いのちの文明があります。文明化のためにおおきな役割を仏教がはたしました。精神文化の3段階発展説を提唱します。
(2024年10月5日発行)
2001年8月、わたしはインドを旅行し、ヒンドゥー教は生命力信仰であるという仮説をたてました。当時、ネパールに居住していて、そして帰国後も、1年のうちのおよそ半分をネパールですごす生活がつづき、たくさんのヒンドゥー教徒たちにであい、ヒンドゥー教について理解をふかめました。
一方で、シャカの生誕地・ルンビニを旅行したり、ネパールの首都カトマンドゥでくらすネワールとよばれる人々(民族)に接したり、ヒマラヤ山岳地帯でくらすチベット系の人々にであったりして、仏教についても理解がふかまりました。
南アジアでは、バラモン教がもともとは信仰されていましたが、そのご仏教がおこり、バラモン教が仏教の影響をうけてヒンドゥー教が成立しました。このようなことから、仏教が、南アジア文化の高度化すなわち文明化にとてもおおきな役割を はたしたのではないかという第2の仮説をたてました。
さらに、ヒンドゥー教と日本の神仏習合がとてもよく似ていることに気がつき、精神文化の発展は、南アジアと日本、そして東洋全域に共通の原理があるのではないかとかんがえるようになり、〈自然の神々→仏教→生命力信仰〉という3段階をふんだという仮説をたてました(精神文化の3段階発展説)。
文明というと、物質文化的側面が注目されがちですが、精神文化的側面についても認識する必要があり、東洋では、神と仏が融合し、西洋の「機械文明」とはことなるタイプの文明が成熟したことをしらねばなりません。それは、「いのちの文明」とよんでもよいでしょう。
機械文明では人間はすくわれません。すくわれないどころかそれはいずれ人間を必要としなくなります。よりよくいきるために東洋文明をあらためてとらえなおすことにはとてもおおきな意義があるとおもいます。
文明と宗教
- 世界を理解するために、国立民族学博物館の世界地図をつかう
- 前近代文明の発達をみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第2巻〉帝国の興亡』/ 大英博物館展(6)-
- 文明と高等宗教について知る - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(10)-
- 世界の宗教を比較して理解する -『[図解]池上彰の世界の宗教が面白いほどわかる本』-
- 世界の宗教分布を地図上でとらえる -『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(1)-
- 第一に空間的に、第二に時間的に整理してとらえる - 池上彰著『宗教がわかれば世界が見える』(2)-
- 仏教と一神教の違いを知る -『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(3)-
シルクロード
- ★ 東西文化交流の歴史 - 特別展「シルクロード新世紀」(古代オリエント博物館)-
- ★ 「シルクロードの旅」展(東洋文庫ミュージアム) – ネットワーク共鳴説 –
- 再現空間「法隆寺金堂」にはいる - シルクロード特別企画展「素心伝心」(東京藝術大学美術館)(1)-
- 臨場感をたのしむ - シルクロード特別企画展「素心伝心」(東京藝術大学美術館)(2)-
- 空間に心をくばる - シルクロード特別企画展「素心伝心」(東京藝術大学美術館)(3)-
- 複数の感覚を統合する - シルクロード特別企画展「素心伝心」(東京藝術大学美術館)(4)-
- 文化のふるさとをたどる - シルクロード特別企画展「素心伝心」(東京藝術大学美術館)(5)-
- シルクロード特別企画展「素心伝心 -クローン文化財 失われた刻の再生-」(東京藝術大学美術館)(まとめ)
- ネットワークとヒット商品 -「精霊が宿るシルクロードを行く」(ナショナルジオグラフィック 2018.1号)-
- 重層文化を発展させる -「仏教音楽のルーツ -ゾロアスター教-」(古代オリエント博物館)-
- 現地の多様な情報を統合してアウトプットする - 平山郁夫シルクロードコレクション展 –
- よくできたアウトプットをする -『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』-
- 特別展「大航海時代へ − マルコ・ポーロが開いた世界 −」(古代オリエント博物館)をみる
- 空間的な視点、時間的な視点 -『地球の歩き方 中国』-
インド史
- 〈人間-環境〉システム - 河川の跡地で栄えたインダス文明 –
