V.評価の実践事例

 ある国際協力NGOは、2001〜2003年度にかけて3ヵ年計画をすすめていた。2003年度は計画の最終年度にあたっていたので、計画の終了にあわせて事業終了時評価をおこなうことになった。まず、評価作業の中核になる7名からなる評価チームを結成した。このうち2名は、評価に客観性をもたせるために組織の外部からくわわった。
 以下に、その評価チームの活動の経緯と評価結果の例をしめす。なお、この事例は、NGO活動そのものを紹介するためものではない。あくまでも「多角衆目評価法」の理解をたすけるサンプルとして参考にしていただきい。

5-1 多角評価の実施

2003年10月18日(第1回会合):問題意識をふかめる

 評価作業に先立ち、組織の定款に記載されている「目的」を確認する。その後、「我々の問題意識」をテーマにしてブレーンストーミングをおこなう。

2003年10月22日(第2回会合):役割分担を決める

 「多角評価」(事業別)に関してのチーム内の役割分担(評価を担当する事業)を決め、今後のすすめ方を議論する。

2003年11月05日(第3回会合):「多角評価」を開始する

 「多角評価」の記入書式をつくる。計画書・報告書のレビューによる「多角評価」を各自ですすめる。

2003年11月19日(第4回会合):「多角評価」をつづける

 問題点を議論しながら、計画書・報告書のレビューによる「多角評価」をすすめる。

2003年12月03日(第5回会合):「多角評価」をつづける

 問題点を議論しながら、計画書・報告書のレビューによる「多角評価」をすすめる。

2003年12月14日(第6回会合):「多角評価」の第一次まとめをおこなう

 計画書・報告書のレビューによる「多角評価」の第一次(暫定的)まとめをおこなう。現地事業に関して不明な点を現地事務所に問い合わせる。

2004年02月04日(第7回会合):「現地調査」の進め方を議論する

 現地事務所からの回答を確認・検討したうえで、現地調査の進め方を議論する。

2004年02月12日(第8回会合):「調査項目ネット」を作成する

 事業に関して不明な点、現地で検証・評価すべき事項をあらいだし、「調査項目ネット」を作成する(調査項目ネットの例はこちら)。

2004年02月23日〜03月17日:「現地調査」をおこなう

 評価チーム・メンバーのうち2名が現地に入る。現地事務所において打ち合わせをおこなったのち、活動現場の「現地調査」をおこなう。現地事務所にもどり結果を報告し、現地スタッフによる評価を実施する。

2004年03月24日(第9回会合・その1):「多角評価」を終了する

 評価チーム内で「現地調査」の報告をおこなない、「多角評価」の評価シートを修正し、シートを完成させる(評価シートへの記入例はこちら[PDF])。

5-2 ネットづくり

2004年03月24日(第9回会合・その2):「ネットづくり」を開始する

 「多角評価」の結果をふまえ、グループ・ディスカッションをしながら「ネットづくり」をはじめる。

2004年03月31日(第10回会合):「ネットづくり」をつづける

 「ネットづくり」のつづきをおこなう。

5-3 衆目評価法の実施

2004年04月10日(第11回会合):「衆目評価」の結果をだす

 「ネットづくり」を終了し、「多段評価」→「グループKJ法」→「評価図解作成」とすすみ、「衆目評価」の結果をだす(衆目評価の集計結果はこちら。衆目評価図解の例はこちら)。その後、報告書の作成作業に入る。

 なお「衆目評価法」では、事業別(分野別)評価(ランクづけ、格づけ)もおこなった。3ヵ年計画では、事業ア・事業イ・事業ウ・事業エ・事業オ・事業カの6事業(6分野をおこなった。こららの事業について評価チームメンバーにより、もっともうまくいったとかんがえられる事業には5点、次が4点、その次が3点、以下2点、1点とし、最下位は0点として各人が投票し、その結果を集計した。その結果、事業アは11点、事業イは24点、事業ウは19点、事業エは35点、事業オは2点、事業カは14点であった(図解の例はこちら)。このように「衆目評価法」は各事業(分野)のランクづけにも利用できるのである。

2004年06月26日:評価報告会を開催する

 評価報告書(初校)を作成するとともに、評価報告会を開催して評価結果を内外に発表する。評価結果は、活動現場(現地)にもフィードバックする。

2004年08月31日:報告書を発行する

 評価報告書を発行し、評価作業を終了する。

> 事業評価の方法TOP
2005年9月19日発行
Copyright (C) 田野倉達弘