推理と対決 -『刑事コロンボ』研究 -
05.ホリスター将軍のコレクション “DEAD WEIGHT”
目 次
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まえがき
01.殺人処方箋
02.死者の身代金
03.構想の死角
04.指輪の爪跡
05.ホリスター将軍のコレクション
06.二枚のドガの絵
07.もう一つの鍵
08.死の方程式
09.パイルD-3の壁
10.黒のエチュード
11.悪の温室
12.アリバイのダイヤル
13.ロンドンの傘
14.偶像のレクイエム
15.溶ける糸
16.断たれた音
17.二つの顔
18.毒のある花
19.別れのワイン
20.野望の果て
21.意識の下の映像
22.第三の終章
23.愛情の計算
24.白鳥の歌
25.権力の墓穴
26.自縛の紐
27.逆転の構図
28.祝砲の挽歌
29.歌声の消えた海
30.ビデオテープの証言
31.5時30分の目撃者
32.忘れられたスター
33.ハッサン・サラーの反逆
34.仮面の男
35.闘牛士の栄光
36.魔術師の幻想
37.さらば提督
38.ルーサン警部の犯罪
39.黄金のバックル
40.殺しの序曲
41.死者のメッセージ
42.美食の報酬
43.秒読みの殺人
44.攻撃命令
45.策謀の結末
考察 -コロンボの方法-
参考文献
作品評価

キーイメージ

 ヘレン=スチュワートが、ヨットからホリスター将軍の邸宅を見る。

DVDチャプターリスト

(1)メイン・タイトル (2)丸見えの殺人 (3)コロンボ登場 (4)目撃者の証言 (5)ホリスター将軍の栄光 (6)犯人を愛した目撃者 (7)コロンボ、船に酔う (8)ホリスター将軍のコレクション (9)エンド・クレジット

犯行の動機

 マーチン=J=ホリスター将軍(犯人)は、かつての軍隊の英雄であり、現在は退役して軍事関係の会社を経営していた。しかし軍との関係は今でも親密であり、軍の武器調達部のロジャー=ダットン大佐(被害者)と結託して不正取引をつづけていた。
 ある日、ダットンがホリスターの家をおとずれ、ちかく調達部に監査が入るので汚職が発覚する可能性があることをつげる。ダットンはスイスへ逃亡すると言うが、もしダットンが逮捕されれば、ホリスターとダットンが結託していたことがあかるみになってしまうかもしれない。それをおそれたホリスターは、その場でダットンの口を封じてしまう。

コロンボはいつどこでピントきたか

 スナックで、ホリスターが、母校で表彰されたことを報道するテレビニュースを見ていたとき。
 ホリスターには、戦場でつかった愛用の銃があるという。しかし彼は、銃は、練習用の22口径のものしかもっていないと言っていた。愛用の銃はどこへいったのだろう。これは変だ。愛用の銃が犯行につかわれた可能性がある。

犯行を裏付ける事実

 戦場でつかっていた愛用の銃がホリスターの自宅にはなかった。ホリスターが目撃者ヘレンを食事にさそった。ホリスターと取引をしていた軍の調達部のダットン大佐が行方不明になっている。ダットン大佐にはスイスへいく予定があった。ダットン大佐の自動車が発見された。ダットン大佐の死体が海上にあがった。ダットン大佐がきえた翌日、ホリスター将軍は海にでていた。

コロンボはいかに決着をつけたか

「問題はここにある複製の銃ですよ。あんたこれで大佐を殺した(It has to do with that duplicate of your gun. This, in fact, is the murder weapon, isn’t it, General?)」
とコロンボは言い、ホリスター陳列室にあるケースの中から拳銃をとりだす。
「そこまで言う以上、弾道検査はすんでるんだろ(I assume Ballistics has checked out the gun)」(ホリスター)
 展示されていたホリスターの拳銃は、ダットン殺しの物的証拠としておさえられた。
 ホリスターは展示されている銃は複製品だと言っていたが、それは嘘であった。彼は、思い出の品を大切に保管しておく人である。そのことに気がついたことが、物的証拠をあげることにつながった。

解説:証拠のありかを推論する

 コロンボはヘレンに言った。
「ある人物を理解するには、過去を知るのが一番だからです(Look, in order to understand a man, you have to understand his past)」
 コロンボは、ホリスターの経歴や性格をよく理解した。ホリスターは伝説の名将であり、かつて身のまわりにあった物をおろそかにしない人である。戦利品はもちろん軍服からライターにいたるまで異常なほどに大切にしている。真珠をちりばめた愛用の拳銃も、ホリスターになくてはならない物である。
「あたしがもし将軍の立場だったら、命の次に大事にするでしょうね(If it was me, if it was my gun, I would take very good care of that gun)」(コロンボ)
 そしてコロンボは、ダットンをその愛用の拳銃で射殺したという仮説をたて、普通の人間なら凶器はすぐに処分してしまうが、ホリスターは処分することができずに、どこかにかくしているはずだと推論した。
「絶好のかくし場所があった。誰の目にも容易にふれるところなんだ。きれいにかざったガラスケースの中だ。つまりはこの陳列室の中だ(Where is the gun? Why not on public display? Why not in a glass case? Why not in front of thousands of people?)」(コロンボ)
 ホリスターにとって、愛用の拳銃はあまりにも貴重だった。それは名誉のシンボルであり、すぎし日の栄光をもっとも雄弁に物語ってくれる物であった。永久に処分することなどおもいもよらなかった。また、ホリスターは、自分の名声に酔っているから、それが複製と言えば誰もが信じてうたがわないと誤算した。
 こうしてホリスターは、犯行につかった凶器を自分の陳列室の中に堂々と「展示」していたのである。
 コロンボは、物的証拠に到達するまでに3段階をふんで推論をした。
 まず第1に、ホリスターの経歴や性格をよく理解した。ホリスターはかがやかしい名声をもっており、思い出の品を大切に保管しておく人間である。
 第2に、ホリスターは、愛用の銃でダットンをころしたという仮説をたてた。
 そして第3に、ホリスターは、犯行につかった銃を処分できずに、どこかにかくしているはずであるとかんがえた。そして絶好のかくし場所を発見したのである。
 このような3段階の推論においては、ホリスターの経歴や性格を理解することは、推論の「前提」になる。次に「仮説」をたてる。そして最後に「結果」を予見する。つまり、「前提→仮説→結果」と着実に推論をすすめ、事件解決にこぎつけた。このような過程を見ていると、コロンボの推理力はたしかなものであることがよくわかる。


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2005年12月25日発行
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