- ★★ 「インドの叡智」展(東洋文庫ミュージアム)をみる
- 都市国家の時代の末期を検証する - 中村元著『古代インド』-
- インドの建築物に多様性をみる -『インド古寺案内』-
- 世界遺産 インド
ネパール史
- 佐伯和彦著『ネパール全史』(明石書店, 2003年)をよむ
- 人類史の縮図を見る: 石器時代→都市国家の時代→領土国家の時代 〜 佐伯和彦著『ネパール全史』〜
- 特別展「先住民の宝」(国立民族学博物館)2 - ネパールの先住民 –
- ネパール山岳民族は多くの共通点を持っている
- 3D バクタプル(1) - ネパールの都市国家 –
- 3D バクタプル(2) - ネパールの都市国家 –
- 3D パタン旧王宮と王宮広場(1) - ネパールの都市国家 –
- 3D パタン旧王宮と王宮広場(2) - ネパールの都市国家 –
- ★ 3D パタン博物館(1) - ネパールの都市国家 –
- ★ 3D パタン博物館(2) - ネパールの都市国家 –
- カトマンズ盆地の都市国家を後世につたえよう! 〜 石井溥著『ヒマラヤの「正倉院」』〜
- 文明の発展と崩壊をとらえる -カトマンドゥの都市国家-
- ネパール・ヒマラヤ はやわかり - 旅ガイド –
- 3D ネパール旅行
- ネパール・ガイド -『地球の歩き方 ネパール』-
仏教史
- ブッダの生涯と時代的背景を理解する - 中村元著『ブッダ入門』-
- 伝記と歴史書をあわせて読む - 釈迦の生涯と生きた時代 –
- ルンビニの再開発がすすむ
- Google Earth 画像を iPad でみながら現地をあるく - ネパール、ルンビニ –
- ★ 3D ルンビニ(1) - ブッダの生誕地 –
- ★ 3D ルンビニ(2) - ブッダの生誕地 –
- ★ 3D ルンビニ(3) - ブッダの生誕地 –
- 「釈迦の仏教」は自己鍛錬システムである - 佐々木閑著『NHK100分de名著 ブッダ 真理のことば』-
- ★★ 3D ネパール国立博物館(1)「仏教美術ギャラリー」
- ★★ ドーナツ化モデル -『仏教歴史地図』-
- 世界遺産で仏教伝来の足跡をたどる -『世界遺産で見る仏教入門』-
- 歴史を絵図で一望する -「祈りのかたち -仏教美術入門-」展(出光美術館)
- 仏教を歴史的にとらえる -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(1)-
- グローバルな視点にたって仏教をとらえなおす -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(2)-
- 自分を知り、他人や他国を理解する -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(3)-
- 3段階をふんで理解をふかめる -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(4)-
インドの仏
- インド仏教美術をみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(1) –
- 展示室に意識をくばって仏教史の大きな流れをつかむ - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(2) –
- 各作品が出土した場所を地図でみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(3) –
- 各作品の制作年代を年表でみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(4) –
- 情報処理の3場面「大観→並列→統合」を実践する - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(5) –
- 1枚のイメージで物語をあらわす - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(6)「ムーガパッカ本生」-
- 物語とイメージと場所をむすびつける - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(7)「四相図」-
- 特別展「インドの仏」(東京国立博物館)(まとめ)
チベットの仏教
- ★ 3D「チベット仏教の美術 − 皇帝も愛した神秘の美 −」(東京国立博物館)
- 仏像を比較する -「チベットの仏像」(東京国立博物館・東洋館)-
