推理と対決 -『刑事コロンボ』研究 -
04.指輪の爪あと “DEATH LENDS A HAND”
目 次
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まえがき
01.殺人処方箋
02.死者の身代金
03.構想の死角
04.指輪の爪跡
05.ホリスター将軍のコレクション
06.二枚のドガの絵
07.もう一つの鍵
08.死の方程式
09.パイルD-3の壁
10.黒のエチュード
11.悪の温室
12.アリバイのダイヤル
13.ロンドンの傘
14.偶像のレクイエム
15.溶ける糸
16.断たれた音
17.二つの顔
18.毒のある花
19.別れのワイン
20.野望の果て
21.意識の下の映像
22.第三の終章
23.愛情の計算
24.白鳥の歌
25.権力の墓穴
26.自縛の紐
27.逆転の構図
28.祝砲の挽歌
29.歌声の消えた海
30.ビデオテープの証言
31.5時30分の目撃者
32.忘れられたスター
33.ハッサン・サラーの反逆
34.仮面の男
35.闘牛士の栄光
36.魔術師の幻想
37.さらば提督
38.ルーサン警部の犯罪
39.黄金のバックル
40.殺しの序曲
41.死者のメッセージ
42.美食の報酬
43.秒読みの殺人
44.攻撃命令
45.策謀の結末
考察 -コロンボの方法-
参考文献
作品評価

キーイメージ

 ブリマーとケニカットの会話が、となりの部屋のマイクから聞こえる。

DVDチャプターリスト

(1)メイン・タイトル (2)衝動殺人 (3)コロンボ登場 (4)犯人への事件調査依頼 (5)コロンボのナイスショット (6)指輪の爪あと (7)尾行されたコロンボ (8)コロンボ、罠を仕掛ける(9)エンド・クレジット

犯行の動機

 探偵会社の社長ブリマー(犯人)は、3大新聞のボスであるアーサー=ケニカットから、彼の妻レノア(被害者)の浮気調査を依頼されていた。しかしブリマーは、実際には浮気があったにもかかわらずそのことは報告しなかった。
 ブリマーは、事実を報告しなかったことの見返りに、アーサー=ケニカットに関係する情報(さしあたり次の選挙で誰に投票するか)を提供するようにレノアに要求する。
 しかし、レノアはこれを拒否し、過去に浮気があったことをみずから夫につげ、ブリマーから取り引きの話があったことも夫に話すという。そんなことをされたらブリマーは業界から追放されてしまう。ブリマーは逆上し、バックハンドの平手打ちをレノアにくらわす。レノアはたおれ死亡してしまう。

コロンボはいつどこでピントきたか

 アーサー=ケニカットの自宅で、ブリマーに会って、彼の手をみたとき。
 ブリマーは左手に指輪をしており、そのダイヤモンドの形と死体の左頬にのこっていた傷の形とが一致することに気がついた。
 ブリマーがあやしい。

犯行を裏付ける事実

 犯人は左利きで、左手に指輪をしている。ブリマーは左利きである(オフィスでたしかめた)。死体が移動されている(顔見知りの犯行である)。ブリマーは短気でおこりっぽい性格である。レノアには浮気があったにもかかわらず、夫のケニカットには知らされていなかった(ブリマーとレノアの間で何かがあった)。レノアは殺害された日に別荘にいっており、その別荘のちかくにブリマーの自宅がある。ブリマーは、コロンボに自分の会社に転職しないかとさそい、ほかの大きな仕事をまかせたいと言った。レノアを尾行していたとおもわれる探偵会社の男がいなくなった。

コロンボはいかにして決着をつけたか

 ブリマーが、自動車修理工場にしのびこんでくる。車のトランクをあける。そして、コンタクトレンズを見つけだす。その時、ライトがひかる。
「こんなところで何してたんです(You mind telling me what you’re doing?)」(コロンボ)
 ブリマーは、見つけたコンタクトレンズを、タバコをすうふりをして処分しようとする。
「その手をおさえろ!(Grab his arms!)」(コロンボ)
ブリマーは観念し、犯行をみとめる。
「あんたの指輪みたとたんピンときたのさ(I got it form the cut on her cheek and your ring)」(コロンボ)
 コロンボは、犯人はブレアだとわかっていた。あとは、いかにして逮捕するかである。
 そこで、レノアのコンタクトレンズが死体からはずれており、犯行現場におちているはずだと言って、ブリマーに、コンタクトレンズをさがさせるように仕向けた。
 ブリマーは、自宅の絨毯の上をさがしたが見つからなかったので、自動車修理工場にだしてあった自分の車のトランクの中をさがしにやってきた。コロンボは、ブリマーの行動を予見し、まちぶせをしていたのだった。

解説:犯人逮捕の構想をねる

「罪を立証するのはブリマーの行動。ここにしのびこんで、それを処分しようとしたことです。しかも大勢の証人の前で(What does count are Mr.Bremmer’s actions. Coming here tonight, trying to get rid of that thing, and doing it all in front of wetnesses)」(コロンボ)
 実は、コンタクトレンズは被害者のものではなく、コロンボがおいたものだったのである。
 コロンボは、犯人を確信したあとは、いつまでも捜査をつづけているのではなく、犯人をいかにおとすか、その一点に集中した。
 レノアがコンタクトレンズをしていたことを知ったとき、その構想がうかんだ。
 まず、墓をほりかえし、死体にコンタクトレンズがはずれているかどうかしらべた。実際には、コンタクトレンズははずれていなかったのである。
 しかしコロンボは、右側のレンズが見つからないとブリマーに嘘をつき、レンズを見つけるまでかたっぱしからさがすと言う。また、ホシが、レンズをあわててかくすところを見てわらってやりたいとも言って、ブリマーをけしかける。
 このように、コロンボは、罠をしかけ、犯人をおいこんでいく。そして犯人に、犯人でなければ絶対におこさない行動をおこさせる。
 その一方で、ブリマーの車の排気管にジャガイモをつっこんでおき、車のエンジンがかからないようにしておいた。こうして、ブリマーの車は修理工場にはこばれていたのだった。
 このエピソードでは、物的証拠は何も発見していない。コロンボは、物的証拠を発見することを目標にはせず、犯人に、あらたな行動をおこさせることを目標にした。犯人の行動を、事件解決のための決定的な証拠にしようとした。目標をさだめ、予想をして計画をねる。犯人を逮捕するまでの筋書きを構想したという訳である。このエピソードには、コロンボの構想力のすごさがあらわれた。


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2005年12月25日発行
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