけとった場所は見晴らしがよすぎ、どうぞ写真をとってくださいと言っているようなものだ(どうしてこんな場所をえらんだのか)。
 トニーは、5万ドルで、トニーの妻の浮気相手が妻とわかれるという約束をとりつけていた。
 トニーが射殺された。トニーの車にのこっていた弾丸もトニー死体にのこっていた弾丸も32口径である。

コロンボはいかにして決着をつけたか

 トニー邸で、凶器の拳銃が発見された。
 しかし、ジャービスの温室でまっていたコロンボのもとに銃弾の鑑識結果がとどけられる。一つはトニーの車から発見された弾であり、もう一つはトニーの死体からでた弾で、ともに32口径、同一の拳銃から発射されたものである。
 次に、第3の弾をとりだし、コロンボは言う。
「やはり32口径。そしてやはり鑑識の検査で、先の2発とおんなじ拳銃から発射されたと断定されたもんです(Also a .32 calibre and also proven by Ballistics to have been fired by the same weapon that fired the first two bullets)」
 コロンボはさっきまで弾さがしをやっていた。そして、3発目を苗床の土のなかから見つけだした。それは、去年、温室に侵入した者にむけてジャービスが撃った弾で、土に命中したものだった。
 こうして、ジャービスの拳銃が偽装誘拐とトニー殺しにつかわれたことが証明され、ジャービスが、トニー夫人のキャシーに罪をなすりつけるために、その拳銃をトニー邸かくしたことがあきらかになった。

解説:組織力をつかう

 コロンボは言っていた。
「去年の事件の記録をたまたま見たんです(I just happen to run across ah… the police report you filed all the way back there some time)」
物的証拠をあげる前段階として、ジャービスの温室で拳銃が去年つかわれたという記録にコロンボが気がついたところが第1のポイントである。この記録があったからこそジャービスを逮捕することができたのである。
 犯人の周辺をあらっていくときには空間だけでなく、過去もあらわなければならない。そのときに記録がものをいう。記録があれば過去が現在に生きてくる。コロンボは、過去の記録をよくしらべた。
 また、ジャービスの温室から銃弾をさがしだすために金属探知器をつかった。
「あたし金属探知器をはじめてつかってみたよ。新米なんで手間取ったが。しかしやっぱり役にたつねぇ。たいしたもんだ(You see, I’ve never used a metal detector before, that’s why it took me nearly an hour. But you know, these things really work… Amazing)」(コロンボ)
 金属探知器の使用は、コロンボの部下ウイルソン刑事のアイデアによる。
「君のおかげで閃いたんだからねぇ。君はその科学捜査に強いからね(Because without you, I’d have never gotten this idea. I mean, those technical things you’re so good at)」(コロンボ)
コロンボの部下が登場したのはこのエピソードが最初である。
 こうしてコロンボは、過去の記録と部下の協力によって今回の事件を解決した。このことは、コロンボが、ロサンゼルス警察という組織の一員であることを明瞭にあらわしている。コロンボは、決してひとりで事件解決にとりくんでいるのではない。コロンボはあくまでも組織の一員である。
 このように、コロンボの背後にはたくさんの人々がかくれており、それらの人々にささえられてコロンボの捜査はなりたっている。このエピソードには、捜査や事件解決のためには組織の力が重要であることがしめされていた。


tanokura.net
2005年12月25日発行
Copyright © 2005 TANOKURA Tatuhiro, all rights reserved.