- ネパールのチベット世界 − “禁断の王国”ムスタンの未来 −(ナショナルジオグラフィック 2023.01号)
大乗仏教
- 3D 国立民族学博物館「南アジア 2. 仏教の世界」
- 秘境 ブータン
- 東洋の精神世界を視覚的にとらえる 〜熊田由美子監修『仏像の辞典』〜
- ★★ 3D「みろく ―終わりの彼方 弥勒の世界―」(東京藝大美術館)- ガンダーラから日本へ –
- ★ 大乗仏教の「空」をまなぶ - 佐々木閑著『NHK 100分de名著:般若心経』-
- 「空」を自覚し、自分を制御すれば、結果はかえってくる
- ★ 「釈迦の仏教」との違いに注目して『般若心経』をよむ - 佐々木閑著 『般若心経』-
- 100分 de 名著:『法華経』(NHK・Eテレ)
- 智慧と慈悲がならびたつ - NHK 100 de 名著: 『維摩経』-
- ★★ 「唯識に生きる」(NHK・Eテレ「こころの時代」)
- 展示室に心をくばる - 特別展「禅 心をかたちに」-
- 生きていることが修業である - 道元『正法眼蔵』(100分 de 名著)-
マンダラ
- ★ 「マンダラと生きる」(NHK・Eテレ「こころの時代」)
- ★ 特別展「国宝 東寺 - 空海と仏像曼荼羅 -」(東京国立博物館)をみる
- ★ 立体曼荼羅の空間配置と階層構造
- 東寺ガイド -『東寺』(小学館101ビジュアル新書)-
- マンダラの実例
南アジアのヒンドゥー教
- ★★ インドの旅
- ★ 3D パシュパティナート - ネパール、ヒンドゥー教の聖地 –
- ★ 3D バクタプル国立美術館 - 日本にもやってきた神々 –
- 3D 国立民族学博物館「南アジア 1. ヒンドゥーの世界」
- ★★ 特別展「ヒンドゥーの神々の物語」(古代オリエント博物館)をみる
- 3D「交感する神と人 − ヒンドゥー神像の世界 −」(国立民族学博物館)
東南アジアの仏教とヒンドゥー教
- タイの歴史をみる - 特別展「タイ ~仏の国の輝き~」(東京国立博物館)-
- 3D クメールの彫刻(東京国立博物館・東洋館)(1)
- 3D クメールの彫刻(東京国立博物館・東洋館)(2)
- 東南アジアの金銅像をみる - 東京国立博物館 東洋館 –
日本の仏教と神仏習合
- 梅原猛『日本の深層』をよむ(その1. 東北の旅)
- 梅原猛『日本の深層』をよむ(その2. 熊野)
- 3D 国立民族学博物館「アイヌの文化」
- 3D「アイヌプリ - 北方に息づく先住民族の文化 -」(國學院大學博物館)
- 特別展「琉球」(東京国立博物館) – 母系の伝統 –
- ★★ 神仏習合の歴史 - 特別展「国宝 聖林寺十一面観音 -三輪山信仰のみほとけ-」(東京国立博物館)-
- 重層文化を発展させる -「仏教音楽のルーツ -ゾロアスター教-」(古代オリエント博物館)-
- 2人の人物モデルをえがく 〜梅原猛著『最澄と空海』〜
- ★ 特別展「最澄と天台宗のすべて」(東京国立博物館)− 重層文化の発展 −
- ★ もうひとつの御所 - 特別展「仁和寺と御室派のみほとけ」(東京国立博物館)-
- メッセージを感じとる - 特別展「運慶」(東京国立博物館)(1)-
- 仏像の5大分類 - 特別展「運慶」(東京国立博物館)(2)-
- 仏像と対面する - 特別展「運慶」(東京国立博物館)(3)-
- 興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」(東京国立博物館)(まとめ)
- 立体視をして仏像に向きあう - 十文字美信著『ポケットに仏像』-
- 虚空蔵菩薩像を中核にして空間記憶法を実践する -「日本国宝」展 –
- ★ 特別展「法然と極楽浄土」(東京国立博物館)をみる
- ★★ 親鸞聖人生誕850年特別展「親鸞 -生涯と名宝-」(京都国立博物館)をみる
注)★ 重要な記事、★★ 特に重要な記事
▼ 参考文献
川喜田二郎(著)『アジア文明論』(川喜田二郎著作集 第12巻), 1996年4月10日, 中央公論社
岡本隆司(著)『世界史序説 ──アジア史から一望する』(ちくま新書), 2018年, 筑摩書房
日本放送協会・NHK出版(編)『3か月でマスターする世界史 4月号』, 2024年4月1日, NHK出版
日本放送協会・NHK出版(編)「仏像 アジアツアー 東京国立博物館」,『関東 会いに行きたい仏さま』(NHK趣味どきっ!), pp.116-127, 2024年6月1日, NHK出版
(冒頭写真:高尾山、琵琶瀧水行道場(高尾山は、関東修験根本道場の法燈をつたえる)、2024年9月、筆者撮影)