思索の旅 第11号
ベルベデーレ宮殿(ウィーン)

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<目 次>
11-1 旅行記をかきながら想起の訓練をする
11-2 旅行には三重のたのしみがある
11-3 旅行体験を100字で文章化する
11-4 人間の能力には、知る・分かる・表現できるの三段階がある
11-5 アウトプットをターゲットにして仕事をする
11-6 旅行では、予察・観察・考察の3つの能力が重要である
11-7 情報処理能力を高めるためには暗算の訓練が欠かせない
11-8 リーダーには魅力がある

11-1 旅行記をかきながら想起の訓練をする

 旅行記をかくときには、まず日にちを記す。つぎに、おとずれた場所あるいは建物の名称を記す。そして、場所や建物の情景をおもいだしながら、文章化をつづける。最初は、メモや資料はみないでひたすらおもいだす。一種の記憶テストであり、これが訓練である。どうしてもおもいだせない場合は地図やガイドブックなどをみなおす。
 このような訓練をしていると、たくさんみたり きいたりしたはずであるが、かきだしてみると あまりかけないことがわかってくる。そして、現地でその場をしっかりみることがいかに重要かが認識できるようになる。

11-2 旅行には三重のたのしみがある

 旅行のたのしみには、計画のたのしみ、現地のたのしみ、再現のたのしみの、といった三重のたのしみ方がある。
 計画の段階では現地を想像してたのしむ。現地ではたくさんの情報がこころの中に蓄積される。再現のたのしみでは、撮影した写真を、サムネイル表示やスライドショーでみる。スライドショーをくりかえせば心の中で旅行を何回でも再現できる。現地にいたときとはまたちがった味わいがある。

11-3 旅行体験を100字で文章化する

 旅行からかえったら旅行記をかくとよい。旅行の体験を文章化するとき、第一に、心の中に形成された記憶ファイルから直接アウトプットする。資料などをみないでとにかく体験をおもいだす。もっとも印象にのこったできごとを約100字(2〜3行)でまとめてみるとよい。わかりやすい文章をかくためには、本田勝一氏の「日本語の作文技術」が役立つ。
 かいてみると、記憶がふたしかな部分もわかってくる。そこで、くわしい旅行記をかくためには、現地の地図、写真、パンフレットなどの資料をみなおすことになる。とくに写真は現場体験を再現するために有用である。このような作業をしながら原文を修正・加筆していく。
 さらに、旅行記をかいていると、現場でメモをとっておいた方がよかったということもわかってくる。次回の旅行ではメモをとるようにしよう。地名やキーワードはなるべくメモしておく。それらは、あとで統合されて文章になる。観察するだけでなく、現地の人々の話をきくことも有益である。
 さらに、このようなことをつづけていると、問題意識をもって旅行をした方が、充実した旅行になることもわかってくる。旅行にいくまえにあらかじめ問題意識をふかめておき、旅行にいったら旅行をたのしみ、そして、帰宅してから最初の問題意識と実際のできごとを おもいだしながら文章化する。このような3段階をふまえると旅行は大変充実したものになる。考察したことも文章化するとよい。こうして、旅行記をかくことによって、心の中の記憶ファイルは充実していく。
 いずれにしても、まず、最初の「100字」をかくことである。はじめにすべてがあり、そこからすべてがはじまる。部分に全体がふくまれている(要約されている)。体験を文章化するということは、情報を処理することにほかならず、ここに情報処理と記憶ファイルづくりの基本がある。
 問題提起、記録の取り方、データベース作成法といったことを順番にマスターし、情報を下からつみあげるといったいき方もあるが、まず単純な情報処理をおこなってしまうことの方が重要である。情報処理とはとても柔軟なものである。

11-4 人間の能力には、知る・分かる・表現できるの三段階がある

 KJ法創始者の川喜田二郎教授によれば、人間の能力には「知る」「分かる」「身につく」の三段階があり、「身につく」段階に達するまで訓練をおこなう必要があるという。「身につく」というのは「表現できる」といいかえてもよいそうだ。
 ここで「知る」とは、情報を認知することであり、情報を頭の中にインプットするということであろう。「分かる」とは、頭の中で情報の意味やメッセージをとらえることであり、これは情報を処理することにほかならない。そして「表現できる」というのは、いうまでもなく、頭の中から情報をアウトプットできるようになることである。
 こうしてみると、川喜田教授がいう「知る」「分かる」「表現できる(身につく)」というのは、「インプット」「処理」「アウトプット」のにそれぞれ相当することになり、これは情報処理の過程にほかならない。情報処理は人間の能力の基本であり、これらを訓練することが能力を開発することになる。
 また、川喜田教授は情報の伝達のみならず「情報の創造」が重要だとのべている。「情報の創造」とはすぐれた情報をアウトプットすることである。
 このように、人間の能力開発や情報の創造は、情報処理といった観点からとらえなおすと非常にわかりやすくなる。

11-5 アウトプットをターゲットにして仕事をする

 仕事をするとはいいかえれば情報処理をすることであり、情報処理は「入力→処理→出力」の3段階からなる。その最終目標は「出力(アウトプット)」であるから、最初から、出力(アウトプット)をターゲットにして、期限をきめて仕事をはじめるのがよい。どのような方法でどのようなアウトプットをだすか、あらかじめイメージしておけば、入力や処理も効率的におこなえる。
 アウトプットの方法としてはウェブサイト(ホームページ)を第一に利用するのがよい。ウェブサイト(ホームページ)は自分のデータバンクにもなり、あとで情報を再利用することも簡単にでき、大変便利である。

11-6 旅行では、予察・観察・考察の3つの能力が重要である

 旅行には、(1)計画をたてる段階、(2)現地を旅する段階、(3)かえってきてから旅行記をかく段階の3つの段階がある。よりふかい旅行をおこなうためには、(1)では「予察」、(2)では「観察」、(3)では「考察」のそれぞれの能力がもとめられる。「察」とは察することであり、情報を処理することである。つまり、(1)では、ガイドブックなどをみながら 現地にいく前にあらかじめ察する、(2)では現地をみながら察する、(3)では、現地をふりかえって、みずから かんがえながら察するようにする。

11-7 情報処理能力を高めるためには暗算の訓練が欠かせない

 映画「デイ・アフタ・トゥマロー」の中で天才少年が暗算をしていた。数学では、はじめに問題をつかみ、つぎに計算をし、最後に解答をだす。この「問題→計算→解答」という3ステップは「入力→処理→出力」とう情報処理の過程にほかならない。
 計算(処理)の過程は、映画の少年のように暗算でおこなうこともあるが、紙に計算式をかきだして確認しながらおこなうこともある。言語的あるいはイメージ的な情報処理でも、すべて頭の中だけでかんがえて処理していく場合もあれば、紙やパソコン画面上で1つ1つ確認しながら処理する場合もある。一般的に、紙やパソコンの上で確認しながら処理する方法は、時間はかかるが確実である。
 このように、情報処理のやり方には、すべて頭の中でおこなう方法から、紙やパソコンで画面に処理過程をかきだして1つ1つ確認しながらおこなう方法まで幅があり、実際には、これら両者の中間的な場合の人が多いだろう。しかし、人間の能力を開発し、情報処理の効率をあげるためには「暗算」の訓練を重視しなければならないだろう。「暗算」の訓練は欠かすことはできない。

11-8 リーダーには魅力がある

 NHK・プロジェクトX特集「リーダーたちの言葉」をみる。リーダーには能力だけでなく魅力がある。「おもしろい!」という何かをもっている。ただまじめなだけでは決してリーダーにはなれない。

(2004.07)

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2005年2月5日発行
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